私がかかわりをもつ高齢者には「筋肉をつけて元気になるためにタンパク質が多い食品を食べるようにしている」と言われる方が増えてきました。
タンパク質を摂ることはとても良いことなのですが、食べたタンパク質が体に吸収されて筋肉になるためには、そのほかの栄養素や運動なども必要です。
今回はタンパク質が筋肉になるためにはどのような食べ方をすれば効果的なのかを説明したいと思います。
タンパク質が分解・吸収される流れ
タンパク質は、アミノ酸が50個以上つながった化合物で、プロテインとも呼ばれ、人の体をつくる材料となります。
タンパク質は、そのまま吸収されるわけではなく、一度ペプチド(数個~数十個のアミノ酸が連結したもの)とアミノ酸に分解されてから吸収されます。
タンパク質の摂取量が減ると、筋力・免疫力の低下、皮膚の老化、肌トラブルにつながります。そのため、良質なタンパク質をバランスよく摂取することが大切です。
タンパク質が体に吸収される仕組み
タンパク質は分子が大きいため、さまざまな部位で分解・吸収されます。その大まかな流れを解説しましょう。
吸収されたアミノ酸は肝臓へ運ばれ、タンパク質へ再合成されて体内でさまざまな役割を果たします。また一部のペプチドは、アミノ酸に分解されることなく体内へ吸収されます。
タンパク質を細かく消化するペプシンやトリプシンなどの消化酵素も、アミノ酸からつくられています。消化、吸収機能をスムーズに働かせるためにも必要量のアミノ酸が体内にあることが大切です。
ただ、胃腸が弱っているときにタンパク質を摂取すると、吸収されずそのまま体外へ排出されてしまいます。また、高齢者は消化酵素の活性減少に伴い、タンパク質の消化吸収率が落ちてしまうため、若い頃よりも多めにタンパク質を摂取する必要があります。
タンパク質吸収に効果的な食べ方
タンパク質を吸収するためには、吸収されるアミノ酸を摂取する必要があります。アミノ酸が摂取できる食材はさまざまです。
おすすめの食材と摂取の時間帯
BCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれるバリン、ロイシン、イソロイシンの摂取が重要です。これらのアミノ酸にはエネルギー代謝や成長ホルモンの分泌を促す働きがあります。
【おすすめ食材】- マグロの赤身
- カツオ
- アジ
- サンマ
- 鶏肉
- 牛肉
- 卵
- 納豆
- 豆腐
- チーズ
BCAAは、筋肉づくりのゴールデンタイムに合わせた摂取が効果的です。ゴールデンタイムとは、運動直後~1時間、睡眠後4時間程度、就寝前の時間帯です。これらの時間帯は成長ホルモンの分泌が盛んになり、筋肉の修復が始まるため、十分な量のアミノ酸があれば修復がスムーズに進みます。
タンパク質は毎日摂取する
タンパク質を摂取するうえで気をつけたいのが、「一度に吸収できるタンパク質の量には限度がある」ということです。
吸収できなかったタンパク質は排出されてしまうため、まとめて摂取し体内に貯めておけません。また、体内のタンパク質は分解と合成を繰り返しているため、毎日の食事で取り入れることが大切です。
タンパク質の吸収を助ける栄養素
タンパク質の吸収をサポートしてくれるのがビタミンB6です。マグロやサケなどの魚は、タンパク質とビタミンB6の両方を豊富に含むため、特におすすめの食材です。
【ビタミンB6を多く含む食材】- 大豆
- くるみ
- 米
- バナナ
- ごま
- にんにく など
ビタミンB6だけに限らず、タンパク質の吸収を助けるためにはいろいろな栄養素をまんべんなく摂ることが大切です。主食・主菜・野菜を含んだおかずなどを毎日の食事に取り入れてフレイル予防をしましょう。ごはんやパンなどの糖質と一緒に摂るのもおすすめです。

さらに、糖質がエネルギーとして利用されることで、アミノ酸の分解を抑制する効果もあります。特に運動後には、エネルギー不足による筋肉の分解を防ぐため、速やかに糖質・タンパク質を補給しましょう。
タンパク質の摂取量増加と筋トレを組み合わせると、さらに筋肉増量効果が向上します。
高齢になると一度の食事でたくさんのタンパク質を摂取することが難しいため、食事の回数を増やしたり、毎回の食事で効果的に吸収できる食べ方を心がけましょう。