「自分のペースでご飯を食べたい」
「ゆっくりでもいいから、自分で洋服を着たい」
そんなときに役立つのが、今回紹介する「自助具」です。
自分を助けるという名前のとおり、要介護者の体の動きを助ける道具です。
さまざまな種類がありますが、この記事では、食事や入浴などの日常生活動作で使われる自助具をご紹介します。
購入方法も紹介しておりますので、参考になさってください。
自助具とは
自助具とは、病気や障害などで体が麻痺したり、関節が固まったりして体をスムーズに動かせなくなった方の日常生活動作や家事動作を助ける道具です。
名前の通り、自分を助ける器具なので、要介護者自身が使います。福祉用具に含まれますが、その中でも特に日常生活に密着しており、個別性が求められます。
自助具を使う目的
自助具を使う大きな目的は、食事や入浴、排泄、着脱、整容などの日常生活動作や、家事動作を、可能な限り自分で行えるようにすることです。
今まで介助を受けていた行為が、自助具を使うことで、自分でできるようになることも多くあります。
「自分でできる」ことは喜びであり、日々の生活の中で、気持ちを前向きにしてくれます。それだけでなく、介護する方の負担軽減にもつながるのです。
自助具の種類と価格
自助具を使う場面はさまざまです。ここでは、食事や入浴、排泄などの日常生活動作で使われる自助具をご紹介します。
1.食事
手がうまく動かない方でも、自助具を使うと自分でお食事をとることが可能になるケースがあります。
私が以前勤務していたデイサービスセンターでも、自助具を使い、介助なしで召し上がる方が数人いらっしゃいました。
1.握りやすいスプーン柄の部分にスポンジが巻かれているタイプのスプーンです。柄が太くなっているので、握力が弱い人でも握りやすくなっています。
2.食べ物をすくいやすいお皿お皿の内側が少し深くて傾斜があるものは、傾斜の土手部分で食べ物が止まってくれます。
底に滑り止めがついているお皿だと、片手でも食事をすることが可能です。
3.持ちやすいマグカップ持ち手が大きいマグカップは、片手がすっぽり入るので、握力が弱い方も握りやすいでしょう。
マグカップ以外に、大きな持ち手がついているみそ汁のお椀もあります。
4.簡単に使えるお箸お箸の上部にグリップがついており、軽く押すだけで、食べ物をつかめます。
箸先に滑り止め加工がされているので、つかみやすいのも特徴です。
細かい手の動きができない方、握力が低下している方も使えるでしょう。
2.入浴
麻痺や痛みなどで上半身が動きにくいと、自分で体や髪の毛を洗うことが難しくなります。そのような方には以下のような自助具がおすすめです。
1.柄付きボディスポンジ長い柄がついているボディスポンジです。
腕の力が弱い、肩に痛みがあるなどの理由で、背中や首に手が届かなくても、自分で洗うことができます。
2.ミトン型ボディスポンジリウマチなどで、指先の細かい動きが難しい方や、ボディタオルを持てない方向けのものです。手にはめて石けんもしくはボディソープを付けて体を洗います。
片麻痺がある方向けの自助具です。片手でシャンプーボトルのポンプを押すと、押した手にシャンプーが出てくるものです。
市販されているものは少なく、1個2,398円というものがありました。
3.着脱
膝や股関節に痛みがある方は、靴下を履くのが難しい場合があります。また、リウマチなどで指の動きに制限がある方はボタンを留めることが難しいでしょう。
1.ソックスエイドプラスチック製の本体にヒモがついており、靴下を履くことを手助けするものです。
股関節や膝関節の曲げ伸ばしや、前かがみになることが難しく、1人で靴下をはけない場合に使います。
2.ボタンエイド肩ボタンを留めることを助ける自助具で、リウマチなどで細かい指の動きが難しい方にとって便利です。
持ち手と針金部分でできており、糸通しの要領でボタンホールに針金部分を差し込み、先端にボタンを引っかけます。
針金の先端にボタンがかかっている状態で持ち手ごと引っ張ると、ボタンを留められる仕組みです。
4.整容
髪をとかす、爪を切るなど、身だしなみ動作用の自助具もあります。
1.柄が長いヘアブラシ腕や肩を高く上げずに髪をとかせるヘアブラシです。肩や腕の動きに制限や痛みがある方に向いています。
2.台付きつめ切り名前のとおり、台に固定されたつめ切りです。
手のひらや肘でつめ切りを軽く押すことにより、小さい力で爪を切ることができます。
手の筋力が低下している方や、指先の細かい動作が難しい方に向いている自助具です。
5.排泄
排泄もデリケートなことなので、介助を受ける部分はできるだけ少なくしたいものです。
ここでは2つのトイレットペーパーホルダーをご紹介します。
1.トイレットペーパーホルダー:「おくだけ」トイレットペーパーを切る刃がホルダーの下についているもので、ペーパーを下に引くだけで、切ることができます。
片麻痺の方や片手をけがしている方に便利です。
ペーパーホルダー おくだけ
2.トイレットペーパーホルダー:「ロッコロ」トイレットペーパーを切るだけではなく、まきとることも自分で行える自助具です。
「おくだけ」と同じく、片麻痺の方やけがをしている方にとって便利なものになります。
ロッコロ公式Webサイト
自助具の選び方
自助具を選ぶときには、使う方の身体状況に合ったものを選びましょう。
手に持ってみて、「重たい」「使いにくい」と感じるものや、使っていて体に痛みや違和感があるものは避けてください。
作業療法士や福祉用具専門員などの専門職や、ケアマネージャーに相談することをおすすめします。
自助具の購入方法
自助具の主な購入方法は以下のとおりです。
- 介護用品取扱店
- 大きな病院の売店
- ドラッグストア
- インターネット通販
インターネット通販の場合、Amazonや楽天市場などの通販サイトを利用する方法と、介護用品取扱店のオンラインショップを利用する方法があります。
介護用品取扱店のオンラインショップは、電話やメール、ファックスなどを使い、商品の選び方の問い合わせや相談に対応するところが多いので、近くにお店がない方は利用してみるとよいでしょう。
なお、自助具は介護保険の対象外なので全額自費となります。
自助具は手作りできる
市販の自助具は一般的に数千円で販売しておりますが、もし買ってみてご本人に合わなかった場合、経済的にも痛手になるでしょう。
実は身近なものを使って、自分で作る方法もあります。下記のサイトで作り方をダウンロードできるので参考にしてみてください。
北九州市立介護実習・普及センター福祉用具プラザ北九州 手作り自助具
ただし、自作する場合も、使う方に合わせたものにする原則は変わりません。
まとめ
自助具は、介護を受けている方の「できること」を広げてくれる可能性があります。
可能性を広げるためには、その方に合った自助具選びが大切です。
市販品を購入する、手作りする、どちらの場合でも専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。