【モデルプレス=2025/10/10】シェイクスピアの傑作喜劇『十二夜』(10月17日~11月7日東京グローブ座、11月15日~11月21日森ノ宮ピロティホール)で主演を務めるAぇ! groupの正門良規(まさかど・よしのり/28)が、モデルプレスらのインタビューに応じた。男装のお姫様=ヴァイオラという複雑な役柄に挑む彼は、この瞬間をどのように迎えようとしているのか。
前編では、初のシェイクスピア作品への思いや役へのアプローチ、外見・所作へのこだわりなどについてじっくりと語ってもらった。【前編】

◆正門良規主演舞台『十二夜』

本作は、古典から現代劇、ミュージカルまで幅広く演出を手がける森新太郎氏による、シェイクスピア喜劇の代表作『十二夜』の舞台化。今回の森氏の演出では、性別にとらわれず自由な発想でキャスティングを行い、俳優たちの新たな魅力を引き出す。

翻訳は、彩の国さいたま芸術劇場の故・蜷川幸雄芸術監督のもとで数多くのシェイクスピア作品を手がけ、2021年には個人訳の全集を完成させた松岡和子氏が担当。音楽は、舞台やミュージカルの生演奏で幅広く活躍するBUN Imai氏が作編曲・音楽監督を務め、恋の祝祭を盛り上げる。

◆正門良規、“シェイクスピアに、いつか出たい”――願いがついに舞台に

正門にとって、シェイクスピア作品への出演は長年の夢だった。これまでも観劇の機会は多く、そのたびに強く心を惹かれてきたという。

「ロマンチックなセリフがたくさんあって、登場人物も全員キャラが濃い。どの作品もまったく違う世界が描かれていて、あれだけ多く作品があるのに全然被っていないことがすごいなって思ってました」

その多様性と強度に魅了され、「『舞台が好き』と公言するからには、一度はシェイクスピアと真正面から向き合いたかった。“なんでもいいから出たい”って気持ちでした」と胸の内を明かす。そんな彼に舞い込んできたのが、まさかの『十二夜』主演のオファーだった。

「正直、この作品自体は知らなかったです。
自分に喜劇のオファーが来るなんて想像してなかったので…こんな出会いがあるんやって、嬉しかったですね。嬉しいハプニングというか、自分の視野の外から突然パッと現れた感じでした」

予想外の出会いでありながらも、それは確かに“舞台が好き”な彼にとっての大きな一歩となった。

◆性別を超えて生きる少女・ヴァイオラ 複雑な役柄へのアプローチ

今回正門が演じるヴァイオラは、兄と生き別れた少女が男装して“シザーリオ”と名乗り、公爵の廷に身を寄せるという役どころ。性別を偽りながら恋を抱き、複雑な人間関係に巻き込まれていく――多層的で繊細な感情が求められる難役だ。

「ハツラツとしたお嬢様って感じです。品があって、育ちもよくて。でも、クレバーで面白い人だと思います」と正門。一見清楚でまっすぐな印象の裏に、思慮深さや葛藤を秘めたキャラクター。そんなバランスをどう立ち上げるかが鍵となる。

さらに、 “見られ方”についても、プレッシャーなく自然体で向き合っている。

「もう“綺麗”“かっこいい”とかは意識してないです。どう見られてもいいやって思ってます。
そういうのって、役者が固執することじゃない。大事なのは、自分が楽しめるかどうかやと思うんです」

過去にはバラエティー番組での女装経験もあるが、「評判は全然良くなかったです(笑)。だから今回は“見てられる範囲”になればいいなって。変に見えたら意味がないし、やりすぎないようにしてます」と笑う。歩き方や肩の落とし方など、細かな所作にも目を配りつつ、あくまで“役としての自然さ”を大切にしているようだ。

◆言葉と戯曲の奥行き――シェイクスピアと戯れる

“言葉の魔術師”と称されるシェイクスピア。正門も、その言葉の重みと戯曲の奥深さに、真正面から向き合っている。

「戯曲を2時間にこんなに詰め込むのかって思うくらい、内容が濃いです。『十二夜』は、良い意味で本当にカオスな作品だなと思ってます。観てくださるお客さんの体感が、あっという間に過ぎたらいいなって」

セリフの覚え方についても、「聞く、書く、声に出す、情景を浮かべる…」と試行錯誤を重ね、“覚える”ではなく“生きる”ためのプロセスを大切にしているという。

「よくあんなにねちねち言えるなって思うくらい(笑)。でもだからこそ、一つひとつがロマンチックで、憧れる世界なんです。
そこが魅力でもあります」

舞台でしか生まれない“マジック”についても、こう語った。

「僕が女の子になったり、舞台が海や山になったりするじゃないですか。コンプラ的にアウトでしょ?ってセリフも、舞台だったら言えるんです。そういうことですよね」

現実では許されない言葉や行動、想像の範囲を超える感情の交差――そのすべてが舞台という“異空間”では許され、輝きを放つ。正門は、そんな演劇の持つ魔法を信じて疑わない。

後編では、2度目のタッグとなる演出家・森新太郎氏との信頼関係や、三角関係の恋模様についての考え、そして“特別な場所”グローブ座への想いまで――舞台を支える心の内側に、さらに深く迫っていく。(modelpress編集部)

◆正門良規(まさかど・よしのり)プロフィール

1996年11月28日生まれ、大阪府出身。2011年に現事務所に入所。2019年にAぇ! groupのメンバーに選ばれ、2024年5月15日に「《A》BEGINNING」でCDデビュー。近年の主な出演作は、舞台『ヴィンセント・イン・ブリクストン』(2022年)、『Touching the Void タッチング・ザ・ヴォイド~虚空に触れて~』(2024年)、映画『グランメゾン・パリ』(2024年)、ドラマ『ムサシノ輪舞曲』(テレビ朝日系、2025年)など。2025年10月より主演舞台『十二夜』にてシェイクスピア喜劇の代表作に挑戦する。

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