フォントワークス株式会社は、同社の書体デザインディレクターのヨアヒム・ミュラー=ランセイ氏が制作したフォント「Yo One」をリリースした。同社にとって初のオリジナル欧文書体。
1つの字形から派生し、ウエイトのバリエーションのみならず、セリフの有無などさまざまな違いで異なる書体へと展開されていくシステマチックな特徴を備えている。

156のフォントで構成されたスーパーファミリー! フォントワークス独自の欧文書体「Yo One」が登場
ヨアヒム・ミュラー=ランセイ氏。スイスのバーゼル・スクール・オブ・デザインでグラフィックを学んだ経歴を持つ書体ディレクター「Yo One」は、欧文書体のバリエーションを“複数の軸”によって体系化したフォントシステムだ。同社リリースでは「スーパーファミリー」と表現されており、156ものフォントを有している。

156のフォントで構成されたスーパーファミリー! フォントワークス独自の欧文書体「Yo One」が登場
同じ字形から出発して異なる特徴のフォントへと展開されていくシステム大きく分けて6つのファミリーで構成され、まずセリフ(“うろこ”がある書体)とサンセリフ(“うろこ”がない書体)で分岐し、それぞれにリニア・セミ・コントラストの3タイプずつを用意。各ファミリーの中には13ウエイトがあり、さらにローマン体とイタリック体の計2種のアングルもある。

計算式で示すと、2スタイル×3タイプ×2アングル×13ウエイト=156フォント。これらのバリエーションから、フレキシブルに使用フォントを選べる。

156のフォントで構成されたスーパーファミリー! フォントワークス独自の欧文書体「Yo One」が登場
非常に広がりのあるシステムだが、一貫性が保たれているこの“システム”の利点は、一貫したルールで設計されているバリエーション展開であるため、異なる特徴のフォントどうしを組み合わせても調和を保ちやすいことだ。セリフとサンセリフを同時に用いることが必要となるデザインの場合、「どのフォントを合わせたら良いのだろう」と迷うことも多いが、“システム化”された本シリーズによって、迷わずにフォント選びを進めやすい。視覚的な統一性が保たれることは、ブランディングが重視されるシーンでも特に役立つ。

デザイン面での「Yo One」の魅力は、温もりを感じさせるような親しみやすさ。
信頼性と実用性も両立されており、汎用性が高いフォントに仕上げられている。

骨格のスタイルについては、「ネオヒューマニスト」という書体がベースとなった。「ネオヒューマニスト」は、カリグラフィの手の動きを取り入れることで自然なストロークを再現した「ヒューマニスト・サンセリフ」をさらに発展させたものであるという。もとになった「ヒューマニスト・サンセリフ」は、1950年代に急増した「ネオグロテスク・サンセリフ」に対して、より読みやすさを向上させた書体として台頭した。

さらに「Yo One」は「オープンカウンター形状」で、文字の開口部が広く確保されている。そのことは、「C」や「e」や「3」などの細部を見ると特に分かりやすい。このような形状により、文字ごとの違いを認識しやすく、判別性や視認性が高まっている。

156のフォントで構成されたスーパーファミリー! フォントワークス独自の欧文書体「Yo One」が登場
デザイン面での特徴。低解像度のディスプレイや悪天候、高速表示、視覚障害など、悪条件下でも視認性が保ちやすい本フォントは、同社が提供している年間定額制サービス「フォントワークス LETS」や「学生向けフォントワークス LETS」の契約ユーザーが、追加料金を必要とすることなく利用できる。

今回のようなフォントのシステムは近年では他社からも提供されており、ある意味でトレンドのような潮流と言えるかもしれない。フォント選びは明確な正解がなくて非常に難しいものだが、「迷ったらこれ!」という使いやすい1つの選択肢が増えて指針が設けられることは、デザイナーにとっては大いに助かるだろう。

156のフォントで構成されたスーパーファミリー! フォントワークス独自の欧文書体「Yo One」が登場
「Yo One」を活用したデザイン例フォントワークス株式会社
URL:https://fontworks.co.jp/

2023/10/05

156のフォントで構成されたスーパーファミリー! フォントワークス独自の欧文書体「Yo One」が登場
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