次々に新しいサービスやツールがリリースされている生成AI業界ですが、低価格で高性能な中国発の生成AI「DeepSeek」の登場が多大なインパクトをもって伝えられたのも記憶に新しいところです。
数多くある生成AIツールの選択肢の中で、すでにお気に入りのツールを見つけた方もいれば、次々に登場する新しいツールに戸惑い、どれを選べば良いか迷っている方もいるでしょう。
そこで、今回は今後も大きく注目されると思われる「DeepSeek」について解説します。なお、本記事は「DeepSeek」の利用をおすすめする記事ではありません。「DeepSeek」という社会的に大きな影響を与えている生成AIについての情報をクリエイター視点で分析する記事となります。実際に利用してみるか否かは、個々の状況によって異なるかと思いますので、最新の生成AI事情をキャッチアップする記事としてご覧ください。
目次
▶「DeepSeek」とは
DeepSeekは、深度求索公司という中国のIT企業が開発したAI技術で、自然言語処理や生成AIを中心に、中国語と日本語に特化したサービスを提供しています。ローカルなニーズに応えるため、文化的なニュアンスや地域特有の文脈を理解する能力に優れており、企業向けのカスタマイズ可能なAIソリューションも提供しています。オープンソースモデルの公開や開発者支援にも力を入れており、技術の透明性と普及を促進しています。公式な情報については、以下を参考にしてください。
【公式情報の確認方法】
GitHub公式:数学モデルのみ公開 → DeepSeek-Mathリポジトリ
ライセンス問い合わせ:contact@deepseek.com へ直接確認
▶「DeepSeek」が話題になっている背景
DeepSeekが注目されている大きな要因は、AIモデルの効率性とコストパフォーマンスの高さにあります。高性能AIモデルの実現には、高度な計算能力を持つ半導体が不可欠ですが、DeepSeekはAIモデルのアルゴリズムを最適化することで、既存のハードウェアでも高い性能を発揮し、現在主流となっている生成AIよりも低価格で高性能な生成AIを実現しました。これにより、生成AI市場に大きな影響を与えています。また直接的な要因であるという明確な情報はありませんが、多くの報道では2024年6月に時価総額で世界1位になったNVIDIAの株が2025年1月に急落する一因となった可能性が指摘されており、生成AIというソフトウェアの市場だけでなく、半導体というハードウエアの市場にも大きな影響を与えています。
中国政府もDeepSeekのようなAIプラットフォームの発展を後押ししているといった要素も組み合わさり、DeepSeekはグローバルAI市場において、その競争力を一層高めています。また、生成AIモデルの一部をオープンソース化することで技術の民主化を推進している点も注目されています。DeepSeekは中国国内の政府機関や医療機関にも採用が進んでおり、その影響力は東アジア圏を中心に急速に拡大しています。
▶「DeepSeek」が提供する料金プラン
DeepSeekの料金プランは、主にAPIの利用に基づく課金体系になっています。API利用料金は、入力および出力トークン数に基づいて計算される従量課金制です。トークンとはAIが処理するテキストの最小単位(単語や文字など)のことを指しています。利用するモデル(DeepSeek-R1、DeepSeek V3など)によって、トークンあたりの料金が異なっています。こうしたAPIの利用に基づく料金プラン設定は、大規模な開発やビジネスでの利用を想定しているようで、個人ユーザー向けの料金体系が明確に打ち出されていないように思われます。
▶アカウント作成方法
「Start Now」をクリック
Eメール・電話番号とパスワード、またはGoogleアカウントでログイン可能まず、DeepSeekの公式サイトへアクセスします。TOPページにある「Start Now」という項目をクリックすると、アカウント作成・ログイン画面に切り替わります。新規アカウント作成は、Eメールもしくは電話番号とパスワードでログイン設定する方法と、Googleアカウントを利用してログインする方法があります。電話番号でログインするのは少し不安を感じたので、ここではあまり使ってないGoogleアカウントを使ってログインしてみることにしました。
生年・月を選択して「Confirm」をクリック
プロンプトを入力アカウント作成とログインは簡単で、アカウント作成の最後のステップで、生年と月を入力するモーダルウィンドウが開くので生年月を設定して「Confirm」というボタンをクリックします。プロンプト入力画面が表示されたら、アカウント作成は完了です。
▶使い勝手や性能
DeepSeekが生成した回答の一例私個人の感想になりますが、性能面や使い勝手についても説明します。まず、性能面ですが他の生成AIと比べると回答が出力されるまでにやや時間がかかるような気がします。回答内容の精度については、使い込まないと判定できない部分もありますが、特に優れているとも劣っているとも感じませんでした。
同様の質問をGeminiにしてみましたが「負債は会計上、資産とは区別されます。しかし、経営や財務の視点からは、負債が資産形成や事業成長に貢献する場合もあり、その意味で『資産』と捉えることもできます。」という回答が出力されました。「負債は資産なの?」といった疑問を持つといった状況は、会計業務や簿記の学習といったような想定は十分に可能ですので、この質問に関してはDeepSeekの回答はやや精度が低いように感じました。
また、気になるのはユーザーインターフェイスです。プロンプト入力欄で質問を入力する際にEnterキー(Returnキー)を押すと、入力途中であるのにプロンプトが送信されてしまいストレスを感じました。また、モデルの切り替えボタン等の使い方も、感覚的に分かりづらくあまり良いUIには感じませんでした。
▶主な機能
DeepSeekの主な機能ついて簡単に説明します。DeepSeekには以下のような主要モデルがあります。DeepSeekのChatでは、これらのモデルが用いられて回答が生成されています。
DeepSeekモデル一覧
モデル名 特徴 主な用途DeepSeek LLM 基盤大規模言語モデル(汎用型) テキスト生成・質問応答全般DeepSeek R1 LLMを強化した推論特化型(複雑な論理処理に優れる) ビジネス分析・高度な対話DeepSeek V2/V3 バージョンアップ版(V3はマルチモーダル対応) 汎用AIタスク・画像連携DeepSeek Coder コード生成特化型(20+言語対応) プログラミング支援DeepSeek Coder V2 Coderの進化版(コードデバッグ機能追加) エラー修正・最適化提案DeepSeek Math 数理推論特化型(数式処理/証明可能) 学術研究・教育支援DeepSeek VL マルチモーダル型(Vision-Language統合) 画像解析・画像説明生成
DeepThink(R1)
DeepThink(R1)機能DeepSeekは、プロンプト入力欄の下部にあるボタンで、モデルを切り替えることができます。DeepThink(R1)は、より深い分析が可能なモデルです。
Search
Search機能DeepThink(R1)の隣には「Search」というボタンがあります。このボタンをONにして送信ボタンをクリックすると、AI検索ができます。通常のモードとの差は、あまり実感しにくいのですが、外部サイトへのリンクなども回答の中に含まれているのを確認できました。
アプリケーション
iOS版のアプリDeepSeekは、iOS版のアプリも提供しています。Android版については、現在のところ提供されていないようです。
また、DeepSeekに、自身の特性を訪ねたところ、「DeepSeek-V3」というAIモデルは、主に中国語と日本語のユーザー向けに最適化されており、ローカルな文脈やニーズに応じた回答を提供しているので、中国やアジアのローカルな情報に強く、地域特有の質問にも対応可能であるという内容が返ってきました。
さらに、多機能かつ汎用性が高いため、今後の生成AI活用を先取りできるツールとしても適しています。 加えて、注目を集め、多くの資本が投資される可能性が高いため、今後の進化に期待できる生成AIの一つです。クリエイター視点では、新しいアイデアの発想支援や制作の効率化に役立つ可能性があり、ツールとしての活用価値も高い点がメリットになるでしょう。
例えば、トランプ政権やイーロン・マスクのような特定の政治的立場を持つ人物が、生成AIの倫理観にも自分たちの都合の良い思想を押し付けようとする動向があることが今まさに報道で伝えられています。こうした傾向は、独裁的な傾向が強い国家体制が長期的に続いている国であれば尚更強まると思われます。歴史的な事実なども隠蔽されたり、歪められる可能性も否定できません。また、特定の思想信条や宗教などが絡むと科学を否定する動きが出る可能性があり、生成AIの信頼性を低下させる要因の一つとなるでしょう。
クリエイター視点では、データソースの不透明性による著作権・知的財産権の問題は特に気になるところになります。不正なデータソースによって学習された画像生成AIの問題と同様に、DeepSeekをはじめとした中国発の生成AIは、クリエイターとしての倫理的判断がより重要視されるので、この点は大きなデメリットであると考えられます。
※参考URL:トランプ政権で変わる 国際的「AIガバナンス」の行方(日経BizGate)
※参考URL:マスク氏のxAI、マイクロソフト・ブラックロックのAI基金に参加(TBS NEWS DIG with Bloomberg)
▶生成AI市場のこれから:「性能」「コスト」「倫理」のバランス競争
多くの職業・職種が生成AIに置き換わるといった予測は、現実になりつつあります。人材が生成AIに置き換わるという観点で考える場合、重要になってくるのが「性能」「コスト」「倫理」のバランスです。
毎年、受験シーズンになると「生成AIは共通テストで好成績を収めた」「東大の入試問題を解いて合格レベルのスコアを出した」といった話題がニュースになるのが風物詩となりつつあります。ニュースとしては、そうした性能面の進化のほうがキャッチーなのだと思いますが、ここで立ち止まって考えなければいけないのは、様々な事業において生成AIに担ってほしい業務が、本当に難関大に合格するような知能がなければできないのかという点です。
研究開発など、高度な専門知識を有する業務においては、性能面が非常に重要なファクターになります。一方で、多くのビジネスシーンで必要な業務というのは、効率的に雑多な業務をこなすことであって、それは難しい受験勉強をクリアするといった類のタスクとは少し異なるでしょう。
どの生成AIを採用するかを、企業の人事に置き換えて考えてみましょう。勉強ができて高度な専門知識を持っているが高給取りでモラルに欠けている人物と、専門知識はそこそこでトップ層には劣るものの、安い給料で働いてくれて人柄も良い人物、どちらを採用したいですか? という話と似ている気がします。
例えば、ChatGPTは高度な性能を持つ一方で、コストが比較的高めです。Geminiは、性能とコストのバランスが取れており、倫理面でも比較的安定しています。Claudeは、高性能でコストが比較的高めですが、倫理面での信頼性が高く安心して利用できます。DeepSeekは、高性能かつ低コストですが、倫理面におけるデータの透明性については慎重な検討が必要です。この中で、どの生成AIを人的リソースに置き換えるかをイメージしてみると、自分(自社)に合った選択肢がおのずと絞られてくるのではないでしょうか。
▶「DeepSeek」が信頼性を獲得するために必要なこと
プライバシーポリシーのページDeepSeekが広く普及し支持を得ていく上で課題となってくるのは、ひとえにAIモデルや開発企業に対する信頼性の獲得です。中国の国家体制が大きく変わる可能性は低いと思われますので、この課題をDeepSeekが克服していくのはかなりの困難を伴うでしょう。ただ、トランプ政権によってアメリカという国に対する信頼性が大きく変わり始めていることで、アメリカで開発されている生成AIの信頼性が低下する可能性も出てきました。とはいえ、Open AIやGoogleは、トランプ政権に忖度した態度を見せてはいるものの、グローバル企業としてのモラルを失っているわけではないと思います。
一方でX(旧Twitter)に搭載されたGrokとDeepSeekのどっちが信頼できるかを考えてみると、もしかしたらDeepSeekのほうが安心して利用できるかもしれないと思う人もいるのではないでしょうか。DeepSeekが倫理面でのポリシーをどう示していくかは、今後の生成AIの展望を分析していく上で注視しておくべき事項の一つでしょう。
DeepSeekのプライバシーポリシーと利用規約
プライバシーポリシーのページ
利用規約のページ
▶DeepSeeKの登場によって変化する生成AIの今後の展望
DeepSeekの登場は、日本製の生成AIにも大きな可能性を秘めていることを示唆してくれているように思います。トランジスタの小型化など、半導体産業で日本は大きくリードしてきましたが、そのアドバンテージが失われてしまっているというのが、多くの有識者が考える日本の現状でしょう。
熊本県にTSMC(台湾積体電路製造)の工場が建設されて大きな注目を集めていますが、そこで作られる半導体は最先端のものではないという指摘もありました。しかし、DeepSeekによって半導体バブルが崩壊し潮目が変わったという見立てが有力であれば、求められる半導体は高性能である必要はなく、汎用性が高くコストパフォーマンスが良いものということになります。だとすれば、TSMC熊本工場はより重要な拠点となる可能性があります。また、日本の半導体事業全体がかつての活気を取り戻す可能性もあります。
さらに、性能面でNo.1を競うのではなく、「性能」「コスト」「倫理」でバランスの取れた生成AIの開発ということになれば、後発の生成AIでも優位性を獲得することは十分に可能だと予測されます。アメリカの生成AIに対する信頼性が揺らぎ始めている中で、国産の生成AIを待ち望む国内企業も多いと思われます。また、グローバルな市場を考えても、日本という国の信頼性は、中国よりも高いアドバンテージを持っていると思われます。
生成AIの代名詞的なポジションにあるChatGPTや、無料で多くのサービスを提供するGoogleのGeminiのようなツールとうまく住み分けることができれば、日本製の生成AIにもかなりチャンスがあると予測できるでしょう。
※参考URL:百度やテンセントが生成AIを相次ぎ発表、外国製AIの規制も(日経クロステック)
また、DeepSeekの登場は、生成AIのローカライズという視点も提供してくれたように思います。日本は生成AI開発で周回遅れだといった言説をよく耳にしますが、生成AIを広く普及する段階になってくると重要視されるのは性能面だけではなくなってきます。どんなに性能が良くてもUIが残念な生成AIは、使い勝手の面で優れているとは言えません。DeepSeekには、そうしたUI面にも課題があるように感じました。
これから、いろいろな形で生成AI機能が組み込まれたプロダクトが開発されていくと思いますが、生成AI関連ツールが多くのユーザーから支持されるためには、テクニカルな部分も含めてデザイナーをはじめとしたクリエイターの果たす役割が大きいということは間違いないでしょう。
数多くある生成AIツールの選択肢の中で、すでにお気に入りのツールを見つけた方もいれば、次々に登場する新しいツールに戸惑い、どれを選べば良いか迷っている方もいるでしょう。
また、クリエイターの中には、生成AIを一切使用しないという方もおり、そのような個々のスタンスは尊重されるべきです。しかし、いずれの立場であれ、生成AI技術が私たちの生活のあらゆる側面に浸透しつつあることは否定できません。今後、プライベートを含め、生成AIに全く触れずに生活することは困難になる可能性があります。このような状況を考えると、生成AIを肯定するか否定するかに関わらず、生成AIという技術に対しての解像度を高め、正しく理解することが重要になってくると考えられます。
そこで、今回は今後も大きく注目されると思われる「DeepSeek」について解説します。なお、本記事は「DeepSeek」の利用をおすすめする記事ではありません。「DeepSeek」という社会的に大きな影響を与えている生成AIについての情報をクリエイター視点で分析する記事となります。実際に利用してみるか否かは、個々の状況によって異なるかと思いますので、最新の生成AI事情をキャッチアップする記事としてご覧ください。
目次
「DeepSeek」とは何か?なぜ話題になっているのか?
最初にDeepSeekの基本的な知識と、注目されている背景について説明します。▶「DeepSeek」とは
DeepSeekは、深度求索公司という中国のIT企業が開発したAI技術で、自然言語処理や生成AIを中心に、中国語と日本語に特化したサービスを提供しています。ローカルなニーズに応えるため、文化的なニュアンスや地域特有の文脈を理解する能力に優れており、企業向けのカスタマイズ可能なAIソリューションも提供しています。オープンソースモデルの公開や開発者支援にも力を入れており、技術の透明性と普及を促進しています。公式な情報については、以下を参考にしてください。
【公式情報の確認方法】
GitHub公式:数学モデルのみ公開 → DeepSeek-Mathリポジトリ
ライセンス問い合わせ:contact@deepseek.com へ直接確認
▶「DeepSeek」が話題になっている背景
DeepSeekが注目されている大きな要因は、AIモデルの効率性とコストパフォーマンスの高さにあります。高性能AIモデルの実現には、高度な計算能力を持つ半導体が不可欠ですが、DeepSeekはAIモデルのアルゴリズムを最適化することで、既存のハードウェアでも高い性能を発揮し、現在主流となっている生成AIよりも低価格で高性能な生成AIを実現しました。これにより、生成AI市場に大きな影響を与えています。また直接的な要因であるという明確な情報はありませんが、多くの報道では2024年6月に時価総額で世界1位になったNVIDIAの株が2025年1月に急落する一因となった可能性が指摘されており、生成AIというソフトウェアの市場だけでなく、半導体というハードウエアの市場にも大きな影響を与えています。
中国政府もDeepSeekのようなAIプラットフォームの発展を後押ししているといった要素も組み合わさり、DeepSeekはグローバルAI市場において、その競争力を一層高めています。また、生成AIモデルの一部をオープンソース化することで技術の民主化を推進している点も注目されています。DeepSeekは中国国内の政府機関や医療機関にも採用が進んでおり、その影響力は東アジア圏を中心に急速に拡大しています。
▶「DeepSeek」が提供する料金プラン
DeepSeekの料金プランは、主にAPIの利用に基づく課金体系になっています。API利用料金は、入力および出力トークン数に基づいて計算される従量課金制です。トークンとはAIが処理するテキストの最小単位(単語や文字など)のことを指しています。利用するモデル(DeepSeek-R1、DeepSeek V3など)によって、トークンあたりの料金が異なっています。こうしたAPIの利用に基づく料金プラン設定は、大規模な開発やビジネスでの利用を想定しているようで、個人ユーザー向けの料金体系が明確に打ち出されていないように思われます。
現時点でのDeepSeekの主なターゲット層は企業や開発者であり、個人ユーザー向けのサービスやサポートはあまり提供されていないようです。ただし、DeepSeekは個人ユーザーの利用も排除しているわけではなく、例えばWeb版で利用する場合には、基本的に無料で利用可能になっています。料金は変更される可能性がありますので、最新の情報は、DeepSeekの公式サイトにあるAPI Pricingのページをご確認ください。
「DeepSeek」の基本的な使い方
DeepSeekの基本的な使い方について解説します。▶アカウント作成方法




▶使い勝手や性能

上記の画像は「負債って資産なのですか?」という、やや雑な質問をプロンプト入力してみたのですが、回答は「負債は資産ではありません」となっています。
同様の質問をGeminiにしてみましたが「負債は会計上、資産とは区別されます。しかし、経営や財務の視点からは、負債が資産形成や事業成長に貢献する場合もあり、その意味で『資産』と捉えることもできます。」という回答が出力されました。「負債は資産なの?」といった疑問を持つといった状況は、会計業務や簿記の学習といったような想定は十分に可能ですので、この質問に関してはDeepSeekの回答はやや精度が低いように感じました。
また、気になるのはユーザーインターフェイスです。プロンプト入力欄で質問を入力する際にEnterキー(Returnキー)を押すと、入力途中であるのにプロンプトが送信されてしまいストレスを感じました。また、モデルの切り替えボタン等の使い方も、感覚的に分かりづらくあまり良いUIには感じませんでした。
▶主な機能
DeepSeekの主な機能ついて簡単に説明します。DeepSeekには以下のような主要モデルがあります。DeepSeekのChatでは、これらのモデルが用いられて回答が生成されています。
DeepSeekモデル一覧
モデル名 特徴 主な用途DeepSeek LLM 基盤大規模言語モデル(汎用型) テキスト生成・質問応答全般DeepSeek R1 LLMを強化した推論特化型(複雑な論理処理に優れる) ビジネス分析・高度な対話DeepSeek V2/V3 バージョンアップ版(V3はマルチモーダル対応) 汎用AIタスク・画像連携DeepSeek Coder コード生成特化型(20+言語対応) プログラミング支援DeepSeek Coder V2 Coderの進化版(コードデバッグ機能追加) エラー修正・最適化提案DeepSeek Math 数理推論特化型(数式処理/証明可能) 学術研究・教育支援DeepSeek VL マルチモーダル型(Vision-Language統合) 画像解析・画像説明生成
DeepThink(R1)

ボタンをONにした状態で、送信ボタンを押すとDeepThink(R1)による回答が出力されます。DeepThink(R1)にすると、回答の出力も時間がかかるようです。
Search

アプリケーション

クリエイター視点で考えるDeepSeekのメリット
DeepSeekを利用するメリットは、なんといっても高性能な生成AIをコストパフォーマンスよく活用できる点です。生成AIの可能性を理解するには、有料版の生成AIを使ってみることが、とても重要な体験になります。しかし、日本において、有料版の生成AIを課金して利用しているユーザーは、現時点ではごく一部です。私も生成AIに課金した経験はありませんので、生成AIの最新技術を十分に体験できていないのではないかと思っています。そうした、無課金でしか生成AIを利用したことがないユーザーにとって、DeepSeekは最新の生成AI技術を一次体験させてくれるサービスの一つになり得るでしょう。また、DeepSeekに、自身の特性を訪ねたところ、「DeepSeek-V3」というAIモデルは、主に中国語と日本語のユーザー向けに最適化されており、ローカルな文脈やニーズに応じた回答を提供しているので、中国やアジアのローカルな情報に強く、地域特有の質問にも対応可能であるという内容が返ってきました。
欧米発の生成AIは、アジア圏の情報についてジャンルによっては不十分な回答が返ってくることがあると感じている人は多いと思うので、この点は確かに注目しておきたいメリットだと考えられます。
さらに、多機能かつ汎用性が高いため、今後の生成AI活用を先取りできるツールとしても適しています。 加えて、注目を集め、多くの資本が投資される可能性が高いため、今後の進化に期待できる生成AIの一つです。クリエイター視点では、新しいアイデアの発想支援や制作の効率化に役立つ可能性があり、ツールとしての活用価値も高い点がメリットになるでしょう。
クリエイター視点で考えるDeepSeekのデメリット
DeepSeekで考えられるデメリットは、なんといっても、データソースの不透明性、データプライバシー、セキュリティリスクなど中国製AIに対する懸念事項がある点です。中国企業も資本主義化が進む中で、グローバルな視点で適正なリーガルマインドをもって事業を展開している企業が増えてきていることも確かです。しかし、著作権や知的財産権を含めた人権の扱いというのは、一企業の経営方針が真っ当であっても、国家体制や政権の方針によって影響を受けやすいのも確かです。例えば、トランプ政権やイーロン・マスクのような特定の政治的立場を持つ人物が、生成AIの倫理観にも自分たちの都合の良い思想を押し付けようとする動向があることが今まさに報道で伝えられています。こうした傾向は、独裁的な傾向が強い国家体制が長期的に続いている国であれば尚更強まると思われます。歴史的な事実なども隠蔽されたり、歪められる可能性も否定できません。また、特定の思想信条や宗教などが絡むと科学を否定する動きが出る可能性があり、生成AIの信頼性を低下させる要因の一つとなるでしょう。
クリエイター視点では、データソースの不透明性による著作権・知的財産権の問題は特に気になるところになります。不正なデータソースによって学習された画像生成AIの問題と同様に、DeepSeekをはじめとした中国発の生成AIは、クリエイターとしての倫理的判断がより重要視されるので、この点は大きなデメリットであると考えられます。
※参考URL:トランプ政権で変わる 国際的「AIガバナンス」の行方(日経BizGate)
※参考URL:マスク氏のxAI、マイクロソフト・ブラックロックのAI基金に参加(TBS NEWS DIG with Bloomberg)
今後の生成AIの展望と「DeepSeek」の立ち位置
最後に、今後の生成AIの展望と「DeepSeek」の立ち位置も整理しておきましょう。▶生成AI市場のこれから:「性能」「コスト」「倫理」のバランス競争
多くの職業・職種が生成AIに置き換わるといった予測は、現実になりつつあります。人材が生成AIに置き換わるという観点で考える場合、重要になってくるのが「性能」「コスト」「倫理」のバランスです。
毎年、受験シーズンになると「生成AIは共通テストで好成績を収めた」「東大の入試問題を解いて合格レベルのスコアを出した」といった話題がニュースになるのが風物詩となりつつあります。ニュースとしては、そうした性能面の進化のほうがキャッチーなのだと思いますが、ここで立ち止まって考えなければいけないのは、様々な事業において生成AIに担ってほしい業務が、本当に難関大に合格するような知能がなければできないのかという点です。
研究開発など、高度な専門知識を有する業務においては、性能面が非常に重要なファクターになります。一方で、多くのビジネスシーンで必要な業務というのは、効率的に雑多な業務をこなすことであって、それは難しい受験勉強をクリアするといった類のタスクとは少し異なるでしょう。
どの生成AIを採用するかを、企業の人事に置き換えて考えてみましょう。勉強ができて高度な専門知識を持っているが高給取りでモラルに欠けている人物と、専門知識はそこそこでトップ層には劣るものの、安い給料で働いてくれて人柄も良い人物、どちらを採用したいですか? という話と似ている気がします。
例えば、ChatGPTは高度な性能を持つ一方で、コストが比較的高めです。Geminiは、性能とコストのバランスが取れており、倫理面でも比較的安定しています。Claudeは、高性能でコストが比較的高めですが、倫理面での信頼性が高く安心して利用できます。DeepSeekは、高性能かつ低コストですが、倫理面におけるデータの透明性については慎重な検討が必要です。この中で、どの生成AIを人的リソースに置き換えるかをイメージしてみると、自分(自社)に合った選択肢がおのずと絞られてくるのではないでしょうか。
▶「DeepSeek」が信頼性を獲得するために必要なこと

一方でX(旧Twitter)に搭載されたGrokとDeepSeekのどっちが信頼できるかを考えてみると、もしかしたらDeepSeekのほうが安心して利用できるかもしれないと思う人もいるのではないでしょうか。DeepSeekが倫理面でのポリシーをどう示していくかは、今後の生成AIの展望を分析していく上で注視しておくべき事項の一つでしょう。
DeepSeekのプライバシーポリシーと利用規約
プライバシーポリシーのページ
利用規約のページ
▶DeepSeeKの登場によって変化する生成AIの今後の展望
DeepSeekの登場は、日本製の生成AIにも大きな可能性を秘めていることを示唆してくれているように思います。トランジスタの小型化など、半導体産業で日本は大きくリードしてきましたが、そのアドバンテージが失われてしまっているというのが、多くの有識者が考える日本の現状でしょう。
熊本県にTSMC(台湾積体電路製造)の工場が建設されて大きな注目を集めていますが、そこで作られる半導体は最先端のものではないという指摘もありました。しかし、DeepSeekによって半導体バブルが崩壊し潮目が変わったという見立てが有力であれば、求められる半導体は高性能である必要はなく、汎用性が高くコストパフォーマンスが良いものということになります。だとすれば、TSMC熊本工場はより重要な拠点となる可能性があります。また、日本の半導体事業全体がかつての活気を取り戻す可能性もあります。
さらに、性能面でNo.1を競うのではなく、「性能」「コスト」「倫理」でバランスの取れた生成AIの開発ということになれば、後発の生成AIでも優位性を獲得することは十分に可能だと予測されます。アメリカの生成AIに対する信頼性が揺らぎ始めている中で、国産の生成AIを待ち望む国内企業も多いと思われます。また、グローバルな市場を考えても、日本という国の信頼性は、中国よりも高いアドバンテージを持っていると思われます。
生成AIの代名詞的なポジションにあるChatGPTや、無料で多くのサービスを提供するGoogleのGeminiのようなツールとうまく住み分けることができれば、日本製の生成AIにもかなりチャンスがあると予測できるでしょう。
まとめ
クリエイターは「DeepSeek」のもたらすインパクトにどう向き合うべきなのでしょうか。ここ数週間においても、DeepSeekに続けとばかりに、中国製の高性能生成AIがリリースされたというニュースも相次いでいます。DeepSeekよりも性能が優れた中国製生成AIが登場しても全くおかしくない状況です。そういう意味では、DeepSeekという一つのツールとして捉えるよりも、中国製生成AI全体が今後どのように勢力を伸ばしていくかといった見方で捉えた方が良いのかもしれません。※参考URL:百度やテンセントが生成AIを相次ぎ発表、外国製AIの規制も(日経クロステック)
また、DeepSeekの登場は、生成AIのローカライズという視点も提供してくれたように思います。日本は生成AI開発で周回遅れだといった言説をよく耳にしますが、生成AIを広く普及する段階になってくると重要視されるのは性能面だけではなくなってきます。どんなに性能が良くてもUIが残念な生成AIは、使い勝手の面で優れているとは言えません。DeepSeekには、そうしたUI面にも課題があるように感じました。
これから、いろいろな形で生成AI機能が組み込まれたプロダクトが開発されていくと思いますが、生成AI関連ツールが多くのユーザーから支持されるためには、テクニカルな部分も含めてデザイナーをはじめとしたクリエイターの果たす役割が大きいということは間違いないでしょう。

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