ChatGPTの登場に始まり、非常に大きなインパクトを持って世間に衝撃を与えることになった生成AIの動向も、少しづつ普及が進むにつれて落ち着いてきた印象があります。しかし、生成AIに向き合う姿勢は、それぞれ置かれた状況によって様々です。


生成AIを使いこなすことで大きな成果を出し始めている人や、すでに生成AIがなければ業務が成立しない人なども増加していると思います。一方、AI学習による盗用問題など不正利用されないために利用を控えるクリエイターも存在していると思います。悩ましいのは、どちらが「正解/不正解」ということではなく、(クリエイターにとっても)生成AIを遠ざけることのメリットよりもデメリットの方が大きくなっていくかもしれないという点です。

世界各国で生成AIの普及が進む中、日本の生成AI個人利用は9%にとどまるといったデータも報告されており、中国やアメリカに大きな差をつけられていることが、今後日本の経済や発展に大きな影を落とすかもしれません。
※参考URL:生成AIの個人利用、日本は9%どまり 中国・米国と大差(日本経済新聞)

本連載では、そうした状況の中でもクリエイターも導入しやすい生成AIツールを、これまでもいくつか紹介してきました。今回紹介する対話型の検索AI「Perplexity」も、そうしたツールの一つです。にわかに話題となっている「Perplexity」はどんな特徴を持ち、クリエイターにとって、どういう使い方が最適なのかを丁寧に解説します。

目次

Perplexityとは

▶︎Perplexityとは

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
Perplexityの検索画面Perplexity(パープレキシティ)とは、最新の自然言語処理(NLP)と機械学習技術を利用するこで、より自然な対話や文章生成を可能にした対話型のAI検索エンジンです。Perplexityを開発するPerplexity Labsというベンチャー企業は、公式に発表されている訳ではありませんが、Google AIを研究していたメンバーが中心になって設立されたと言われています。検索とAIを組み合わせたツールの先駆的存在であるため、検索AI領域を大きくリードしている状態です。

▶︎PerplexityとChatGPTとの違い
ChatGPTは、OpenAIが開発したGPTシリーズ(GPT-3.5、GPT-4、GPT-4-turboなど)のLLM(大規模言語モデル)を基盤に運用される単一のモデルに特化したサービスです。一方でPerplexityは、GPT-4、Claude、Geminiなど複数のAIモデルを活用し、検索機能に特化した対話型AIとして提供されています。

詳しくは後述しますが、両者の大きな違いは、情報の取得方法とその利用用途にあります。
ChatGPTは事前学習した膨大なデータセットに基づいて回答を生成するため、カスタマイズ性が高く、多様な質問に柔軟に対応できる点が特徴です。これにより、対話や創造的なタスク、文章生成に特化しています。一方、Perplexityは学習済みのデータに加え、リアルタイムでインターネットから情報を検索し、関連質問の提案や出典元の明示を行います。そのため、正確な事実確認(ファクトチェック)や特定トピックの詳細な調査において優れた能力を発揮します。

▶︎Perplexityの料金体系
Perplexityにはいくつかプランが提供されています。いくつか制限もありますが無料版でも、その機能を十分に体感することが可能になっています。以下に簡易的なプラン比較表ですので、参考にしてみてください。料金については変更の可能性もあるため、必ず自身で公式のプラン関連のページやサブスクリプションに関するページを確認しておきましょう。

Perplexityの簡易プラン比較表

サービス内容無料版PRO月額版料金無料$20/月無制限のクイック検索ありありPro Searchの利用回数3回/1日300回以上/1日ごと利用可能モデル速度と品質に最適化された
標準のPerplexity AIモデルGPT-4o、Claude-3、Sonar Large (LLama 3.1)などから選択可能※上記のプラン以外に、企業向けのエンタープライズプランが提供されている。

Perplexityがなぜ注目されているのか

なぜ、Perplexityが注目されているのかを確認しておきましょう。

▶︎文脈理解型のAIである
Perplexityは、従来型の検索エンジンとは異なり、自然言語処理技術を活用して質問の文脈を理解し、人間に近い自然な回答の生成するツールであるからです。

▶︎ハルシネーションが起きにくい
Perplexityは、検索と連動することで従来のチャット生成AIのように、フェイク情報、情報の断片化、信頼性の低い情報(いわいるハルシネーションと呼ばれる現象)が発生しにくいという特徴があります。

▶︎チャット生成AIと検索AIの特徴を併せ持つ
Perplexityは、チャット生成AIと検索AIの両方の特徴を併せ持っています。
UIはChatGPTなどの生成AIに似ており、その機能も対話型のチャット生成AIと検索AIの両方の側面を持っています。AIによる検索サポートと同時に、それら検索結果をソースにして対話の回答文が生成されます。そのため、チャット生成AIの一つとして紹介されることも多いです。

▶︎使い勝手の良さと多機能性
Perplexityはログイン不要で利用可能でき、モバイル端末からも簡単にアクセスできます。ログインやアカウント作成も、GoogleやAppleのアカウント、メールアドレスなどから簡単に実行できます。

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
MacOS用のPerplexityまた、MacOS用のアプリやGoogleChromeの拡張機能なども提供されています。加えて「質問に答える」「テキストを生成する」「クリエイティブなコンテンツを作成する」「テキストを要約する」など、多様なタスクを支援する多機能なツールです。

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
「発見(Discovery)」機能上記の画像は「発見(Discovery)」という機能です。この発見は他のユーザーがどんな検索を行ったのかを確認できるページです。検索動向を知ることで、世間の興味・関心をキャッチアップすることができます。

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
「スペース(Space)」機能
Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
「ライブラリ(Library)」機能「スペース」は、チームやプロジェクトごとにカスタマイズされたスペース内で、内部ファイルやリサーチ結果を共有できるAI搭載のコラボレーションハブ機能です。「ライブラリ」は、検索履歴をたどれる機能です。
クリックすると、検索した時と同じ回答画面が表示されます。チャットの履歴が使いにくい生成AIも多い中、ライブラリ機能は簡単に履歴をたどることができます。

Perplexityの特徴

それではPerplexityによる検索の特徴について、以下に詳しく解説します。

▶︎最新情報から回答が生成される
Perplexityの回答は、インターネット上のWeb検索結果が反映されているため、最新の情報を基に回答されます。これはデータベースが静的で、最新のWeb情報が反映されないChatGPTとは大きく異なります。Geminiに関してはGoogle検索と連動していますので、PerplexityをGeminiの両方を使って回答内容を比較してみるのも良いかもしれません。

▶︎情報ソースが辿れる・複数のソースを確認できる
Perplexityは、生成した回答の情報源が自動的に表示されるため、1次情報に直接アクセスすることができます。一方で、一般的なチャット生成AIでは、生成されたテキストからのみ情報を得ることになるので、基本的に1次情報を確認することはできません。「情報源となったソース情報のURLも回答してください」といったプロンプトを入力しても、出力されるリンクをたどると全く関係のないWebページや英語のページに飛ばされることは多いです。業務で参考にした記事のURLを求められることもありますので、こうした機能は非常に便利でしょう。

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
画像検索結果の「もっと見る」をクリック
Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
回答の情報源となった画像も表示されるまた、上の画像のように1次情報として画像や動画も検索結果として表示されます。図やグラフなど、ビジュアルでの情報を確認したい場合などにも役立つツールです。こうした機能はWebディレクターや編集者などがコンテンツのファクトチェックする際にも役立つでしょう。


▶︎情報範囲を絞れる
Perplexityは情報範囲を絞って検索することが可能です。

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
ソースの焦点で「ビデオ」を選択
Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
「ビデオ」に絞られた検索結果と回答が出力される新規スレッド入力欄の左下にある「ソースに焦点を設定する」という項目をクリックして、任意のソースを指定すると検索範囲を絞ることができます。例えば「ビデオ」という項目を選択するとYouTube動画などの「ビデオ」からソースを出力してくれます。また、それらのデータに基づく回答が出力されます。

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
ソースの焦点で「学術」を選択
Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
「学術」に絞られた検索結果と回答が出力される科学的根拠に基づいた情報を得たいという場合は「学術」というソース項目で範囲を絞ると、より精度の高いアカデミックな情報の検索結果と、それに基づく回答が出力されます。

▶︎関連情報が自動生成される

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
回答の下部には関連情報が自動生成される生成された回答の下部には「関連」という自動生成された関連する質問が表示されています。この関連の項目右端にある+マークをクリックすると、当該の質問に関する新しいスレッドが自動に作成されます。

▶︎文章生成の面では課題もあり
Perplexityは、ChatGPTやGeminiのように、文章作成AIとして活用することも十分に可能です。ただし、複数のチャット生成AIを使っていると、Perplexityにも得意・不得意があり、ジャンルによっては、あまり精度の高くない回答が出力されることもあることがわかると思います。やはり、検索AIといった側面が強いので、既存の情報に基づくテキスト生成は得意ですが、新たにコンテンツを作成するようなクリエイティブな文書作成などはChatGPTのほうが良い回答を得られると感じることが多いです。

チャット生成AIの使い分けと今後の展望

大規模言語モデルをベースとしたテキストベースの生成AIは、世界各地のトップレベルの研究者・エンジニアが有力なツールやサービスをリリースし群雄割拠の状態です。今後どのツールがデファクトスタンダードになっていくかを見極めるのは現段階では難しいでしょう。そのため、それぞれのツールを実際に使ってみて比較する、シーンごとに使い分けるといった過程で、自分にあったツールを選択する必要があります。
そこで、今後の展望も含めながら、Perplexityの立ち位置も少しイメージできるようになっておきましょう。

▶︎同じく注目される生成AI「Claude」との比較
新興ベンチャー企業が開発する生成AIとしてPerplexityと同様に注目されているのが「Claude」という生成AIです。このClaude(クロード)は、Anthropicというベンチャー企業が開発しているサービスです。Google AIの研究者たちが設立したと言われるPerplexity Labsに対し、AnthropicはOpenAIの元スタッフを中心に設立されています。このようなルーツの違いが、両者の特性に影響を与えていると考えられます。

検索情報を基にした即時の情報提供が得意なPerplexityに対し、Claudeは自然な対話やコード生成を含む創造的なタスクが得意です。両者の比較を以下の表に簡単にまとめましたので参考にしてください。

特徴Perplexity Claude開発元Perplexity Labs Anthropic主な強み検索情報を基にした最新の情報提供 自然な対話、創造的なタスク、倫理的な配慮UIシンプルな検索型 対話型、長時間の対話にも適応得意なタスク情報検索 創造的な文章生成、コーディングなど▶︎AIを使った検索の未来
どの言語モデルが覇権を握るのかという熾烈な競争は「チャット生成AI」から「検索AI」へとフェーズが移ってきています。

メディアやインフルエンサーは、ついつい「ググる時代は終わった、これからはPerplexityを使う時代が来る」といったセンセーショナルでキャッチーな情報発信をしがちですが、現在起きている検索のパラダイムシフトは、AからBへツールがシフトするといった単純な移行ではないと考えられます。

なぜなら、Google検索にも既にAIの技術が組み込まれているからです。例えば、Googleは2023年に「Search Generative Experience(SGE)」を発表し、試験的に生成AIを活用した検索結果の表示を行う取り組みを実施しています。また、GeminiををはじめとするGoogleの生成AIは、将来的にGoogle検索に統合される方向で開発が進められています。

※参考URL:劣化した?「Googleアシスタント」、Gemini統合で挽回できるか(CNET Japan)

また、ChatGPTの開発元であるOpen AIは、2024年10月31日に検索AIツール「ChatGPT search」を公開しました。これは、2024年7月にすでに開発が発表されていた検索AI「SearchGPT」をChatGPTに統合したサービスです。この他にも、MicrosoftはAzureやCopilotなど各種サービスに検索AI機能を組み込んでおり、MataでもSNSの検索にAI機能を組み込むといった動向は着々と進められています。私たちは意識せずとも検索AIを使っている状態に移行しつつある、というのが現在起こっている変化の正しい認識だと思われます。
※参考URL:OpenAIがAI検索「ChatGPT search」を公開、検索エンジンとチャットを統合(日経XTECH)

まとめ

どんな業務においても情報を検索する・探索するというのは、必要不可欠な作業です。そのため、AIが進化しても検索という行為そのものは無くならないでしょう。重要なのは、現在のようなキーワード入力による検索の時代は終わり、人間とコミュニケーションを取るように、検索をAIにサポートしてもらう時代がやってくるという視点です。こうした次世代の検索手法を上手に使いこなすことが、今後ビジネスにおいてもクリエイティブな活動においても重要なスキルになってくるでしょう。

そのためには、早い段階で検索AIツールを実際に使ってみる必要があると思います。Perplexityは、無料版も提供されており導入しやすい点も含め、次世代の検索体験を得るのに最適なツールですので、本記事で興味をもたれた方は、ぜひ利用してみてください。

Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説
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