Figma買収が決裂後、AdobeはXDの開発を再開させるのではないかという予測もありましたが、「これ以上XDに投資する計画はない」とAdobe広報担当者が発表しています※。Figmaの競合ツールの開発が終了することが、ほぼ確実になったため、一部ではFigmaと競合するWebデザインツール開発から撤退するのではないかという噂も囁かれています。


また、2024年3月より、Adobe Creative Cloudの料金値上げが発表されたことにより、ライトユーザー層を中心にユーザー離れが起きる可能性もある状況です。クリエイティブツールの王者として長年君臨してきたAdobeにとって、重要な分岐点に差し掛かっているのは間違いなく、クリエイターにとっても大きな関心事になっていることでしょう。

そこで、今回はいつもと少し趣旨を変えてAdobeの次なる戦略を見極めるために、Adobeの事業を全体的に俯瞰し、買収による事業拡大の歴史などを振り返りながら、この一連を考察したいと思います。またさらに、クリエイターの作業環境構築で重要となるAdobeを今後どのように利用していくべきなのか、代替ツールの候補なども含めて検証していきます。

※参照記事:Adobe Gives Up on Web-Design Product to Rival Figma After Deal Collapse(Bloomberg)

TOPICS

Adobeという企業の全体像

Adobeの次なる戦略の考察とクリエイターの時代の変化に負けない作業環境の構築を考える
参照URL:(Adobe公式)Remembering Dr. John Warnock — 1940–2023Adobeの次なる戦略を予測するために、まずはAdobeの歴史と事業内容について再確認しておきます。

※時系列はWikipediaや過去のニュース記事などでたどれる日時を筆者が確認したもので、あくまでも目安の情報として提示しています。正確性を保証するものではないことを予めご了承ください。


Adobeのこれまでの歴史
Adobeはもともと、プリンターに描画を指示するためのプログラミング言語であるページ記述言語(PDL:Page Description Language)を開発・提供する企業として1982年に設立されました。ゼロックスの研究開発機関であるパロアルト研究所から独立したチャールズ・ゲシキ氏とジョン・ワーノック氏により創業されています。社名はワーノック氏の実家の裏を流れるAdobe Creekという小川にちなんで名付けられました。創業にあたりApple創業者のスティーブ・ジョブズ氏も出資しており、Appleとも関係の深い企業です。

Adobeは1987年にIllustratorを発売、1989年にはPhotoshopを発売します。雑誌『MdN』が創刊されたのも1989年12月で、MdNが「Macintosh designers Network」の略であることからも分かる通り、MacintoshでIllustratorやPhotoshopのようなコンピューターグラフィックスのツール用いたデザインのための総合情報誌として誕生したのです。
こうした、コンピューターグラフィックスによるデザイン手法の登場は、当時のデザイン業界において現在多くのクリエイターが直面しているノーコードツールやAI機能の問題と同じくらいのインパクトを持った出来事でした。

IllustratorとPhotoshopの成功によりグラフィックツールで圧倒的なシェアを獲得したAdobeは、1990年代に入ってから競合する企業やソフトウェアを買収することによって事業を拡大していきます。以下は、Adobeが買収した主なデザイン関連の企業・ソフトウェアです。

Adobeが買収した主なデザイン関連の企業・ソフトウェア

買収先買収年主なソフト説明SuperMac1991RealTimeなどビデオ編集ソフトなど
(後のQuickTimeやPremiereの開発に関連)Aldus1994PageMaker
After Effects
などDTPソフト(開発中だったInDesignを含む)
モーショングラフィックスソフトなどFrame Technology1995FrameMakerDTPソフトGoLive Systems1999GoLive CyberStudioWebオーサリングツールMacromedia1995FreeHandベクターグラフィックソフトを単体で買収2005Flash
Dreamweaver
Fireworks
Director
などアニメーションソフト
Webオーサリングツール
Webグラフィックソフト
マルチメディアオーサリングツール
などを企業ごと買収Pixmantec2006LightroomRAW現像ソフトMacroMates2008MuseノーコードWebデザインツールOmniture2014SiteCatalystWeb 分析ソフトDay Software2015Day SoftwareWebWeb コンテンツ管理ソフトTubeMogul2016TubeMogulビデオ広告 プラットフォームMarketo2018Marketoマーケティング オートメーション ソフトMagento2019MagentoEコマース プラットフォームSubstance 3D2020Substance 3D3Dデザイン ソフトWorkfront2021Workfrontワークフロー管理ツールFrame.io2022Frame.ioビデオレビューおよびコラボレーションプラットフォーム上記の表に挙げられた以外にも様々な企業・ソフトウェアがAdobeによって買収されています。そのほとんどが友好的買収であったと考えられますが、例外としてMacromediaの買収は、友好的買収を提案したものの拒否されたため最終的に敵対的買収に至ったケースです。

Adobeに買収されたツールは「十分に活用されないまま開発が終了してしまう」というイメージを持っている方も多いかもしれません。
これは、Macromediaから買収された後に開発終了になったFlash、Fireworks、Directorといったソフトの印象による部分もあるのかもしれません。また、競合ツールを買収する過程で、その機能の一部を後継のソフトウェア開発やメインのソフトウェアの機能強化に活用していた部分もありますが、時代によって必要なツールが変化していく中でソフトウェアの名称自体が消失したツールも少なくありません。そのため、ベテランのクリエイターにはAdobeによる買収を歓迎しない一部のユーザーも存在します。Figmaの買収の際も、Adobeによる買収に不安視するクリエイターもいました。しかし、実際にはソフト開発の終了は時代の変化による要因も大きく、かなり早い段階で買収されたAfter Effectsなど現在も重要なソフトとしてラインナップされているツールも多いです。

クリエイティブツール以外のAdobeの事業
Adobeのメイン事業は、クリエイティブツールの開発・提供ですが、それ以外の事業も展開しています。
事業の全体像を把握することで、Adobeという企業の強みや課題も見えてくると思いますので、それぞれを簡単に確認してみましょう。

1.マーケティング領域
Adobeは、顧客データの分析やキャンペーンのオーケストレーションなどに役立つ「Adobe Experience Cloud」、広告・SNS・Web サイトのキャンペーンを管理するのに役立つ「Adobe Marketing Cloud」、キャンペーンの効果を測定するのに役立つ「Adobe Analytics」などをはじめとしてマーケティング領域のツールも数多く提供しています。

2.文書管理領域
Adobeのクリエイティブツール以外の事業で最も広く利用されているのが「Adobe Acrobat Pro DC」でしょう。Adobeが開発したPDF(Portable Document Format)というファイル形式は、国際標準規格であり、OSや機器に依存することなく忠実に文書を表示できる技術です。その他にも、電子フォームの作成・管理などが可能な「Adobe Experience Manager Forms」、電子署名サービスの「Adobe Sign」、文書管理に必要なツールをまとめて提供する「Adobe Document Cloud」などを提供しています。

3.学習・コミュニケーション領域
Adobeは学習・コミュニケーション領域の事業も展開しており、eラーニングや学習コンテンツ作成ツールである「Adobe Captivate」や、Web会議・ライブ配信などのツールである「Adobe Connect」などを提供しています。


4.その他
この他にも、全てのAdobe製品とサービスにわたって活用される人工知能と機械学習のプラットフォームとして「Adobe Sensei」というソリューションを提供しています。

こうして事業の全体像を見ていくと、BtoCのサービスだけでなくBtoBのサービスも含めて、様々なビジネスソリューションツールを提供している企業であることが分かります。また、生え抜きの部門は出版や印刷に関連の深いツールや技術で、Webに関連のツールや技術の多くは買収されたものであるということも見えてきます。

 

今後予測されるAdobeの企業動向

Adobeの次なる戦略の考察とクリエイターの時代の変化に負けない作業環境の構築を考える
参照URL:(Adobe公式)企業の社会的責任Adobeという企業の全体像を過去から現在まで広く把握したところで、今後予測される動向について分析していきましょう。

Webデザイン領域は他企業とのパートナシップで
前述のように、AdobeはXDの開発に投資する予定はないと宣言しており、今後Figmaの競合となるツールを開発・提供する可能性は低いと考えられます。また、広報担当者はWebデザイン領域に関しては、他の企業との提携を検討することに前向きであるとも述べており、今後の動向を注視していく必要があります。

Figmaの買収が失敗に終わったことは、Adobeにとって非常に大きな損失だったことは確かですが、他の企業との提携を結ぶことが結果的に吉と出る可能性も十分に考えられます。
プロユースのWebデザインツールとして、一強状態となっているFigmaですが、ノーコードツールやAI機能を搭載したツールが徐々に台頭してきています。また、Webデザインという業務もコモディティ化しつつあり、デザイナーだけが専有する作業領域ではなくなってきています。こうした観点から、様々なノーコード・AIツールと提携することで、Figma包囲網を作り上げていく可能性も十分に考えられるのです。これまでの企業の歩みを踏まえるならば、そうした提携先企業の中から優良なツールを買収するといった流れもありうるでしょう。

こうした他の企業のツールとの連携強化の動きは、すでに始まっており、日本国内でもWixとAdobe Expressの連携に関するZoomウェビナーなどが開催されています。

参照記事:Webサイトのビジュアルを思い通りにカスタマイズ!WixとAdobe Expressの連携機能を活用しよう(Adobe公式)

ノーコードツールやAI機能への取り込み
FigmaやXDのような、ワイヤーフレーム・プロトタイピング・UI/UXデザインを行うツールの開発は事実上ストップしているAdobeですが、それをもってWebデザイン領域すべてから撤退するということは考えにくいでしょう。Webデザイン用のアセットやフレームワークを簡単に出力できるようにするなどDreamweaverやPhotoshopなど既存のソフトの機能を強化する方向性も十分にありえます。また、Figma買収後にAdobeはAIと自社株買いに約60億ドル(約877億円)を投資したとも報道されており、AI機能の開発は今後ますます強化されていくと予想されます。

現在、生成AIはクリエイターの権利や尊厳を大きく侵害するものとして、社会問題化しています。こうした状況はAdobeも十分に把握していると思われますので、クリエイターに寄り添ったAI機能とは何かを模索していると期待したいところです。

長年プロユースのクリエイティブツールの王者として君臨し続けてきたAdobeですが、一方でAdobeという企業の成長は、特殊な技能を習得しなければ携われることができなかったクリエイティブワークを、コンピューターを用いることでより多くの人に開放してきた歴史であるとも言えます。ノーコードツールやAI機能を取り入れることで、より多くの人がクリエイターになれる可能性を広げていくこともAdobeの企業ポリシーと相反するところではないと思われます。

参照記事:Adobe Has $6 Billion for AI and Buybacks After Figma Deal Collapses(Bloomberg)
参照記事:PDFがさらに便利になる。AcrobatにAIアシスト機能が追加(GIZMODO)

EUの規制による影響から逃れられない
Adobeの本社は、現在アイルランドに置かれています。これは、アイルランドの法人税率が12.5%と非常に低く(アメリカ合衆国は21%・日本は23.2%)、主に税金対策によるコスト削減が目的であると考えられます。

本社がアイルランドにあることは、Adobeにとって必ずしも良いことばかりではありません。なぜならば、一般データ保護規則(GDPR)やデジタルサービス法(DSA)といったEUにおける規制の影響を受けやすい環境にあると言えるからです。もちろん、本社所在地に関係なく、EU圏内で経済活動を展開していればEUの規制は避けられないのですが、規制の影響を受ける程度は異なります。

Figmaの買収が決裂したのも、EU当局が独占禁止法違反の防止として、AdobeにXDの売却を提案し、それを拒否したために起こった結果でした。クリエイターにとって大きな懸念事項であるAdobeのサービス内における生成AI機能の扱いについても、AdobeはEUの規制に準拠する形で、生成AI機能を提供する必要があります。今後のAdobeの動向を予測する上で、EU当局の動きが重要な鍵となってくるでしょう。

これらの考察や事業の全体像を見ても分かるとおり、Webサイトの制作・運営・管理・分析をサポートする事業が他にも数多く存在することから、何らかの形でWebデザイン領域の事業も保持するのではないでしょうか。ただし、それはFigmaが提供するWebデザインソリューションの一歩先の未来を見据えたものになると予測されます。

 

脱Adobeの是非と有力代替ツール

Adobeの次なる戦略の考察とクリエイターの時代の変化に負けない作業環境の構築を考える
Adobeの代替ツール候補
Webデザイン領域に関しての今後の動向以上に、ユーザーにとっての関心事は料金の値上げでしょう。学割プランなど様々な裏技を使って料金を安くする試みを行う人もいれば、ライトユーザーを中心に脱Adobeを検討しているクリエイターも出始めています。しかし、クリエイターの業種によって、脱Adobeが可能か否かは異なります。最後に、加入するプランの見直しや代替ツールも含めて、作業環境を構築する上でどのツールを優先すべきかを見極めていきましょう。

クリエイター業種別コスト削減対策
Adobeはクリエイティブツール業界において、寡占状況にあるものの、競合のツールが存在しない訳ではありません。プロユースという観点からは圧倒的なシェアを誇るAdobeですが、買い切り・無料・オープンソースといった領域においては、安定した人気を獲得しているツールが存在します。こうした代替候補となるツールも含めて、Adobeを利用していると考えられるクリエイター業種別に、クリエイティブツールのコスト削減対策を考えてみましょう。

紙媒体をメインに活動するデザイナー
DTP領域に関しては、どんなにクリエイターが利用する端末環境が進化したとしても、堅牢な現行の印刷システムを簡単に変えることはできないという壁があります。印刷関連機器は、安定した稼働が優先されるため、アップデートというのは慎重な投資判断が必要になりAdobeの優位性は今後も変わらないと予測されるのです。したがって、印刷関連の制作物に携わるクリエイターや企業は、脱Adobeはほぼ不可能であるといって過言ではありません。紙媒体メインのデザイナーは、モリサワパスポートのライセンス料などもランニングコストに含まれてきますので、それら以外のサブスク料金を見直すほうが良いでしょう。

Web制作・アプリ制作をメインに活動するデザイナー
Webやアプリの制作をメインとするフリーランスのデザイナーは、脱Adobeは検討してもよい事柄なのかもしれません。その場合は、Figmaの上位有料プランに加入することを前提として、IllustratorやPhotoshopの代替ツールとしては、買い切りで購入可能なプロユース向けツールを開発・提供するAffinityのツール(Affinity Designer、Affinity Photo)が候補になるでしょう。ただし、対応できるクライアントにも制限が出てくる可能性もあるため、顧客層の分析を十分に行ってから検討しましょう。デザイン会社や企業のデザイン関連部署については、脱Adobeは難しいと思いますが、契約台数を減らして予備のツールとして買い切りのツールも利用していくという対策は可能でしょう。

イラストレーター・漫画家
現在もPhotoshopでイラスト作成をしているイラストレーター・漫画家は少なくなっていると思いますが、使い慣れているという理由で他のペイントツールへ移行していない人もいるでしょう。その場合は今回の料金値上げを機会にCLIP STUDIOに乗り換えるのも一つの手かもしれません。Illustratorでイラスト作成をしているイラストレーターの場合は、Affinity Designerなども視野に入りますが、納品時のトラブル回避なども考慮すると継続してコンプリートプランの場合は単体プランに切り替えするなどしてAdobeを利用し続けたほうが良いと思われます。

関連記事:デザイナーこそ使うべきペイントツール「CLIP STUDIO PAINT」をデザイン現場で活用する方法

写真家
写真家はもともとAdobeがPhotoプランを提供していますので、料金値上げは苦しいところですが、積極的に脱Adobeする理由は見当たらないかもしれません。ただ、RAW現像・写真加工・編集ツールに関してはプロユースの代替ツールが数多く存在しますので、特に芸術活動などクライアントワーク以外で写真撮影を行うといった場合においては、乗り換えを検討しても良いのかもしれません。

 編集者・ライター
前述のように印刷関連の制作物に携わる業種は脱Adobeは難しいと思われますが、出版社の編集部であれば、すべての端末に一律で同じプランを導入する必要性はないので、端末によってInDesignファイルのテキスト部分だけ編集可能なInCopy単体プランの利用を検討するといった対策も考えられます。また、近年はPDF入稿(PDF/X-1aやPDF/X-4など)も可能になってきましたので、同人誌を作りたいといったケースなどにおいてはAffinity DesignerやAffinity Publisherを代替にすることを検討しても良いかもしれません。

動画クリエイター・動画編集者・アニメーター
動画編集やアニメーション編集には、Adobeの競合となるプロユースのツールが数多く存在します。それらの料金体系と比較して、脱Adobeを検討することも可能でしょう。ただし、凝ったサムネイル画像やモーショングラフィックなどを動画と合わせて制作する場合はコンプリートプランを利用するほうが結果的にコストを抑えられる可能性が高いでしょう。

以下に、有力なツールの候補を表にしましたので参考にしてみてください。

有力代替ツール候補一覧表

Illustratorの代替ツール

Affinity Designerプロユースな機能を多数搭載したベクターグラフィックソフト買い切りで購入できる。Inkscape無料で利用できるベクターグラフィックソフト。
Photoshopの代替ツール

Affinity Photoプロユースな機能を多数搭載した写真編集ソフト。買い切りで購入できる。GIMP無料で利用できる画像編集ソフト。CLIP STUDIO PAINTイラスト制作・マンガ制作用のソフト。アニメーションの制作も可能。数多くの良心的プランが用意されており買い切りプランも提供。
InDesignの代替ツール

Affinity Publisher プロユースな機能を多数搭載したDTPソフト。買い切りで購入できる。
Lightroomの代替ツール

PhotoDirectorRAW現像ソフト。サブスクだがAdobeのフォトプランより安価な料金で利用可能。AfterShot proRAW現像ソフト。買い切りで購入可能。SILKYPIX日本製のRAW現像ソフト。買い切りで購入可能。
Premiere Proの代替ツール

Final Cut Pro X  Appleが提供する動画編集ソフト。買い切りで購入可能。PowerDirectorAI技術を搭載した動画編集ソフト。サブスクだがPremiere Pro単体プランより安価な料金で利用可能。DaVinci Resolveプロ向けの動画編集ソフト。それなりの価格であるものの買い切りで購入可能。
After Effectsの代替ツール

Motion      Appleが提供するモーショングラフィックソフト。買い切りで購入可能。上記に挙げた以外にも、Adobeの代替ツールの候補になるソフトは存在します。クリエイティブツールにおけるAdobeの寡占状態が進むことはユーザーにとって決して望ましいことではありませんので、時にはコストパフォーマンスを重視するなど、他のツールを選択していくことも時代の変化に負けない作業環境を構築には重要かもしれません。

まとめ

本記事でAdobeという企業を俯瞰して考察する過程で、クリエイティブ業界の発達や進化にAdobeがいかに貢献してきたのかということを再認識できたかと思います。一方で、Adobeは料金の値上げの理由について生成AI機能の追加などによる付加価値向上であるとしていますが、その機能がクリエイターにとって本当に必要なのか、バージョンアップによって生じた不具合を修正・改善するほうが先なのではないか、といった疑問は残ります。

買い切りのパッケージとして発売されていたAdobe Creative Suiteでは、DTP用パッケージの「Design」、Web制作用パッケージの「Web」といったように用途別にツールを揃えることが可能で、バージョンによりそれぞれStandardとPremiumという価格帯も選択可能でした。その当時は、「Adobe税」などと揶揄するユーザーは少なかったと思います。

それぞれがどんな選択をするにせよ、Adobeの今後の動向がクリエイターに与える影響は大きいでしょう。昨今の事情から料金値上げがやむを得ないことだとしても、以前のように目的や用途に合わせた良心的なプランを提供することが、Adobeが今後もクリエイターに支持される企業であり続けるための重要な施策なのではないでしょうか。次なる戦略に期待しつつ、ユーザーとしてしっかりとAdobeの動向を見守っていきましょう。
 

Adobeの次なる戦略の考察とクリエイターの時代の変化に負けない作業環境の構築を考える