* * *
筆者は長く放送作家として活動してきたが、ドラマづくりは経験が少ない。しかし、コントなら多くの作品に携わり、これまで無数の人物設定を考えてきた。
コントの登場人物には、わかりやすいステレオタイプな人物設定がされることが多い。かつてはテレビドラマでもよく類型化された人物設定があった。
そこで、本稿では今時のドラマにはもう見られなくなった「類型化された人物設定」の典型的なパターンをいくつかを考えてみた。誰もが多かれ少なかれ記憶にあるような設定であると思う。
この類型化には、罠が潜んでいる。便利だけど嘘であることも多い。人をグループ分けして、そのグループ全体を同じ性向を持った人だと考えるのは間違っているのに、人は容易にその罠にはまる。
血液型の性格分類などはその典型的な例である。以下にその例を挙げていくが、例えば、
「東北人は我慢強い」
という類型化は、
「東北人の中には我慢強い人もいる」
と読み替えれば、それは誤から正に変わるだろう。
・大阪人はこすっからい
・九州人は肝が太い
・江戸っ子は短気
これら地域性に絡むものの大本を作ったのは、1969年(昭和44年)初版、心理学者・宮城音弥(1908~2005)の「日本人の性格 -県民性と歴史的人物 」に、負うところが多い。
もちろんそれ以前にお国柄と呼ばれる県民性はあった。東京は全国から田舎者が集まるところだから、47都道府県各地の人々を観察できた。
・姑は嫁をいびる
・嫁は姑を馬鹿にしている
・一人っ子は甘えん坊
・身障者は心がきれい
・若い男はセックスのことしか考えていない
・画家はルパシカとベレー帽を身につけている
文学座の杉村春子先生は、画家役の新人俳優が、稽古にこの格好をしてきたので、烈火のごとくお怒りになられたそうだ。杉村さんの時代からすでに間違っていたのである。
・OLは不倫をしている
・警察署長は天下りで性格が悪い
・妻は絶対夫の文句を言う
・子供は純真
・母の手紙を人前で読まれたら必ず泣く
・学校は校長派と教頭派に分かれている
・美人の女子高生は相当バカ
・おたくの高校生は考えがネガティブ
・めがねを強調している女子は取ると美人
・亭主はかみさんにを財布を握られている
・政治家にはウラがある
・寂しがり屋の少年少女は幼少期に暗い原体験
・新橋で飲んでいるサラリーマンは出世をあきらめている
こういう類型を打破した脚本家として僕が記憶するのは山田太一、向田邦子までである。あの頃は夢中になって「想い出づくり。」(TBS・1981)や「あ・うん」(NHK・1980)を見たものだ。
今は今で、類型を破る作品がどんどん作られているのだろう。
【 元の記事を読む 】