「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視し、効率よく情報を得ることが当たり前になった現代。その最強のツールであるスマートフォンが、皮肉にも私たちの人生で最も貴重な「時間」そのものを、静かに奪っているのかもしれません。
イギリスの教育機関やメディアが共同で行った最新の調査が、衝撃的な未来を明らかにしました。もし現在の習慣が続けば、今の学生たちは、起きている時間のうち実に25年間をスマートフォンに費やす可能性があるというのです。
学生自身が気づいている「スマホ依存」の不健康さこの調査は、2025年1月から5月にかけて、イギリスとアイルランドの中高生、大学生ら約2,800人を対象に行われました。その結果、学生のスマホ利用時間は、1日平均5.5時間にのぼることが判明。これを生涯に換算すると「25年」という驚くべき数字になります。
しかし、さらに深刻なのは、学生たち自身がこの問題に気づいている点です。
76%が、自身のスマホ利用は「不健康だ」と感じている
70%が、学業に「悪影響が出ている」と回答
約半数が、夜間のスマホ利用で「睡眠が妨げられている」と報告
これは、大人が一方的に「スマホの使いすぎだ」と指摘するのとは次元が違います。若者自身が、自らの「スマホ依存」とも言える状況に、強い危機感を抱いているのです。
「私たちは無知じゃない、無力なだけ」― 奪われる集中力と自己肯定感調査報告書に記された「私たちの世代は無知なのではない。ただ、圧倒されて無力なだけだ」という言葉は、彼らの苦悩を象徴しています。
スマホの使いすぎは、学力や睡眠の問題だけでなく、不安感の増大、自己肯定感の低下、そして何より「集中力」の低下に繋がっていると、多くの学生が感じています。
この問題は、将来のキャリアにも影を落とします。
では、どうすればいいのでしょうか。この調査は、スマホを禁止したり、テクノロジーから隔離したりすることを推奨してはいません。むしろ、全く新しいアプローチを提案しています。
それは、「デジタル・ウェルビーイング」という考え方を、性教育や保健体育と同じように、学校の必須カリキュラムに組み込むことです。
これは、単にデバイスの使い方を教えるのではありません。 compulsive(強迫的)な使用を自覚する方法、生産的な利用と受動的なスクロールの境界線を引く方法など、スマホと「意図的に」付き合うためのスキルを育む教育です。
時間を奪い合う「アテンション・エコノミー」との戦いこの問題の根底には、私たちの「注目(アテンション)」を奪い合い、それを収益化しようとする「アテンション・エコノミー」の存在があります。通知、アルゴリズム、無限に続くフィード…。巨大テック企業は、私たちの有限な時間を一瞬でも多く奪おうと、最適化を続けています。
報告書はこう締めくくります。
「なぜ注目はそれほど価値があるのか? それは有限だからだ。そして、それをコントロールする者が、行動をコントロールするからだ」
今、求められているのは、そのコントロールを自分たちの手に取り戻すこと。もし社会や家庭が、若者たちが自らの集中力を育み、管理するスキルを教えなければ、その代償は教育的な損失に留まらず、文化的、心理的、そして経済的な損失となって、私たち全員に降りかかってくるでしょう。
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