公式な登録者数は発表されていませんが、少なく見積もっても1億2000万人程度がユーザー登録していると予想されるThreadsがある程度安定した軌道に乗ったことによって、一連の覇権争いは終息するというのが私の見立てだった訳ですが、一つだけ、この状況を切り崩す可能性のある新SNSの存在がありました。
それが本稿で紹介するBlueskyです。当初からTwitter創業者の一人であるジャック・ドーシー氏が関わっているSNSということで注目を集めていたBlueskyですが、招待制というシステムを採用していたためユーザー数は限定されていました。しかし、2024年2月6日にこの招待制が廃止になったことで、誰でもアカウントを作成できるようになり短期間でユーザー数を伸ばしています。そこで、今回は注目を集めているBlueskyの基本的な使い方や、Blueskyのメリット・デメリット、今後の展望などについていち早く解説します。
目次
Blueskyとは
※Blueskyプロジェクトに関する時系列はニュース記事やプレスリリースなどでたどれる日付を筆者が確認したもので、あくまでも目安の情報として提示しています。正確性を保証するものではないことを予めご了承ください。●Blueskyとは
Blueskyは、Twitter共同創業者のジャック・ドーシー氏がCEOであったTwitter社のプロジェクトのひとつとして構想された分散型のソーシャル・ネットワークで、アメリカのデラウェア州にあるBluesky PBLLCという公益LLC(Public Benefit Limited Liability Company:公益合同会社という米国公益法人の一種)が運営しています。ドーシー氏は2019年12月に、Twitter上で「Bluesky構想」を発表します。2020年2月には、Twitter社内にBlueskyの開発組織が設立、2021年8月にTwitter社から分離・独立してPBLLCとして法人化しました。2021年10月にはテスト版アプリが公開、2022年2月には、BlueskyのAPIが公開されています。イーロン・マスク氏によるTwitter買収が起きたのは2022年10月27日でしたが、このとき既にBlueskyはTwitterと別法人として運営されていたため、直接の影響はありませんでした。
ドーシー氏はBluesky構想の発案者であり、メディアなどの解説ではジャック・ドーシー氏らが「構想した新SNS」と紹介されることが多いですが、ドーシー氏が直接、Blueskyの開発に携わっている訳ではないようです。そのためドーシー氏が「支援する新SNS」といった表現を用いるメディアもあります。
初代CEOに指名されたのはBlueskyの開発責任者だったジェイ・グラバー氏という若手のソフトウェア・エンジニアです。ドーシー氏は取締役としてBlueskyの開発・運営をサポートしています。
●分散型SNSとは
BlueskyはTwitterに近い使用感を持っていますが、分散型SNSであるという点で大きく異なります。Blueskyへの理解を深めるために、今一度「分散型SNS」という概念をおさらいしておきましょう。分散型SNSとは、Web3.0の理念に基づき、ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットの概念に基づいて非中央集権的なシステムを実現しているSNSのことを指します。
様々なSNSが存在しますが、新しいSNSが登場する度にアカウントを作成していくのは、例えるなら新しい都市へ引越するようなものです。そして従来型の中央集権型SNSの場合、アカウントを削除すると、投稿データやフォロー・フォロワーといったデータも全て失ってしまうという問題がありました。分散型SNSの多くは、都市間を引越で移動するように、今までの投稿内容やフォロー・フォロワーなどの繋がりを所有し続けることができるという特徴があり、中央集権型SNSの課題点を克服するSNSとして注目されているのです。
代表的な分散型SNSとして「Mastodon(マストドン)」を思い浮かべる方もいるかもしれません。Mastodonの場合は、複数のサーバー(インスタンス)が存在し、ユーザーはそれぞれ参加するサーバーを選択でき、技術的な知識があれば独自のサーバーを立てることも可能です。このような特徴があるため分散型であることをイメージ・体感しやすいかと思います。
※関連記事:いま話題のマストドン、その特徴から使い方まで(前篇)
一方で、Blueskyは旧Twitterのような従来のSNSに近い使いやすさを目指しつつ、分散型SNSとしての利点を活かしているのが特徴です。他の分散型SNSと比べて、分散型特有の機能や設定が少ないため、データ所有権など分散型らしい特徴がわかりにくいかもしれません。しかし「表現の自由」や「検閲への抵抗」といった側面においても、従来の中央集権型SNSとは大きく異なる利点を持っており、分散型SNSならではの機能が数多く搭載されています。
Blueskyは、AT Protocol(Authenticated Transfer Protocol)と呼ばれる、分散型SNSを実現するためのオープンソースプロトコルが採用されています。AT ProtocolはBlueskyを開発するために作られたブロックチェーン技術に基づいたプロトコルで、基になった初期バージョンはADX(Authenticated Data Experiment)という名称でした。このプロトコルが使われていることが分散型SNSと言われる由縁なのですが、ユーザーはこの点を特に意識する必要はないかもしれません。
より詳しくBlueskyのコンセプトや思想を知りたい場合は、Bluesky社の公式サイトにブログ等が掲載されていますのでチェックしてみると良いでしょう。
アカウント作成と初期設定
Blueskyの概要がわかったところで、まずは、アカウント作成と初期設定方法について確認していきましょう。▶アカウントの作成
1.Blueskyにアクセスする

2.必要事項を入力しコードをリクエスト


3.SMS認証を行いユーザーハンドルを設定へ


4.ユーザーハンドルの設定


使用不可の文字を使った場合は、エラー警告が出ます。また、すでに同じIDが取得されている場合や、SMS認証コードの利用可能時間を過ぎてしまった場合などでも、エラー警告が表示されます。
設定可能なユーザーハンドルが入力できたら「次へ」という文字が右下に表示されますので、これをクリックします。
5.各種設定を行う(その1)


6.各種設定を行う(その2)


4個目のステップでは、メインのフィードを設定します。設定が完了したら右下にある「続行」ボタンをクリックします。
7.各種設定を行う(その3)


6個目のステップでは、コンテンツのフィルタリングを設定します。アダルトコンテンツなどを表示させたくない場合は「非表示」を選択します。
7.各種設定を行う(その4)~アカウント開設



MdN編集部のアカウントも開設済みなので、私のアカウントと合わせて、もしよければフォローしてみてください。
▶プロフィールの編集
1.「プロフィールの編集」をクリック


2.プロフィールを編集して変更を保存


▶投稿
1.「新しい投稿」をクリックして投稿


このように、基本的な使い方はTwitterの操作方法とかなり似ています。
Blueskyの基本的な機能
Blueskyの主な機能を確認しておきましょう。ホーム

検索

フィード

通知

リスト

モデレーション

プロフィール

設定

以下はBlueskyの仕様や基本機能を、ThreadsとX(旧Twitter)との比較でまとめた表です。
Bluesky、Threads、X(旧Twitter)の主な機能比較表
項目BlueskyThreadsX(旧Twitter)1投稿の最大文字数300文字500文字140文字(プレミアムプランは2000文字)画像投稿数最大4枚最大10枚最大4枚画像以外のコンテンツなし動画、GIF動画、アンケート、音声動画、GIF動画、アンケート、音声動画投稿の長さなし最大5分最大140秒引用投稿機能ありありあり再投稿機能ありありありいいね機能ありありありDM機能なしなしありハッシュタグ/タグ機能なし(搭載予定との報道あり)ありあり鍵アカウント/非公開プロフィール機能なしありありブックマーク機能なしあり(自分のいいねを確認する機能が搭載)ありリスト機能ありなしありトレンド機能なし搭載予定あり複数アカウント作成可能作成可能作成可能今後、様々な機能が追加されると予測されますが、現状は機能に制限がありますので、この点はよく留意しておきましょう。
メリット・デメリット
▶Blueskyのメリット1.アルゴリズムの透明性
Blueskyは、オープンソースのアルゴリズムを採用しています。したがって、誰でもそのアルゴリズムがどのように機能するかを確認することが可能であり、透明性の高いシステムで運用されていると言えます。
2.カスタマイズ性が高い
Blueskyは、ユーザー独自のフィードを表示できる機能、ヌードなどの性的コンテンツや暴力表現などを表示・非表示設定が可能なフィルタリング設定機能など、カスタマイズ性が高いのが特徴です。
3.匿名性が高い
Blueskyは、X(旧Twitter)のように匿名でアカウントを作成できるSNSです。X(旧Twitter)から、Threadsへ移行するのをためらう要因の一つに、アカウントセンターでInstagramやFacebookと連携してしまうために匿名性が守られないという点がありますが、Blueskyではこうした懸念はありません。また、複数アカウントでの運用も可能になっているので、仕事用とプライベート用でアカウントを使い分けることも可能です。
4.分散型SNSであるためゾーニングが可能
Blueskyでは、利用規約やコミュニティガイドラインにおいて、ヘイトスピーチや差別といった投稿への規制、性的コンテンツへの規制などに関するポリシーが示されています。旧Twitterのポリシーと踏襲していると思われ、全体的な傾向として一般的なSNSと同様の欧米基準の規制はあると思われます。
ただし、フィルタリング機能が搭載されているため性的なコンテンツも投稿は可能になっています。また、分散型SNSのメリットの1つは、ユーザーが独自のフィード(タイムライン)を管理できるので、ゾーニングが可能です。したがって、一般的な分散型SNSの傾向と同様に各ユーザーやコミュニティに委ねられている部分が大きいと考えられますので、性的コンテンツの扱いについても、各フィードやコミュニティによって異なると考えるのが妥当かもしれません。
Bluesky公式にある利用規約のページ
Bluesky公式にあるコミュニティガイドラインのページ
5.分散型SNS初心者に最適
分散型SNSは、中央集権型SNSと比べて設定等が複雑であるという特徴があります。しかし、BlueskyはX(旧Twitter)に似たUIや機能を持つSNSで、X(旧Twitter)のユーザーであれば、すぐに使い方を理解できるため、初めて分散型SNSを利用するとったユーザーにもおすすめです。
6.旧Twitterの代替ツールとして最適でTwitter草創期を追体験できる
ブルーのテーマカラーや蝶のロゴ、UIデザインなどが、旧Twitterを彷彿とさせる部分がありXからの移行先として最適なツールの一つであると言えます。現在は機能が限定的な部分も、殺伐としていなかったTwitter草創期を追体験しているようで、ある層には刺さる部分かもしれません。
▶Blueskyのデメリット
1.いかに収益化するかという経営面の問題
Blueskyは公益法人によって運営されているため、収益化は第一義的な目標ではありません。しかし、SNSのプラットフォームを運営していくためには、収益化は不可欠です。広告や有料プランの提供など、将来的にどのように収益化していくのか、具体的な方法が確立していない点は、懸念材料と言えるでしょう。また、グラバー氏やドーシー氏をはじめとした経営陣が、Twitterの二の舞いにならないようにSNS運営を成功に導ける手腕を持っているかどうかという点も、今後は問われていくでしょう。
2.開発段階で機能が限定されている
Blueskyは、まだ開発段階で機能が限定されています。現時点で「動画投稿は不可」「ハッシュタグは搭載されていない」「アカウントに鍵がかけられない」といった状況があります。もし仮に炎上した場合に、アカウントに鍵をかけられないというのは少し不安に感じる人もいるでしょう。
3.Z世代の動向
現時点での機能制限が、Z世代をはじめとした若い世代ににどのように受け取られるかという懸念があります。特に「動画が投稿できない」「アカウントに鍵がかけられない」といった部分はZ世代にとってはマイナスなポイントだと思います。
また、若い世代には、Twitterに対しての思い入れやノスタルジーは、それほどないはずですので、古き良き時代のTwitterを彷彿とされるBlueskyが特別視されることはないでしょう。むしろ、「Z世代のSNS疲れ」といった記事もよく見られるようになってきましたので、若い世代はSNS以外のコミュニケーション・スタイルを模索しているのかもしれません。
参照URL:ダイアモンド・オンライン|忘れ去られた「Tumblr」に復活の兆し──大手SNSに疲れたZ世代の避難場所として利用急増
Blueskyの活用法と今後の展望
●クリエイターのオンラインコミュニティとしてざっと見た限りの印象ですが、一般公開後、かなりの数のクリエイターがBlueskyのアカウントを解説しているように思います。自分の興味あるアカウントをフォローし、タイムラインを作り上げていくことが可能なので、同業者だけのリストやフィードを作成することが可能です。旧Twitterのような販促・宣伝効果は期待できませんが、情報交換などのコミュニティとしての活用法は、クリエイターにとって大きな意味を持つでしょう。
また、画像投稿形式も1枚の投稿だと、サムネイルが縦長に表示されるので、上手く利用すれば作品の新たな投稿スタイルを確立できるかもしれません。加えて「ちいかわ」のナガノ氏をはじめとした著名なクリエイターも参加し始めており、アニメ化もされ人気漫画である「葬送のフリーレン」の公式アカウントが開設されたことも話題になっています。
●日本のユーザー動向が成功の鍵?
Twitterはアメリカと日本での人気が高く、ヨーロッパ諸国をはじめとして他の文化圏ではそれほど利用されていないとデータから分析されています。また、アメリカではマスク氏による言動で企業アカウントや著名人を中心に、アカウントの運用を停止する動きが高まっており変化が起こっています。一方で日本のユーザーは、文句を言いつつも利用率自体はあまり変化していないように感じます。こうした状況もあってか、X(Twitter)が日本のユーザーを重要視しているのは、各報道においても明確です。
これは、Twitterの代替SNSを求めるユーザーの数も潜在的に多いという見立てもできる訳で、マスク氏に買収される前のTwitterと似たSNSであるBlueskyは、日本のユーザーに大きく期待されているのではないでしょうか。Twitterの代替SNSを求めていた層は日本のユーザーに多く、それがBlueskyの今後の動向にも影響する可能性は十分に考えられます。
Blueskyは、招待制を廃止して6日目である2月11日の時点で合計450万人を突破したと発表しています。また、公式発表ではありませんが「Blueskyちゃん」というbotアカウントによれば500万人を突破しているという報告もあります。このように急速にユーザー数を伸ばすBlueskyですが、以下の表のようにThreadsやX(旧Twitter)と比較すると、まだその差は大きいように思います。
Bluesky、Threads、X (旧Twitter)のおおよそのユーザ数の比較
サービスユーザー数X(旧Twitter)約3億9600万人Threads約1億人~約1億2000万人(公式発表~推測値)Bluesky約450万人~約500万人(公式発表~推測値)Threadsでは、アメリカにおいてセレブリティや行政機関・政治家、大手企業などがアカウントを開設しており、日本でもデジタル庁がアカウントを開設、その他、テレビ局、新聞社、出版社などの各メディアなどのアカウントも揃いつつあるので、公的なインフラ・ビジネス用途という観点では、Twitterの代替SNSとして機能し始めていることも注視しておきたいポイントです。
Yahoo!ニュース:日本のTwitter利用時間は世界一? データから明らかに
IT media NEWS:Xの代替なるか? 「Bluesky」450万ユーザーに急増 5日で130万拡大
●「ActivityPub」VS 「AT Protocol」の構図
新しいSNSが登場しては、アカウントを作って運用してみるといった流れに、少々SNS疲れを感じている人も多いかと思います。一つのSNSで複数のアカウントを運用している場合は、各アカウントの維持・管理にも時間的コストが増えていってしまいます。そうしたSNS疲れを解消する一つの手段が、2023年SNS総決算の記事でも紹介したFediverseという概念です。
Threadsが分散型SNSのプロトコルであるActivityPubに対応し分散型SNSと本格的に連携するために動き出していますので、近いうちに実装されるでしょう。このActivityPubは、すでに多くのユーザーを抱えており、安定した基盤を持つというメリットがありますが、パフォーマンスやスケーラビリティ(システムやネットワークなどの拡張性のこと)などに課題を抱えています。一方で、Blueskyが採用しているAT Protocolは軽量で効率的、なおかつ強力なセキュリティとプライバシー機能を備えているというメリットがあります。しかし、まだ新しいプロトコルでありActivityPubほど普及していないという点がデメリットです。
ポストTwitterをめぐる覇権争いとしての「Threads」VS「Bluesky」の構図は、そのままFediverseの盟主をかけた「ActivityPub」VS「AT Protocol」をめぐる覇権争いの構図であると言っても過言ではありません。ただし、分散型SNSの多くがActivityPubを採用している点を考慮すると、この点においては現状Threadsのほうが有利だと考えられます。また、Threads自体は分散型SNSではなく、あくまで付加的にActivityPubに対応するということなので、(私はエンジニアではないので技術的なことはわかりませんが)ThreadsがActivityPubに加えてAT Protocolにも対応するということもあり得るかもしれません。そういう意味で、短絡的にBlueskyの競合相手はThreadsであると考えるのは早急だと考えられます。
実際のところは、Blueskyが対抗していかなければいけない最大の競合相手はX(旧Twitter)です。X(旧Twitter)には、他のSNSを利用していない多くの著名人・インフルエンサーが存在し、現状ではTwitterでしか利用できない機能も多くあります。こうした部分を、どうやってBlueskyが補完していけるかという点が、今後さらに重要になってくるでしょう。
まとめ
まだ、アカウントを開設しただけというユーザーが多いですが、Blueskyに注目が集まっているのでアクティブに投稿をチェックしている人も多いようで、アカウントをフォローするとフォローバックしてくれる確率も高いように感じました。Xは「インプレゾンビ」といった新たなスパム現象が引き起こされている通り、使い勝手は悪くなる一方で、旧Twitterへの思い入れが強いユーザーも、代替ツールを検討しなければいけない段階に来ているように思います。そうした流れの中で、今後もBlueskyを移行先の候補にするユーザーは増え続けていくでしょう。
Blueskyは様々な機能をもった魅力的なSNSです。前述のように、一般的には設定などが複雑と言われる分散型SNSですが、Blueskyはアカウントの作成自体それほど難しくありませんので、興味のある方は本記事を参考にしてぜひアカウントを作成してみてください。
