ここ数カ月で複数の生成AI関連サービスを立て続けにリリースし、その技術力と底力で多くの人々を圧倒しているGoogleですが、少し前から注目を集めているのが「NotebookLM(ノートブック エルエム)」というツールです。

日本では、DeNA会長の南場智子氏が愛用を公言したことで一躍脚光を浴び、急速にビジネスシーンへと浸透しました。
その後も各界の著名人もSNSなどでその機能を絶賛する投稿が相次いでおり、生成AI分野で新たな勢力図を描こうとするGoogleの提供する数多くの生成AIツールの中で、「フラッグシップ」的な存在になりつつあります。

そこで本記事では、この注目の「NotebookLM」について、クリエイターの視点から深く掘り下げて解説します。また、新機能として大きな話題を呼んでいるポッドキャスト風の音声概要生成機能をはじめ、クリエイターの皆さんが特に気になる著作権関連の注意点などについても詳しく紹介します。
※参照記事:DeNA南場智子が語る「AI時代の会社経営と成長戦略」全文書き起こし(フルスイング by DeNA)
 

目次

NotebookLMの基礎知識

まず導入としてNotebookLMの基礎知識について解説します。

NotebookLMとは
NotebookLMは、複数の参考資料のデータを読み込ませるだけで要点を抽出できるAI搭載のノート作成ツールです。AIのモデルはGoogleが開発した大規模言語モデルであるGeminiを基盤としています。ユーザーが読み込ませた情報ソースを学習し、それらの情報に基づいて要約の作成、質問への回答、アイデアのブレインストーミングなどが行えます。複数の資料を横断的に理解し、ユーザーのクリエイティビティを支援することにも長けており、情報整理やコンテンツ作成の効率化にも役立ちます。Geminiについては『日常的に使いやすい生成AI「Gemini」とその関連サービスからGoogleのAI戦略を紐解く』で詳しく解説していますので、そちらも参照してみてください。

利用プラン

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
NotebookLM Plus(プレミアム機能)の詳細NotebookLMは無料で利用可能なツールですが、有料版のNotebookLM Plus(NotebookLM in ProやPro capabilities in NotebookLMといった呼称となる場合もある)も提供されています。無料版でも基本的な機能は利用できますが、ノートブック数、アップロードできる資料の数、質問できる回数などに制限があります。一方でNotebookLM Plusは、無料版の5倍の利用上限に加え、ノートブックの回答のスタイルや長さをカスタマイズできるといったプレミアム機能が利用できるようになります。

注意点としては、Google One AI Pro(旧Google One AI Premium)のサブスクリプションに含まれており、NotebookLM単体で有料版へアップグレードすることはできません。
また、NotebookLMの有料機能は、Google Workspaceの一部のプランに含まれているため、すでにGoogle Workspaceを利用している、または利用を検討している企業や組織の場合、Google Workspaceの対象プランでNotebookLM Plusを利用する方が、費用を抑えられる可能性が高いということもポイントとして押さえておきましょう。
※参照ページ:プランとプレミアム機能の詳細(Google公式サイト)
※参照ページ:Google Oneの料金プラン(Google公式サイト)
※参照ページ:Google Workspaceの料金プラン(Google公式サイト)

NotebookLMの基本的な機能と使い方

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
NotebookLM公式サイトのTOPページ次に、NotebookLMの基本的な機能と使い方について説明します。NotebookLMの使い方は非常に簡単です。ChromeでGoogleアカウントにログインしている場合は、NotebookLMの公式ページにアクセスすることで、すぐに利用をスタートできます。Chrome以外のブラウザを利用している場合も、TOPページにある「NotebookLMを試す」というボタンをクリックし、GoogleアカウントにログインすることでNotebookLMが利用できるようになります。

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
3つのエリアで構成されているNotebookLMの操作画面(*注1)NotebookLMは、上の画像ように3つのエリアで構成されています。ブラウザの幅が狭くなるとタブで切り替える表示に変化します。以下にその3つのエリアの内容について説明します。

ソース

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
ソースのエリア(*注1)画面左側にあるのが要約や情報分析の基(ソース)になる資料を一覧で確認できるエリアです。また、「ソースを追加(Add)」というボタンから資料を追加、「検索(Discover)」というボタンからアップロードされた資料の検索ができます。

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
複数の方式でソースを読み込ませることが可能資料は、PCからのファイルアップロードだけでなく、Googleドライブ上のGoogleドキュメント、Googleスライド、PDFなどのデータ、WebサイトやYouTubeといったリンク、またはコピーしたテキストを貼り付けることでもソースとして読み込むことが可能です。アップロードや読み込みが可能なサポートされているファイル形式は、PDF、.txt、Markdown、音声(例:mp3)になります。

無料版のNotebookLMは、1つのノートブックにおけるソースの上限が50となっています。
50を超えた場合は、既存のソースを削除する必要があります。より多くのソース(例: 1ノートブックあたり最大300のソース)を扱いたい場合は、Google One AI ProもしくはGoogle Workspaceへの加入が必要となります。

チャット

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
チャットのエリア(*注1)画面中央にあるのがGeminiなどのチャット生成AIと同様に、ソースとなる資料について質問をし、回答を得られるエリアのタブです。プロンプトを入力する欄の他に、新しいメモを保存するボタン、メモを追加するボタン、音声概要を生成するボタン、マインドマップを生成するボタンが搭載されています。アップロードした資料についてAIに質問すると、その内容に基づいて具体的な回答が得られます。どの資料のどの部分が根拠になっているかも示されるため、情報の信頼性を確認しながら深掘りできます。

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
マインドマップの一例(*注1)
Studio

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
Studioのエリア(*注1)画面右側にあるのがメモ、音声概要、マインドマップなど生成されたコンテンツを確認するエリアのタブです。ここから、更にメモを追加したり「学習ガイド」「ブリーフィング・ドキュメント」「よくある質問」「タイムライン」といったスタイルに変換できます。

Studioにある以下の4つの機能について説明します。

1.学習ガイド

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
学習ガイドの一例(*注1)「学習ガイド」は、複雑な概念や構造の要点を簡潔にまとめる機能です。

2.ブリーフィング・ドキュメント

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
ブリーフィングドキュメントの一例(*注1)「ブリーフィングドキュメントは」は、長文の資料から重要な情報だけを抽出した概要を作成する機能です。

3.よくある質問

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
よくある質問の一例(*注1)「よくある質問」は、資料内容から予想される質問と回答(FAQ)を自動生成する機能です。


4.タイムライン

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
タイムラインの一例(*注1)「タイムライン」は、プロジェクトの進行状況や歴史上の出来事を時系列で整理する機能です。
*注1:文部科学省「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方(著作権法第30条の4, 第47条の4及び第47条の5関係)」より作成。

スマートフォンアプリもリリース済み
NotebookLMのスマートフォンアプリも提供されています。Android版もちろんのこと、iOS版のアプリも提供されていますので、iPhoneやiPadのユーザーでも利用できます。待望のモバイル端末用のアプリがリリースされたことで、外出先で要約・情報解析したデータにアクセスする、思い浮かんだアイデアをすぐにノートにメモするといったことも容易になりました。

スマートフォンアプリのダウンロード先リンク
Google Play:Google NotebookLM
App Store:Google NotebookLM

NotebookLMは、このようにAIが搭載された使い勝手のよいノートブックなので、多くのビジネスパーソンに注目されています。

多くの企業にとって、どの生成AIに投資すべきかは悩ましい問題です。しかし、日本国内の現状を考慮すると、Microsoftのサービスをメインで利用している大企業はMicrosoft Copilotを、Google Workspaceを利用しているIT企業やベンチャー企業はGeminiを選択する可能性が高いと私は考えています。結局のところ、エンジニアリングなどの専門部署を除けば、新たに稟議を通して新しい生成AI関連のサービスを導入するよりも、現在利用しているサブスクリプションサービスの範囲内で利用できるAI機能を活用する方が、コストや導入の手間の面で合理的であると判断する傾向にあると予測できるからです。この傾向は世界的にも見られると考えられますが、特に日本国内では既存のITインフラへの依存度が高いため、より顕著に現れてくる動向かもしれません。

この点は、OpenAIのChatGPTが抱える課題であり、Googleの強みでもあります。Googleは、NotebookLMのようなAI搭載ツールを自社のエコシステム内で提供することで、Geminiのユーザー数増加にも良い影響を与える戦略をとっており、これは非常に有効なアプローチだと考えられます。
そのため、NotebookLMは今後も様々な機能強化が図られていくと予測され、例えば近日中に動画概要(Video Overview)機能も搭載予定であると告知されています。

クリエイター向けNotebookLMの活用方法

NotebookLMの基本的な機能と使い方がわかったところで、クリエイター向けの活用法について考えてみましょう。

リサーチの効率化
NotebookLMを活用することで、執筆、企画、作品制作に必要な大量の資料を素早く分析すすることが可能になります。脚本、企画書、参考文献など多様な資料を一元管理することも可能なので、例えば、歴史漫画の時代背景、SF小説の科学理論、弁護士が主人公の法廷ドラマの法律知識の確認などにも活用できるでしょう。AIが自動で内容を分析し、要点や重要な情報を抽出してくれるので、キーワード検索では見つけにくい関連情報や隠れた洞察を発見できるのもメリットです。

また、前述した南場氏は初めて合う人の情報はPerplexityで「その方についての必読記事は何ですか」と聞いて、そのURLのすべてをNotebookLMにアップして、その人物の考え方や実績を理解すると語っています。こうした創造的な仕事にフォーカスするためのAIを活用したリサーチ方法は、取材が必要なクリエイティブ職の方にとって非常に参考になるのではないでしょうか。Perplexityの使い方に関しては『Perplexity AIとChatGPTの違いは何なのか? 今話題の対話型検索AI「Perplexity」を徹底解説』でも解説していますので、参考にしてみてください。

アイデアの発想と整理
NotebookLMは、アイデアの発想と整理にも役立つツールです。例えば、デザインリファレンスやクライアント資料など、一つのプロジェクトに関連のある資料・データを読み込ませ、要約や情報解析することで混沌としたアイデアをノート機能で整理することができます。複数の資料を基にAIに質問を投げかけ、新たな視点やインスピレーションを得る、アイデアをノート機能で整理し、マインドマップ機能を使って構造化することで、思考を可視化し次のステップへと繋げるといった用途にも便利です。

企画書・構成案の作成補助
NotebookLMのブリーフィング・ドキュメント機能やFAQ機能を活用することで、企画の骨子を素早く作成する、想定される疑問点を洗い出すといったことも可能になります。

専門知識の習得
専門的な書籍や論文をアップロードし、AIに解説を求めることで、基礎から応用までを効率的に学習できます。
自分の専門とする分野だけでなく、専門外の分野に関する学びにも役立つので、例えば契約書類を読み込ませわからない箇所を質問する、国税庁のURLを読み込ませ確定申告のデータ入力作業に役立てるといった用途にも利用できます。また、音声概要機能を使えば、通勤中や作業をしながらでもインプットが可能になるのでタイムパフォーマンスも意識した知識の習得が可能になります。

以下は、クリエイター職種別の活用イメージの一例になりますので、参考にしてみてください。

職種活用イメージイラストレーター作品解説文の生成、展示会資料の要約グラフィックデザイナーリサーチ→アイデア抽出→キービジュアル作成の流れ映像クリエイターナレーション台本作成/素材の整理/プロジェクト毎のノート化YouTuber動画台本、過去動画からのFAQ生成、音声配信コンテンツへの展開ポッドキャスターテキストからのコンテンツ作成、音声の文字コンテンツ化

Podcast風の音声を生成できるNotebookLMの音声概要機能

NotebookLMの音声概要機能は、資料の要約を音声で聞くことができる機能です。前回取り上げたポッドキャストの記事『今、音声メディアが熱い!クリエイターの情報発信に便利で可能性も広がる「ポッドキャスト」の世界』でも取り上げましたが、この音声概要機能によってポッドキャスト風の音声コンテンツが手軽に作れるのではないかと話題になっています。そこで、ここからはテキストから音声(ポッドキャスト)変換の手順を簡単に紹介します。

今回は文部科学省が公式サイトで提供している「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方(著作権法第30条の4, 第47条の4及び第47条の5関係)」というPDF資料をソースにして音声概要を生成してみます。

1.資料の読み込みとノートブックの作成

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
「ソースのアップロード」をクリック
著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
ソースをアップロード「ソースのアップロード」もしくは「ソースの追加」というボタンをクリックすると、ソースをアップロードするウィンドウが表示されますので、使いたい資料を指定のエリアにドラッグ&ドロップしてアップロードするか、もしくはGoogleドライブ、リンク、テキストの貼り付けのいずれかの方法でソース(資料)をNotebookLMに読み込ませます。

2.概要の生成

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
ソースが読み込まれる
著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
「音声概要」のボタンをクリックソースの読み込みが完了すると「チャット」タブににタイトルと要約の一部が表示されます。この「チャット」タブの画面を下にスクロールすると「メモの追加」「音声概要」「マインドマップ」という3つのボタンがありますので、「音声概要」のボタンをクリックします。

3.音声概要(Audio Overview)の再生

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
音声概要を生成中の画面
著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
生成した音楽概要の再生Studioタブに画面が切り替わり音声概要の生成中になります。音声概要の生成は数十秒から数分かかる場合があります。音声概要の生成が完了すると再生ボタンとバーが表示されます。
また、生成された音声概要には「高評価」「低評価」といったボタンで評価ができます。さらに、「共有」ボタンをクリックすれば、簡単に音声概要を共有できます。加えて、3点リーダーのアイコンをクリックして表示される「再生速度の変更」「ダウンロード」「削除」といった項目を選択することで、メニューを実行できます。これで、音声概要による音声コンテンツの生成が完了しました。

実際に音声概要を聞いてみましたが、2人のパーソナリティが自然に会話しているスタイルで、これは確かに驚く機能だと思います。近年、音声合成によるボイスは、かなり違和感なく自然な発話ができるようになってきていましたが、音声概要の声は、対話の中で疑問を感じてる様子や感心している様子など、感情的な表現も含めて「演技」ができるようになっています。また著作権という専門的な知識が必要となる資料を大変わかりやすく解説してくれている点も注目すべきポイントです。

今回読み込んだデータは公的な資料ですので著作権的な問題は起きにくいと思われますが、念の為、ここで作成した音声概要を共有することはいたしません(なお、文化庁の提供する資料であっても著作権に関する教材などは、変更、改変、加工、切除、部分利用、要約、翻訳、変形、脚色、翻案などが認められない文書なども含まれていますので、利用の際はご注意ください)。同じように皆さんも、ぜひ実際に資料などを読み込ませて音声概要の機能を試して見ることをおすすめします。

ただし、AIが生成する音声要約が、単なる読み上げではなく、まるでラジオ番組のように2人のAIホストが会話形式で資料の内容を解説してくれる点がポッドキャスト風だということであって、NotebookLMで作成した音声コンテンツがそのままポッドキャストに利用できるわけではありません。もちろん、オリジナルの脚本を作成し、音声読み上げすることで、ポッドキャストの音声コンテンツに利用することは十分に可能ですが、聴き手が受ける印象が「ポッドキャストのようだ」と感じるという意味であることは留意しておきましょう。

NotebookLMを利用する上での注意点

最後に、NotebookLMを利用する上での注意点についても確認しておきましょう。

要約・情報分析は間違いが含まれる可能性もある
生成AIがハルシネーション(事実に基づかない情報を生成する現象)を起こす可能性があることは広く知られるようになってきていますが、NotebookLMで生成された要約や情報分析にも同様に間違いが含まれる可能性はあります。要約は、あくまで文章の主要なエッセンスの部分を抽出しているだけですので、詳細な情報や正確な内容を確認したい場合は、必ず原典である元の資料を確認するように心がけましょう。

著作物の要約・情報分析は慎重に
NotebookLMは、リサーチや情報整理を支援する強力なAIツールです。しかし、著作物の取り扱いには細心の注意が必要です。Googleは「アップロードデータはAIの学習には使用しない」と明言しており、また現在のAI技術において、ユーザーが入力した個別のデータがその場でAIモデルにリアルタイムで学習されることはありません(人間のレビュアーによる確認も行われません)。とはいえ、昨今のAIにおける学習データを巡る問題を考えると、クリエイターの方々にとっては、こうしたポリシーの提示や説明だけでは安心できないでしょう。

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
NotebookLMに初めてアクセスする際に表示されるプライバシーポリシー日本では、先ほどの音声概要にした資料でも解説されているように、2018年に改正された著作権法第30条の4に記載された条項により「著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し、又は他人に享受させることを目的としない場合」であれば、原則として著作権者の許諾なく著作物を利用できるとされています。そのため、ネット上の反応などを見ていると専門家もユーザー自身や自社が著作権を持つ資料を扱う分には問題はないのはもちろんのこと、他人の著作物であっても個人利用の範囲内であれば問題ないという解釈が多いように感じます。

しかし、この規定は、主にテキストマイニング(データ解析)などを想定したもので、商用利用や公開を伴う場合は適用されないことに注意が必要です。また、購入したコンテンツや他者の著作物を扱う際は、その市場価値を不当に害さないよう配慮が必要で、法的に可能かといったことだけでなく著作権者に対する配慮・モラルをもった利用を心がけることが大切です。

AIが生成した要約やアイデアはあくまで「ヒント」として個人利用の範囲内で収めておきましょう。特に、これらの要約や情報分析を、そのままSNSをはじめとしたメディアで公開・商用利用すると、著作権侵害のリスクを負う可能性が高いです。AIが生成したコンテンツであっても、元データが著作物である場合、その構造や表現の一部が反映されることがあるため注意が必要です。もし、ブログ記事やSNS投稿などでNotebookLMの生成した要約等を用いたい場合があれば、著作権法上の「引用」の要件(出所明示、主従関係、同一性保持など)を満たしているかについても、慎重な判断が求められるのです。
※参照ページ:Learn about NotebookLM(NotebookLMヘルプ)
※参考資料:著作権法第30条の4(WIKIBOOKS)
※参考資料:引用のルール・著作権(滋賀医科大学)

機密情報・個人情報はアップロードしない
NotebookLMではアップロードした資料がクラウド上に保存されます。個人情報や社外秘の情報が含まれていると、漏洩リスクが生じるため、業務資料の利用には細心の注意を払いましょう。社内規定や契約違反に該当しないかの確認も重要です。

音声概要機能(Audio Overview)の注意点
音声概要機能に関しても同様に、元データが他人の著作物である場合は著作権侵害に関して注意を払う必要があります。これはポッドキャスト化に限らず、読み上げアプリでの利用、さらにはイベントやセミナーでのナレーションへの活用など、あらゆる場面で共通です。

最近では、映画コンテンツの要約を無断で配信したことによる逮捕事例や有料記事の社内共有による書類送検の事例なども発生しています。特に商用配信や不特定多数への公開を検討する場合は、著作権者の許諾を得ることが望ましいという点はしっかりと留意しておきましょう。

加えて、クリエイターの中には、AI音声合成に関連して、学習元となる声優の著作隣接権にも配慮したいと考える方も多いでしょう。NotebookLMのAI音声は、SiriやAlexaのボイスのように、特定の声優の実演を直接学習しているわけではないため、著作隣接権に抵触する可能性は低いと考えられます。しかし、「ジブリ化」のようにAI音声合成を多くのユーザーが気軽に楽しむようになり他のツール等でも似たような機能が搭載されていく流れの中で、画像生成AIと同様に「学習元の権利」に対する問題が希薄化していくことにつながる懸念も十分にあります。そのため、「学習元の権利」が気になる場合は、個人利用用途以外での活用は控えておくことをおすすめします。
※参考記事:ライターを雇い8000作品以上の「映画ネタバレサイト」を運営、仙台在住の経営者ら5人を著作権法違反の疑いで逮捕(INTERNET Watch)
※参考記事:ネット上の有料の新聞記事などを無断で社内に共有か コンサル会社を書類送検 警視庁(テレ朝news)

つい先日、共有設定で一般公開も可能になるアップデートもありましたので、様々な資料の要約を多くの人に共有したいという気持ちが沸き上がってくるかもしれませんが、ここまで説明したように他人の著作物である場合は細心の注意を払うことが非常に大切です。以下の表に、要約等を不特定多数に公開する上での注意点を一覧表にしましたので、こちらも参考にしてみてださい。

要約等を不特定多数に公開する上での注意

望ましい例自身が著作権を持つ文章や資料を要約し公開する著作権フリーやオープンライセンス(例:クリエイティブ・コモンズのCC BYなど)のコンテンツを要約し、適切な出典とライセンス表示と共に公開する公的な資料や報道記事など、引用が明確に認められている情報源から要約・分析し、引用のルール(出典明示、主従関係など)を厳守して公開する避けるべき例他人のブログ記事や個人のSNS投稿(写真、長文の考察など)を、相手の許可なく要約し、自分のSNSやブログに公開する有料コンテンツ(電子書籍、論文、有料記事など)を要約して公開する小説、漫画、専門書などの著作権保護されたコンテンツのセリフやあらすじを詳細に要約して公開する

まとめ:創造的な営みを支援するツールとしての活用

今回、私自身が記事を作成するために利用してみて感じたことは、NotebookLMはクリエイターが生成AI時代を生き抜くための「理論武装」を助けるツールとなり得るということです。例えば、ここ最近は、2026年度から施行される予定の「未管理著作物裁定制度」という制度が、かなり分かりにくい制度でクリエイターを悩ませる新たな問題となっています。生成AIにおける不正学習の問題と合わせて、これらの著作権に関する専門性が高くページ数も膨大な法律資料などを、NotebookLMによる要約や情報分析を活用して法律知識がない方にもわかりやすく解説してもらうといった使い方は、自身の活動に活かす上で非常に有効なのではないでしょうか。

「毒を以て毒を制す」という言葉があるように、生成AIの進化と向き合う上で、AIを活用して自身のナレッジを深めることは、新たな戦い方の一つなのかもしれません。不正なAI学習を阻止するAIブロッカーがAIによる技術対抗であるように、「生成AIには生成AIを」というスタンスは、今後より重要になるでしょう。科学の進歩がそうであるように、生成AIもまた、使い方次第で「良薬」にも「劇薬」にもなり得ます。本来、生成AIとは、私たちの創造的な営みを支援し、生活を豊かにする技術であったはずです。そのためにも、生成AIを悪用する人間に生成AIを明け渡すのではなく、クリエイター自身が生成AIの正しい活用方法を模索していくことが非常に大切になってくるのではないでしょうか。

NotebookLMは、単なる作業効率化のツールに留まらず、「思考と表現の幅を広げる」可能性を秘めています。AIに任せる部分と、自らが担う創造性のバランスを見極めながら使うといった部分が意識できれば、アイデアを構築していく上で非常に役立つアシスタントになってくれるでしょう。AIで作品を生成するのではなく、作品を創造していく過程で調査・分析を支援する優秀なアシスタントとしてAIを活用していくといったスタンスが、本来あるべき正しい生成AIとの付き合い方のような気がします。今後の生成AIとの「共生」を具体的にイメージするためにも、まずは実際にNotebookLMを体験してみることをおすすめします。本記事がその一助となれば幸いです。

著名人も絶賛!Googleが開発したAI搭載型ノートブック「NotebookLM」のクリエイター向け活用術
編集部おすすめ