議決権行使とは?株主総会に参加しない際の議決権行使書の提出方...の画像はこちら >>


議決権行使は、配当請求権や残余財産分配請求権と同様に株主に与えられている権利である、株主総会での議決権を行使することです。そのため、株主総会に参加できない場合でも議決権行使書を郵送して権利を行使してはいかがでしょうか。



本記事では、議決権行使の方法や主な議案内容も解説します。

議決権行使とは

株主総会における議決権行使とは、株主総会で提出された議案に対して、賛成や反対の意思を示すために投票することです。ここから、そもそも議決権が何なのかを説明したうえで、株式総会で議決権行使が大切とされている理由を解説します。

そもそも議決権とは

議決権とは、株主が株主総会の議題に対して投票で賛否を示せる権利のことです。

株主には、保有している株式1株につき1個の議決権が与えられます(会社法第308条第1項)。株式を多く持っているほど議決権も増えるため、議題の決定への影響力が高まるといえるでしょう。

また、議決権を保有している割合によって、株主ができることが異なります。例えば、議決権の3%以上を有する場合、会計帳簿の閲覧を請求可能です(会社法第433条第1項)。

議決権行使が大切な理由

議決権行使は、保有する株式を発行する会社に対して自分の意思を伝えるために大切な行為です。各株主が議決権を行使することにより、会社は株主の意見を反映できます。

また、万が一多くの株主が議決権行使を怠ると、会社はスムーズに意思決定することが難しくなる場合があります。なぜなら、株主総会で決められた定足数(出席要件)や表決数(決議要件)を満たさなければ、決議が成立しないためです。

議決権を行使する方法

議決権を行使する方法は、以下の3つです。

・株主総会に出席する
・議決権行使書を郵送する
・電子投票を利用する

それぞれ解説します。



株主総会に出席する

株主は株主総会に出席して議決権を直接行使できます。

本人確認書類や入場券としての役割があるため、株主総会に出席する際は登録住所にあらかじめ送られてくる議決権行使書を持参しましょう。必要事項を記入した議決権行使書を株主総会で提出することで、議決権行使が完結します。

しかし、株主総会は依然として平日開催されることが一般的である点が課題です。株主総会に参加して議決権行使をしたくても、平日に仕事があるとなかなか参加できないでしょう。

また、日本の会社の決算期は3月に集中しています。そのため、他に所有している株式の発行会社の株主総会と重なる場合も、株主総会に参加して議決権行使をすることは困難です。

議決権行使書を郵送する

株主総会に参加できなくても、郵送で議決権行使が可能です。登録住所に送られてきた議決権行使書に必要事項を記載し、指定の住所へ郵送しましょう。

なお、電子メールで招集通知や付属書類を受け取ることに同意している場合は、議決権行使書が登録住所に送られてこない場合があります。時期が近づいたら、登録のメールアドレスをチェックするようにしましょう。

電子投票を利用する

保有する株式を発行する会社が電子投票制度を導入している場合、株主総会に参加しなくてもオンライン上で議決権を行使できます。電子投票は、株主が会社の設置するウェブサイトにアクセスし、賛否を入力する形式で実施されることが一般的です。

なお、議決権行使書による投票と電子投票が重複した場合の扱いをどのようにするかについては、各会社であらかじめ定められます。



議決権行使書を提出する際のポイント

議決権行使書を提出する際に押さえておくべきポイントは、以下の通りです。

・委任状とは異なる
・期限が定められている
・賛成・反対などを記入する

各ポイントについて解説します。

委任状とは異なる

議決権行使書が委任状とは異なる書類であることを理解しておきましょう。

株主総会における委任状とは、本人が何かしらの事情で株主総会に出席できない場合に、第三者に代わりに出席してもらうために提出する書類のことです。そのため、議決権行使書は「自分」が議決権を行使するための書類であるのに対し、委任状は「代理人」が議決権を行使する点が異なります。

期限が定められている

議決権行使書には提出期限が定められている点もポイントです。期限が切れると、議案に対する自分の賛否を会社に伝えられません。

期限は各会社で決められます。会社で特段定めていない場合は、株主総会が開催される日時直前の営業時間終了時点が行使できる期限です(会社法施行規則69条、70条)。

株主総会に参加できない場合は、早めに郵送したり電子投票したりすることを心がけましょう。

賛成・反対などを記入する

議決権を行使するには、議決権行使書に賛成・反対などの必要事項を記入しなければなりません。

一般的に、議決権行使書には各議案名(例:第1号議案、第2号議案)と「賛」「否」が記載されているため、各議案に賛成であれば「賛」に丸、反対であれば「否」に丸をつけます。電子投票する場合も、指定サイトでコードやパスワードを入力したうえで、賛否の入力が必要です。

株主総会における主な議案

株主総会で提出される議案は、内容によって普通決議が必要なものと特別決議が必要なものがあります。

普通決議とは、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、そのうち議決権の過半数の賛成で成立するものです(会社法第309条第1項)。それに対して特別決議は、原則として議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、そのうち議決権の3分の2以上の賛成で成立します(同法第309条第2項)。特別決議は基本的に重要事項を決めるにあたって求められる点が特徴です。



ここから、それぞれの具体例を紹介します。

普通決議の場合

普通決議で決まる議案の例は、以下の通りです。

・役員(取締役・会計参与・監査役)や会計監査人の選任(会社法第329条第1項)
・役員や会計監査人の解任(同法第339条第1項)
・資本金の額の増加(同法第450条第2項)
・準備金の額の増加(同法第451条第2項)

会社法第309条第1項には、定款で定めがある場合を除いて、株主総会の決議は普通決議で実施することが規定されています。

特別決議の場合

特別決議で決めなければならない議案の例は、以下の通りです。

・株式の併合(会社法第180条第2項)
・資本金の額の減少(同法第447条第1項)*一部のケースを除く
・定款の変更(同法第466条)
・事業譲渡の承認(同法第467条第1項)

なお、会社法第309条第2項には、特別決議で決めなければならない部分に該当する条文が記されています。

議決権行使以外に株主に与えられている主な権利

会社法第105条第1項で、株主には以下の権利があることを規定しています。

・剰余金の配当を受ける権利(配当請求権・利益配当請求権)
・残余財産の分配を受ける権利(残余財産分配請求権)
・株主総会における議決権(議決権行使の権利)

ここから議決権行使以外の権利について解説します。

配当請求権

配当請求権(利益配当請求権)とは、株式会社が事業を通じて得た剰余金を株主が受け取る権利のことです。配当の都度、金額などを株主総会の普通決議で決めます(会社法第454条第1項)。

1年間における配当の実施回数は、会社によって様々です。また、業績の悪化や将来の設備資金確保などの理由で、配当の実施が見送られることもあります。

なお、配当を受けるためには、権利付最終日から権利確定日までの間、対象の株式を保有していなければなりません。

残余財産分配請求権

残余財産分配請求権とは、投資した会社が解散・清算する際に、弁済後に残った財産の分与を受けられる権利のことです。ただし、資産よりも負債の方が多い場合は、分配を受けられません。



なお、配当請求権や残余財産分配請求権は権利行使の結果が株主のみに影響を与えるため、「自益権」と呼ばれます。それに対し、議決権行使は株主全体に影響を与える「共益権」です。

その他の権利

ここまで紹介した3つの権利以外にも、株式を1株持っているだけで主に以下のような権利があります。

・定款の書面の閲覧を請求する権利(会社法第31条第2項)
・株主名簿書面の閲覧や謄写を請求する権利(同法第125条第2項)
・株主総会で議案を提出する権利(会社法第304条)
・計算書類の書面または書面の写しの閲覧を請求する権利(同法第442条第3項)

株主が自分の意思を伝えるには議決権行使が必要

議決権行使とは、株主総会で提出された議案に対して、賛成や反対の意思を示すために投票することです。議決権行使書を持参して株主総会に参加することで、議決権を行使できます。

平日で参加できない場合でも、議決権行使書の郵送や電子投票で議決権行使が可能です。株式投資を始めた方は、自分の意思を伝えるために議決権行使をしてみてはいかがでしょうか。

ライター:Editor HB
監修者:高橋 尚
監修者の経歴:
都市銀行に約30年間勤務。後半15年間は、課長以上のマネジメント職として、法人営業推進、支店運営、内部管理等を経験。個人向けの投資信託、各種保険商品や、法人向けのデリバティブ商品等の金融商品関連業務の経験も長い。2012年3月ファイナンシャルプランナー1級取得。2016年2月日商簿記2級取得。現在は公益社団法人管理職。



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