理由は簡単で、例えば最大65Wに対応する充電器があったとして、2ポートを同時に使う場合、1ポート目が45W、2ポート目が20Wといった具合に、出力を分割する必要があるからです。そのため片方のケーブルが抜き差しされた段階で、接続したデバイスに合った電力の再配分を行うために、充電のリセットが行われるというわけです。
もっとも、USB PDによる充電は、トップスピードに達するまでに数秒から十数秒かかるので、せっかくトップスピードで充電しているのにリセットがかかると、低速の充電からやり直さなくてはならず、充電の効率は下がってしまいます。また接続しているのが電力を常時供給しなくてはいけないデバイス、例えばモバイルルーターだと、そのたび通信が切断されますし、ハードディスクなどのストレージだと、故障に直結しかねません。
今回紹介するAppleの「デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプタ」は、こうしたケーブルの抜き差し時につきもののリセットを行わなくとも出力を調整する機能を備えた、2ポートのUSB Type-C充電器です。




実際にどのような挙動になるのか、チェッカーを接続して確認してみました。両方のポートで充電を行っている状態で、片方のポートを抜き差しすると、ほかの充電器であれば通電がいったんリセットされ、チェッカー自体も画面がいったん消えて再起動するのですが、本製品はそのようなことはなく、充電中であることを示すデバイス画面上のアイコンも表示されたままになります。これは「抜く」場合も「挿す」場合も同様で、また2ポートいずれも同じ動作をします。





そのため、もし1ポート目だけで最大35Wの出力のほとんどを使い切っていた場合も、いちどコンセントから本製品を抜いてやらないと電力が分配できない……といった心配は無用です。リセットせずに出力を調整するこの仕組みは、ほかのUSB PD充電器ではほとんど見られない大きな利点で、なぜ販売にあたってこれを大きくアピールしないのか、実に不思議に思えるほどです。


やや物足りないのは、やはり出力でしょう。最大35Wということで、ノートPCは充電できる製品とそうでない製品に分かれるほか、充電はできてもなかなか満充電にならないと予想されます。またiPhoneは、最新のiPhone 15シリーズだと最大27Wでの充電に対応するなど、モデルチェンジのたびに大きな出力に対応するようになりつつあるため、将来性を考えると、もう少しパワーがあったほうがよいと感じるのも事実です。
実は今回筆者がこの製品を購入したのは、本製品が発売されてから初となる割引販売を、Amazonが行っていたことによるものです。割引の理由は定かではありませんが、前述のように出力が最大35Wとやや心もとないことから、モデルチェンジが控えているのかもしれません。もし使っているiPhoneが古いモデルであれば、35Wという出力でも問題ないでしょうが、少しでも高速に充電したいユーザーは、後継モデル登場の可能性も踏まえて、やや慎重になったほうがよいかもしれません。
なお、本製品は2つのポートが横に並んだ構造ゆえ底面積が広く、電源タップに挿した時に隣のポートに干渉しやすいのもネックですが、この2ポートが縦に配置された姉妹モデルも存在しており、そちらも同様にケーブル抜き差し時のリセットが行われない仕様とのことですので、購入を考えている人はそちらも併せてチェックしてみてください。


実売価格:7,800円
発売元:Apple
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B0B3C5J1YM/
