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1.はじめに

本連載では、これまで5回にわたってTOPIX(東証株価指数、TOkyo Stock Price IndeX)について紹介してきました。

前回の記事ではTOPIXをサイズや業種、スタイル等で区分したTOPIXサブインデックスのうち、サイズ別・スタイル別の指数をご紹介しました。

最終回となる今回はTOPIXサブインデックスの中から業種別株価指数についてご紹介します。



2.業種別株価指数の概要

JPX総研は、TOPIXを業種で区分した指数として、東証業種別株価指数とTOPIX-17シリーズを算出、公表しています。

表1 業種別株価指数の概要

【JPX総研】TOPIXを区分して見る(業種編)


東証業種別株価指数は、「証券コード協議会が定める 33 業種」に基づき、TOPIX の算出対象を各業種別に分類した指数です。1968年に27業種から始まり、1992年には金融・保険業が4業種に細分化されるなどの変更があり、現在は33業種で算出しています。

また、2007年からは、投資利便性を考慮して東証業種別株価指数の33業種を17業種に再編した指数であるTOPIX-17シリーズも算出しています。

表2 東証業種別指数とTOPIX-17シリーズの対応

【JPX総研】TOPIXを区分して見る(業種編)


TOPIXには様々な業種の企業が含まれていますが、それらを業種別に区分することで、各業種の特徴や動向を確認することができます。

3.パフォーマンス

業種別株価指数のパフォーマンスについて見てみましょう。
昨年1年間(2024年1月4日~2024年12月30日)の終値をTOPIXと比較し、上位3業種を抜き出したものが、下のグラフになります。

2024年1月4日時点の各業種の指数値を1とし、以降TOPIXと同じパフォーマンスの場合に1となるように計算しているため、1を上回る場合はTOPIXをオーバーパフォーム、下回る場合にはアンダーパフォームしています。(以下、TOPIXとの比較では対象期間のうち最も古い日の指数値を1とし、TOPIXと同じパフォーマンスの場合に1となるよう計算しています。)

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2024年の年末時点で最もパフォーマンスがよかったのは保険業で、非鉄金属、銀行業と続きます。保険業、銀行業は、日本銀行が17年ぶりの利上げに踏み切るなど金融政策の正常化に踏み出す中で、収益環境が改善すると期待され、また政策保有株の削減を本格化させたこともあり大きく上昇したと考えられます。非鉄金属は、年初から2か月程度TOPIXをアンダーパフォームしていましたが、3月以降に金価格の高騰による収益押上げ期待から上昇し、年末時点では銀行業を上回るパフォーマンスとなりました。

続いて直近3年間(2021年12月末~2024年12月末)の各月末の指数値をTOPIXと比較し、上位3業種と昨年1年間でパフォーマンスの良かった非鉄金属を抜き出したものが、以下のグラフになります。

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この期間でも銀行業、保険業がよいパフォーマンスとなっています。

また、鉱業が3番目によいパフォーマンスとなっていますが、原油価格の上昇や為替が円安方向に推移したことにより業績が向上したことが要因と考えられます。
2024年1年間で見たときにパフォーマンスの良かった非鉄金属は直近3年間では33業種中8番目のパフォーマンスでした。

少し期間を延ばして、直近10年間(2014年12月末~2024年12月末)のTOPIXとの比較で上位3業種と1年、3年でパフォーマンス上位であった業種を抜き出すと以下のようになります。

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この期間で最もよいパフォーマンスとなったのは海運業で、2021年5月まではTOPIXをアンダーパフォームしていましたが、コロナ禍における海運需要のひっ迫によりコンテナ船の運賃が上昇・高止まりし、加えて大幅な円安による業績押上げもあり、2024年12月末時点ではTOPIXを大きく上回る結果となりました。

一方で、非鉄金属、銀行業や直近3年間で見た際にパフォーマンスの良かった鉱業は、直近10年で見ると、TOPIXをアンダーパフォームする期間が長くなっており、2024年12月時点ではいずれもTOPIXを下回るパフォーマンスとなっています。

次に、より長期でのトレンド変化を見てみましょう。
下のグラフは1970年以降の各四半期末時点のパフォーマンスをTOPIXと比較したもののうち、特定の時期にパフォーマンスの良かった業種を抜き出したものになります。

※ 1970年3月末時点の各業種の指数値を1として計算しています(化学、医薬品、卸売業、小売業、銀行業証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業の8業種は1992年3月末を1として計算)。

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1970年代前半は海運業や鉱業が、1970年代の終わりから80年代初めにかけては石油・石炭製品や鉱業がTOPIXを大きく上回るパフォーマンスとなっています。
その後、1980年代中頃から1990年代前半までのバブル期と2000年代初頭のITバブル期に二度、情報・通信業が大きな山を作っており、直近2024年9月末時点でも良いパフォーマンスとなっています。

1990年代後半からは輸送用機器がパフォーマンスを伸ばしており、2000年代に入ると、それまでTOPIXを下回る期間がほとんどであった精密機器がオーバーパフォームに転じ、2000年代後半からは卸売業のパフォーマンスも好調です。

また、1970年代から80年代初めにTOPIXを大きく上回っていた鉱業や海運業は、1990年代以降TOPIXをアンダーパフォームする期間が増えていましたが、先ほどご紹介したように、鉱業は直近3年では3番目、海運業は直近10年では1番目にパフォーマンスの良い業種となっており、時期によって好況な業種が推移していることが分かります。



1970年から5年ごとのパフォーマンスで見てみると、上位5業種は以下のようになっています。

【JPX総研】TOPIXを区分して見る(業種編)


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どこを起点とし、どの期間で比べるかによって見え方は変わりますが、東証業種別株価指数を利用して様々な期間の業種ごとのパフォーマンスを確認することができます。

前回の記事でもご紹介しましたとおり、業種別指数のようなファクター指数は市場ポートフォリオであるTOPIXを常に上回るというものではありませんが、比べる期間によっては特定の業種がTOPIXをオーバーパフォームすることもあります。業種別指数は特定の業種に投資してTOPIXを上回るリターンを追求する目的などにご活用いただけます。

4.おわりに

これまでの連載でTOPIXとTOPIXサブインデックスについて紹介してきました。
TOPIXは市場全体のベンチマークとしての役割を果たしており、TOPIXサブインデックスはサイズや業種、スタイル等の観点でTOPIXを分類し、特定のファクターのエクスポージャーを取りたいというニーズに応えていくものです。

本連載が皆様にTOPIXのことを知っていただく一助となれば幸いです。

※ 業種別指数等の動きに連動する運用成果をめざして運用されるETF(上場投資信託)も東証に上場しています。ご興味のある方は、こちらもご参照ください。(名称をクリックしていただくと、東証マネ部!の銘柄詳細ページが表示されます。)

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