そんな中で再注目されているのが、クリエイター向けのSNSです。クリエイターに特化したSNSは、今までも数多くの企業が開発・提供していました。特にイラストや漫画といったコンテンツは、pixivに代表されるような日本のクリエイター向けのSNSの勢力が強く、すでに多くのクリエイターが利用しているかと思います。
しかし、日本のクリエイター向けのSNSが、児童ポルノコンテンツの温床になっていることが欧米圏で危険視されているといった報道(*1)もあり、pixivは名指しで批判されています。また、生成AIに対する方針でも後手後手にまわり、クリエイターから評判が良くなかったという事情もあって、pixivの代替となるサービスを探し求めているクリエイターも増えてきました。
【*1】BBC NEWS Japan:生成AIの児童性虐待画像を売買 日本のソーシャルメディアなどで
このような状況の中、再注目されているのが「Behance(ビハンス)」と「dribbble(ドリブル)」といったクリエイター向けのSNSです。世界規模で展開する両者は、クリエイター向けのSNSの2大巨頭といっても過言ではありませんが、日本国内のサービスが充実していたという側面もあってか、今まであまり注目されていなかったのも確かです。
そこで、今回は再注目される「Behance」と「dribbble」について改めて詳しく解説しようと思います。
目次
クリエイター向けSNSに共通するメリット
「Behance」と「dribbble」について解説する前に、「クリエイター向けSNS」に共通するメリットについて、以下にまとめておきます。1.自分の作品を世界中の人に公開できる
クリエイター向けSNSは、世界中のクリエイターが集まるプラットフォームです。そのため、自分の作品を公開することで、世界中の人に作品を見てもらうことができます。また、クリエイター向けSNSでは、作品を検索したり、フォローしたりする機能が充実しているため、自分の作品に興味を持ってくれる人を見つけやすくなります。さらに、作品の購入など、収益化につながる機能も搭載されているサービスがあります。
2.他のクリエイターと交流し、刺激を受けることができる
クリエイター向けSNSは、クリエイター同士の交流の場としても機能します。他のクリエイターの作品を見たり、コメントしたりすることで、新しいアイデアや技術を学ぶことができます。また、クリエイター同士の交流は、仕事の獲得につながることもあります。他のクリエイターから仕事の依頼を受けたり、コラボレーションのきっかけになったりすることもあるからです。
3.仕事の獲得につながる
クリエイター向けSNSは、求人・採用機能が搭載されているものも多く、仕事の獲得にも役立ちます。自分の作品を公開することで、企業やクリエイティブエージェンシーから仕事の依頼を受けるといったこともあり得ます。
このような一般的な「クリエイター向けのSNS」の特徴に加えて、「Behance」と「dribbble」には、固有の特徴や独自の機能が数多くあります。両者を比較しながら、その特徴や使い方を見ていきましょう。
ポートフォリオ的なプラットフォーム色が強い「Behance」
▶ Behanceの特徴と機能
▶ Behanceの基本的な使い方

現在はAdobeから提供されているBehanceですが、もともとは2006年にAdobeの元従業員であるScott Belsky氏とBen Jones氏によって設立されたという経緯もあり、Adobeユーザー以外のクリエイターも気軽に利用できるサービスとなっています。
▶ Behanceの特徴と機能
Behanceの特徴は、以下ような特徴があります。
1.多彩なクリエイティブ作品が公開されている
さまざまなクリエイターがハイクオリティな作品を公開しているので、それらの作品を眺めているだけでも、良い刺激を得ることができます。また、有償・無償のアセット素材やテンプレートなども多数公開されているので、自分の制作活動にも役立てることができます。
2.豊富な機能・サービス
Behanceには、プロフィールにNFTを設定する機能、ライブストリーミング機能など数多くの機能が搭載されています。
3.海外のユーザーと作品を売買できるシステムが整っている
Behanceには、世界最大級の決済システムである「Stripe」のアカウントと接続する機能が搭載されています。この「Stripe」との連携により、日本国内だけでなく海外のユーザーに作品やサービスを購入してもらうことが可能になります。また同様に、海外のユーザーの作品を購入することも可能です。

4.求人・採用に関する機能も搭載されており仕事の獲得につながる
Behanceには、求人・採用に関する機能も搭載されています。求人サイトやクラウドソーシングのように、高いマージンや手数料などを取らてしまう心配もありません。採用につながるまでには、ある程度Behanceの中で積極的に活動する必要はありますが、海外からのオファーにも対応できるようにもなるので、仕事を得る可能性を広げるためにも有用なツールです。
5.日本語対応している
Adobeが提供するサービスなので、日本語対応も万全です。
▶ Behanceの基本的な使い方
1.アカウントの作成・ログイン


アカウント作成を進めていくと、最後に自分の関心のある分野(グラフィックデザインやイラスト、写真など)を選択するステップがあります。関心のある分野を選択し、「OK」をクリックすると登録完了です。
2.プロフィールの設定・編集




3.投稿する内容の種類


プロフィールの編集が完了したら、画面右上にある「作品の共有」をクリックしてみましょう。「作品の共有」は、一般的なSNSでいうと「投稿」に該当する機能で、以下の4つのタイプがありますので、任意の内容を選択して投稿します。




4.作品の共有








この他にも数多くの機能がありますが、この「作品の共有」がBehanceのメイン機能ですので、まずは自分の作品を何か一つ投稿してみて、使いながら覚えていくのが良いと思います。お気に入りのクリエイターをフォローするといった機能に関しては、一般的なSNSと基本的には変わらないので説明がなくても利用できると思います。
クリエイティブな作品を共有する側面が強い「dribbble」
▶ dribbbleの特徴と機能
▶ dribbbleの基本的な使い方

当初は招待制で、既に利用しているユーザーから招待を受けなければ、作品を投稿することができなかったdribbbleですが、2022年2月2日に招待制を廃止し、誰でも無料で利用できるようになりました。また、以前は投稿できる作品は960ピクセルの正方形の画像に限られていましたが、この投稿できる作品のサイズ制限も同時期に撤廃されています。
招待制の廃止よって誰でも作品を投稿できるようになったことから、dribbbleの利用者数は大幅に増加しました。また、近年はWebデザインだけでなく、イラストや写真、グラフィックデザインなど、さまざまなジャンルのクリエイティブ作品が投稿されるようになり、多くのクリエイターにとって重要なプラットフォームとなっています。
▶ dribbbleの特徴と機能
dribbbleの特徴は、以下ような特徴があります。
1.多彩なクリエイティブ作品が公開されている
Behanceと同様に、さまざまなクリエイターがハイクオリティな作品を公開しているので、それらの作品を閲覧するだけでもスキルアップにつながります。ただし、ポートフォリオをまとめて公開するプラットフォームとして人気があるBehanceに対して、dribbbleはプロジェクトの画像を1枚ずつ投稿するプラットフォームです。
2.シンプルで使いやすいインターフェース
多機能なBehanceに対して、dribbbleはシンプルで使いやすいインターフェースが特徴です。日本語対応はしていませんが、機能がシンプルなので単語レベルで英語を理解できれば問題なく利用できます。また、招待制が廃止されたので、アカウント作成に関しても気軽に行えるようになりました。
3.アイデアやプロトタイプの共有に適している
Webデザイナーが開発したサービスだけあって、Webデザイン・UI/UXデザインのアイデアやプロトタイプの共有に適したサービスです。優れたデザイナーが数多く利用しているため、WebデザイナーやUI/UXデザイナーにとって、スキルアップや仕事の獲得にも役立つツールです。また、FigmaやGitHubと連携する機能も搭載されており、実務的にも便利なサービスです。
3.匿名で投稿できる
Behanceではユーザー名とプロフィールを表示して投稿する必要がありますが、dribbbleではハンドルネームなどでも投稿可能で匿名性を保って活動することも可能です。FacebookやInstagramよりも匿名性の高いX (旧Twitter)を好んでいるクリエイターは多いと思うので、このポイントは一部のユーザーにとって大変魅力的なポイントかもしれません。
4.クリエイターのコミュニティが活発
「フォロー機能」「コメント機能」「いいね機能」「メッセージ機能」など、一般的なSNSにより近い感覚で、ユーザー同士コミュニケーションを取ることができます。もともとは招待制だったサービスであったという経緯からも、こうしたコミュニティ機能はユーザー同士で活発に利用されています。
▶ dribbbleの基本的な使い方
1.アカウントの作成・ログイン




2.プロフィールの設定・編集




3.作品の共有






dribbbleにも数多くの機能がありますが、こちらも「作品の共有」がメイン機能ですので、使いながら各機能を覚えていきましょう。
まとめ
ここまでの内容で「Behance」と「dribbble」は、クリエイターにとって、自分の作品を世界中の人に公開し、他のクリエイターと交流や仕事の獲得に役立てるための重要なツールだということが十分に伝わったかと思います。同じようなクリエイター向けのSNSであっても両者には、それぞれ特徴があります。誤解を恐れずにその違いを述べるなら、「Behance」はFacebookやLinkedInのように、仕事やキャリアにつながるポートフォリオ的なプラットフォームとしての側面が強く、「dribbble」はTwitterのように、デザインやクリエイティブな作品を共有するSNS的なプラットフォームとしての側面が強いと言えるかもしれません。
どちらのSNSも大変便利なので、それぞれの特性を十分に理解した上で使い分けていくと、より効果的な販促・コミュニケーションツールとして活用できると思います。ぜひ、これらのクリエイター向けSNSを積極的に活用して、制作活動への刺激をもらったり、スキルアップや仕事の獲得につなげてみてください!
