目次
  • 基本的な対処法となる生活保護の基礎知識
  • 困窮が原因で病状が悪化してしまった事例
  • 生活保護以外のさまざまな支援制度

千葉県の地域包括支援センターで社会福祉士として勤務する藤野です。

私たちは高齢者の方から、さまざまなご相談を日々受けていますが、一番問題となりやすいのが金銭面です。

例えば、「足腰が弱ってきて自宅での入浴が困難になったので、デイサービスの入浴介助を受けたい」「自宅での生活が難しくなってきたので、施設入所や短期入所の利用を考えている」といったご相談に対し、私たちは福祉サービスを利用する手配をするのです。

しかし、こうしたサービスは無償で提供されているわけではありません。困窮されている方の場合、金銭的にサービスの利用が難しくなる可能性があります。

そこで今回は、生活が困窮している高齢者が受けられる公的支援について解説します。

基本的な対処法となる生活保護の基礎知識

高齢者に限らず、困窮した世帯に適用される一般的な支援制度が、「生活保護」です。

生活保護の適用条件は、事前に生活資金などに替えられる資産や親族の金銭的支援、ほかの法制度などを検討したうえで、なお生活が困窮している場合に限ります。

よく持ち家や自家用車を所有していると生活保護が受給できないと言われていますが、必ずしもそういうわけではありません。

持ち家の場合は、売却することによって資産となり得るかで判断されます。また、自家用車は仕事に使用する場合は限定的に所有が認められることもあります。

私が携わったケースでは、車両の処分費用が支払えないことから保有を認められたこともありました。

また、借金があると生活保護を受けられないとも言われていますが、最低限の生活を営むために支給されている保護費を借金返済に充てることを否定するものであり、現段階で生活に困窮している場合には支給対象となるケースもありました。

また、年金が支給されていても、最低生活費以下であれば生活扶助が支給されます。

この最低生活費は、年齢が高くなると低くなります。

例えば、単身者の最低生活費が7万円で、年金が2万5,000円支給されている場合は差額4万5,000円が生活扶助として支給されます。

現金給付は生活扶助のみとなりますが、このほか医療費が支給されたり、各種税金が免除されたりと、目に見えない支出が抑えられます。そのため、結果的に生活がしやすくなります。

施設入所の場合も費用が支給され、地域によって金額は異なりますが家賃補助などもあります。ちなみに、私が勤める千葉県富津地域では、家賃の支給額が3万7,000円ですので、賃貸住宅に住む場合はこの額より低い家賃の住宅に住む必要があります。

生活保護の申請から決定までは原則14日以内に可否を回答することになっていますが、生活状況や資産の調査などに時間がかかる場合は最長30日まで延長されることもあります。

生活が困窮している高齢者が活用したい公的支援を解説の画像はこちら >>

困窮が原因で病状が悪化してしまった事例

高齢者の場合、生活が困窮して病気の症状が悪化してしまうケースがあります。

幻視や幻覚を伴う認知症となった高齢者が、早朝や深夜に近隣住民の自宅を訪ねてしまった事例もありました。この時は警察からの通報で対応しました。

主治医と連携して生活状況を把握したところ、医療費の支払いが滞っていることがわかりました。そのため、生活保護の申請に動き出し、同時に専門医への受診を行った段階で身体的虐待が疑われるあざが体に見つかったため、そのまま入院する措置を取りました。

生活困窮と身体的虐待が確認されたことにより、退院後自宅への復帰が困難となることが予想されたため、即日、市役所の生活保護課、高齢者虐待担当課、高齢者支援係の担当者に集まっていただき、打ち合わせをしました。

その結果、退院後施設入所をした段階で生活保護を受給し、安心して生活ができる体制を整えました。

生活保護以外のさまざまな支援制度

生活困窮者に対する救済としては全国の社会福祉協議会でも実施していますので、最寄りの社会福祉協議会に相談することも一つの手だと思います。

主に活用できる制度としては次のようなものがあります。

母子父子寡婦福祉資金 ひとり親家庭に対して資金を貸し付ける制度です。医療や介護にかかったときに無利子でお金を借りることができます。 求職者支援制度 再就職を目指す人に対して、月10万円の給付金のほか、無料の職業訓練などを受けられる制度です。 雇用保険失業給付 一般的に「失業保険」と呼ばれる給付制度です。近隣のハローワークなどで手続きを行い、受給資格があるかどうか検討します。 生活福祉資金貸付 生活資金などに困ったときに資金を貸し付けてくれる制度です。コロナ禍による特例給付などもあります。 住居確保給付金 失業などで住宅を失う恐れがある場合に家賃などを支給してくれる制度です。

仕事がないことによる困窮に対しては、生活困窮者自立支援法に基づく機関が仕事探しを支援してくれる制度もありますので、積極的に活用しましょう。

生活が困窮している高齢者が活用したい公的支援を解説
社会福祉事業所などでも申請できる生活支援制度

近年、新型コロナウイルス感染拡大に伴って生活に困窮するケースが増えています。

明日の食べるものに困る前に、早めに行政に相談することをおすすめします。

また、未婚単身親戚縁者が薄い方の支援も増えています。こういったケースでは、体調を崩して入院しなければならない段階でお金がないことが判明し、適切な医療が受けられないといった事態が生じることもあります。

健康的で文化的な生活を送ることは憲法で保障された国民の権利です。生命の維持に危機が生じてから慌てて動き出すのではなく、そういった対象者がいたら、相談だけでも早めに行いましょう。行政だけでなく、地域包括支援センターが状況を把握して生活保護担当課につなぐといった支援もしていますのでぜひ相談してください。

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