感染者への対応に当たった訪問ヘルパーへの処遇改善

厚労省が訪問ヘルパーへの特別手当について明言

2022年3月、厚労省は新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者に対応した訪問ヘルパーに支払う特別手当について、補助金を使って全額公費で賄うことを明言しました。

訪問介護におけるこれまで認められていた助成額は、防護服など資材の購入費などを含めて、1事業所あたり年間32万円を上限としてましたが、この金額を超えた相談に応じる方針を示しています。

さらにこの特別手当は、2021年4月まで遡って請求が可能です。

都道府県が窓口となり手続きを進めることとなっています。

この決定の背景には、新型コロナの自宅療養者への訪問介護を巡り、訪問介護関係者がオンライン署名を実地したことがあります。医師や看護師には特別手当が支払われていたにも関わらず、訪問介護ヘルパーには特別手当が認められていなかったのです この訴えの署名には1ヵ月で約4万人の書名が集まりました。

医療機関の逼迫により増加する自宅療養者

新型コロナの感染が依然として高い水準で推移している中、自宅療養者も2022年3月9日時点で427,355人となっており、これまでにないペースで増え続けています。

約4万人の声が力に。感染者らの対応をした訪問ヘルパーへの特別...の画像はこちら >>
出典:『療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について』(厚生労働省)を基に作成 2022年03月23日更新

オミクロン株が主流となっている第6波では、若い人や基礎疾患のない人は比較的重症化の可能性が低いことから、原則自宅療養が促され、限られた病床を重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人に重点的に提供できるようにするなどの対応が取られています。

しかし、本来入院が必要な人であるにもかかわらず、保健所や医療機関が逼迫し、入院ができずに、病院や宿泊施設などの療養先が決まっていない人も多く見られます。

自宅療養を強いられている高齢者の中には、介護を必要としている人もおり、新型コロナの陽性者であっても、訪問ヘルパーが通常通りの介護対応をこなしているケースもあります。

感染のリスクが高い訪問介護

訪問介護の現状

自宅療養の新型コロナ陽性者宅を訪問して医療対応する場合、診療報酬上の特例があり、医師は1回につき28,500円、看護師は15,600円の加算できることになっています。濃厚接触者を訪問した場合も、医師は3,000円の加算をつけることができます。

しかし、訪問介護を行うヘルパーには、これまで国からの補助や加算は一切認められていませんでした。

訪問介護は、介護の仕事の中でも入浴や排泄の介助などハイリスクの業務を多く担っています。厚労省が公表する資料をみると、要介護度が高くなるにつれて利用時間も長くなり、直接体に触れる身体的介護の利用時間も長くなっていることがわかります。

約4万人の声が力に。感染者らの対応をした訪問ヘルパーへの特別手当にようやく着手
出典:『訪問介護の報酬・基準について』(厚生労働省)を基に作成 2022年03月23日更新

当然ですが訪問介護の訪問先は、若い人や健康な人に比べて抵抗力の低い高齢者宅です。ヘルパーは動きにくく息苦しい防護服に身を包み、高齢者の対応をしなければなりません。

自分がウイルスを運び、感染源になってしまうかもしれないという危険と常に隣り合わせであり、体力的にも精神的にも負担が大きいのです。

また、新型コロナウイルスに感染した場合や、感染の恐れがある場合は、仕事を休まざるを得ないため、他の訪問ヘルパーの負担も大きくなります。

高齢者が自宅療養するリスク

感染者の増加に伴い、重症者を優先する医療体制へ移行が進んでいます。

本来、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人は原則自宅療養は認められていません。しかし、医療機関の逼迫により、入院の調整がうまくできずに高齢者が自宅療養しているケースも少なくありません。

また新型コロナウイルスは、咳や息苦しさなどの自覚症状がないまま状態が悪化することもあるため、特に注意が必要です。

高齢者は他の年代と比べ、重症化のリスクが高いといわれています。もし感染した場合には、自覚症状の有無に関わらず、パルスオキシメーターで酸素飽和度をこまめに測定しましょう。

リスクの高い訪問ヘルパーに支援を

訪問介護の役割と現状

ヘルパーが利用者の自宅を直接訪問してケアをする訪問介護には、入浴や排泄、食事、体位変換、たんの吸引などを行う「身体的介護」と、掃除や洗濯、食事の準備などを行う「生活援助」があります。

要介護者が自宅療養をする場合、訪問介護なしでは生活を保つことが難しくなるほど欠かすことのできないものです。

体に触れる介助が中心となる「身体的介護」は、個人防護具を着用した上でケアを行っていても濃厚な接触を伴うため、ヘルパーも利用者も不安を感じることが多いのです。

しかし、日本医師会が公表する報告書によると、新型コロナ患者の診断および在宅療養支援において、約 8 割の在宅医療機関で、個人防護具が不足していることが明らかになっています。

約4万人の声が力に。感染者らの対応をした訪問ヘルパーへの特別手当にようやく着手
出典:『「在宅医療と介護における COVID-19 対応の課題と 解決策、提言タスクフォース」報告書』(日本医師会)を基に作成 2022年03月23日更新

日常の診療で使用頻度の低いガウンやN95マスク、フェイスガードなどだけでなく、消毒用エタノール、サージカルマスク、グローブなど日常診療で使用頻度の高い資材の不足も報告されています。

また、2020年当時の調査ではありますが、第2波以降の感染拡大の備えとして、95%の在宅医療機関が「個人防御具の確保・支給が必要」と答えています。

現在もなお感染が広がっている中で、政府は在宅医療機関における資材の確保状況などを正確に把握し、不足している機関があれば必要な量を速やかに支給できるよう体制を整えることが重要です。

加算と共に重要なメンタルケア

感染者らを対応する訪問ヘルパーにおいて、今回決定した特別手当と同様に大切なことは、メンタルケアの在り方です。

厚労省は「新型コロナウイルス感染症に対応する介護施設等の職員のためのサポートガイド」にて、メンタルケアの対応や進め方を周知しています。

訪問介護においては、感染予防の観点から、自宅から訪問先への直行直帰を促している事業所も少なくないため、職員とのコミュニケーションを図ることが難しくなっている実情があります。

コロナ禍での訪問介護は「自分自身の感染」、「十分なケアを提供できない葛藤」が不安やストレスの原因となっています。

介護業界の人手不足は長年問題となっています。今いる人材を逃さないためにも、状況に合わせてメンタルヘルスケアを行い、管理者は適切に職員をサポートすることが必要です。

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