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【福永博之先生に聞く信用取引入門】
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今回は実際の値動きを元に信用買いの活用例について解説したいと思います。

例として取り上げるのはETF(上場投資信託)です。

ETFにはいろいろ種類がありますが、TOPIXに連動するETFのうち、上場インデックスファンドTOPIX(1308)を使って解説します。

2024年1月9日に2,400ポイントを上回ったTOPIXですが、TOPIXのETFは、同日の終値が2,494円となっていました。

また、翌営業日の1月10日にはTOPIXが昨年来高値を更新し、上昇期待が高まる状況となりました。

そこで、TOPIXのETFを1月9日の終値で200口購入するとします。この時に必要となる売買代金は200口×2,494円=49万8,800円(手数料などの諸経費を除く)となります。現物株を買うためにはおよそ50万円の購入代金が必要になりますが、手元には30万円しかないとします。



このETFは1口単元ですので口数を減らして買うことも可能ですが、数か月後にまとまった資金が入ってくることが分かっていたため、そこまで待つよりは信用取引を活用してチャンスを逃さないようにしたいと考え、信用買いを決断しました。

信用新規買いに必要な委託保証金は約定価額の30%ですが、信用取引を行う際には最低限預けなければならない金額があります。これは最低委託保証金と呼ばれるもので、30万円です。そのため、今回例に挙げたETFの信用新規買いに必要な委託保証金を計算すると49万8,800円×30%で、14万9,640円になりますが、最低委託保証金の額が30万円と決まっているため、30万円を信用取引口座に入金する必要があるのです。

信用取引を始めるにあたり、最低委託保証金の30万円は必要になりますが、現物株の購入金額がおよそ50万円であることを考えると、より少ない金額で投資することができるとともに、手元に30万円あれば、委託保証金額の約3.3倍まで取引が可能になるため資金効率が良い取引と言えます。

その後のETFの値動きを見ますと、信用取引で買い建てたあとも上昇トレンドが継続する格好となったため、3月22日には昨年来高値を更新し、取引時間中には2,918円をつける場面がありました。



その後は、新年度特有のイベントとして3月期決算企業の業績発表を控えていることもあって上値が重たくなってきたことから上げ幅を縮めましたが、2024年4月12日時点の終値が2,880円となり信用取引の買建て玉に含み益が発生している状況となりました。具体的には、4月12日の終値が2,880円ですので、この終値から買値の2,494円を差し引いた差額に口数をかけたものが含み損益になります。

計算すると、(2,880円-2,494円)×200口=7万7,200円(手数料などのコストを考慮せず)の含み益が発生していることになり、信用取引の委託保証金である30万円に対しておよそ25.7%の含み益が出ていることになります。非常に効率の良い投資ができていると言えるわけです。

一方で、手数料や金利などのコストについても考えてみたいと思います。信用取引には制度信用と一般信用の2つがありますが、どちらを選ぶかでコストが異なります。



通常、返済期限が6ヵ月以内の制度信用と、投資家と証券会社のあいだで期限を決める一般信用取引(無期限が多い)では、一般信用取引の方が金利が高くなっているため、制度信用取引を選ぶ方が多いと思われますが、仮に返済までの期限が長いことを理由に一般信用取引を選んで買い建てたまま放置すると、予想以上にコストが膨らんで期待通りの利益が得られないことも考えられますので注意が必要です。

また、相場が急変すると含み益が無くなってしまうことも考えられますが、金利などのコストはそのまま残りますので、思わぬ損失につながったり、追加の委託保証金の差入れが発生したりすることも考えられます。そのため、利益が出ている状況が続いても欲を出さず、早めに返済を行うようにする必要があります。

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