【目次】
4割以上の人たちが持つ「フォント」へのこだわり
アンケートでは、まず最初にフォントへのこだわりはあるかどうかが探られました。「フォントにこだわりや、気に入っているフォントがある」と答えた人は全体の16.0%、「どちらかといえばある」と答えた人は26.6%です。合わせて42.6%にものぼり、必ずしもデザイナーのような専門家でなくても、半数にかなり近い割合の人たちがフォントに何らかのこだわりを持っていることが明らかになっています。



場面に応じたフォントの使い分けへの意識の違い
今回のアンケートでは、利用するシーンによってフォントを意識的に使い分けているかどうかも調査されました。その結果、「使い分けている」と「どちらかといえば使い分けている」の合計は全体の45%にのぼり、多くの人が場面に応じたフォント選びを行っているようです。
フォントを使い分けるシーンの代表例・自分との距離感や役職の上下関係にて、フォントを敬語のように使い分けている(東京都・40歳男性)・読み手の年代によって分けている。老眼だと丸ゴシックや明朝が見やすい印象。若年だと特に気にする必要がない(東京都・48歳女性)・外部用や堅めの資料は明朝体、内部用や柔らかめの資料はゴシック体(静岡県・52歳男性)・社員旅行など楽しめな企画のときはポップな字体を選択している(神奈川県・33歳男性)・社外向け文書等はきちんとビジネスの雰囲気のあるものを使用するが、社内向け文書など、カジュアルなものはポップなフォントを使用することもある(兵庫県・39歳女性)・個人的に使うテキストメモは、テンションの上がるかわいいフォントを使うようにしている(千葉県・32歳女性)・資料などは見やすくゴシック体、チラシなどは楽しい雰囲気のポップ体を、体外的なお知らせなどは明朝体(大阪府・48歳女性)・高級感を出したいチラシ作成では教科書体、メールでは誰にでも好かれるベーシックな字体など使い分けている(東京都・50歳女性)・謝罪文の作成の際は明朝体を、イベント資料の作成時はポップで大きなフォントを使用している(和歌山県・27歳女性)・デザインの仕事をしているので、内容に合ったものに適宜変えている。読みやすさ重視ならUDフォント、見出しはゴシック、本文は明朝で抑揚をつけるなど(大阪府・29歳女性)調査を年代別に見ると、20~30代で比較的にフォントを使い分けている人が多い傾向でした。「使い分けている」と「どちらかといえば使い分けている」の合計の数値は30代が最多です。

シチュエーションごとに具体的に選ばれるフォントの傾向
前段で、フォントをシーン別に使い分ける人の割合が全体の45%にのぼることを紹介しましたが、ここからはより具体的に、どのようにフォントが使い分けられているを見ていきます。アンケートでは、明朝体/ゴシック体/丸ゴシック体/UD書体/筆書体/デザイン書体/装飾書体/手書き書体が提示され、さまざまなシチュエーションでどのフォントが適切だと感じるかが質問されました(複数回答可)。

とはいえ、どのシチュエーションにおいても「明朝体」や「ゴシック体」には一定の高い割合の票が集まっています。この2つのフォントは、幅広い用途で違和感なく使える印象を持たれているようです。
約3人に1人が「フォントに違和感」を覚えた経験がある
次に「フォントに対して違和感を覚えたことがあるか」という内容を見ていきます。約3人に1人(164人)は多少なりとも違和感を覚えた経験があったそうです。そのシーンとして最も多かったのは36.0%の「ビジネスメール」で、2位は32.3%の「謝罪文書」、3位は24.4%の「プレゼン資料・企画書・報告書」でした。
フォントと文章に違和感を覚えたエピソード1位:
ビジネスメール ビジネスらしくなく、かわいらしさがあって違和感を覚えた(東京都・36歳男性)ビジネスのメールにも関わらず遊びに使用するようなフォントで誠実さが伝わらない(神奈川県・44歳女性)2位:
謝罪文書 謝罪文なのにフォントが丸っぽく、ややふざけたような感じを受ける(奈良県・48歳女性)謝罪文でポップな文字が使われており誠意が伝わらなかった(青森県・38歳男性)変わったフォントが使われていると、内容より見た目にこだわった印象を与えると思う(愛知県・54歳女性)3位:
プレゼン資料
企画書
報告書 雰囲気があわないと説得力にかける(愛知県・44歳女性)ハネなどが強調されていて、内容よりもフォントが気になってしまった(千葉県・32歳女性)フォントは単なる文字のデザインではなく、読み手の体験に直接影響する重要な要素であることが分かります。主にビジネスシーンでは、クセの強いデザインフォントをなるべく避けるべきかもしれません。
前段で紹介した「明朝体」や「ゴシック体」はさまざまなシーンに使えるオーソドックスさが特徴です。かしこまった内容の媒体ではそのようなフォントで「クセ(個性)を出しすぎない」ことが1つのテクニックとも考えられるでしょう。特に「謝罪文書」のような、間違ったイメージを読者に持たれることが致命的になるシーンでは注意が必要です。
男女別・年代別の結果が必見の人気フォントランキング
ここからはやや角度を変えて、どのフォントが人気かという部分に焦点を当てた質問を見ていきます。今回のアンケートでは「一番好きなフォントの分類」についての質問が含まれ、男女別や年代別でのデータも示されています。まず全体での「好きなフォントランキング」の1位は「明朝体」(35.2%)でした。デザイン書体や装飾書体の順位がかなり低いのが意外な結果です。


正答率わずかに3.6%の「フォント名のPの意味」
最後に「フォントに関する知識調査」を紹介します。この調査では、単に使い分けや好みだけでなく、フォントに対する関心が知識としても意識されているのかを探る内容が用意されました。まず、「MSゴシック/MS Pゴシック」などでのフォント名の「P」の意味についての認知度を探る調査では、はっきりと「知っている」と答えた人はわずかに3.6%です。


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今回のアンケート調査から見えてきたのは、人々の生活のおけるフォントへの意外な関心の高さとこだわりです。
また、後半の「人気フォントランキング」や「フォントに関する知識調査」も、デザイナーにとって非常に示唆に富んだ内容です。プロはしっかりとフォントに関する正しい知識を身につけ、シチュエーションと同時に読み手への印象を意識したフォント選びを心がけることで、より効果的な情報発信につながるデザインを実現できるでしょう。
