投資歴30年で見つけた「株式投資で成功している人の共通点」の画像はこちら >>


兼業投資家として超分散・長期投資を実践し、資産1億円を突破した名古屋の長期投資家(なごちょう)さん。前編では株式投資を始めたきっかけや過去に経験した失敗、現在の投資の考え方について伺った。



後編となる今回は、より具体的な投資手法と株式投資に必要な考え方について、聞いていく。

ポイントは「株価が低すぎるときに買う」「できるだけ長く保有する」

なごちょうさんは、自身のことを「平凡な投資家」と表現する。

「投資家として有能なわけではなく、目の付けどころがいいわけでも常にいいタイミングで売買できるわけでもなくて、誰が見てもいいと思う会社を『さすがに株価が低すぎるんじゃないか』と感じるタイミングで買ってるだけなんですよね。まだ人気がなくて、みんなが注目していない銘柄を買っているので、流動性に関しては目をつぶっているところがあります」(なごちょうさん・以下同)

「株価が低すぎる」と判断するポイントは、どこにあるのだろうか。

「いろいろな指標や数字、社会情勢などを見ながら、10年後も売上や利益が増えそうな会社を見つけて、『PER(株価収益率)10倍以下』『PBR(株価純資産倍率)1倍以下』『配当利回り3.5%以上』のタイミングで買うようにしています。スーパーのお値打ち品を見つけるような感覚です。品質がよさそうなのに、なんで誰も買わないんだろうって感じる銘柄を見つけて、安いうちに買うってイメージですね。そもそも株価が低いときに買っているので、予想が外れて業績が上がらなかったとしても、そこまで大きな痛手にはなりません」

なごちょうさんが投資を始めた30年前から、売買単位の10分の1単位などで株を購入できる『ミニ株』といったサービスを提供する証券会社はあったが、売買単位が1000株であれば100株買わなければいけないため、ある程度のリスクは取らなければいけなかった。

「いまは1株単位で購入できるようなサービスがありますし、手数料も安くなっているので、当時よりも恵まれている気がします。20万円くらいあれば50銘柄くらいには分散できるので、僕のような方法での株式投資であれば十分真似できるのではないかと思います」

「株価が低すぎるときに買う」と同じくらい重要なのが、「できるだけ長く保有すること」だという。

「僕個人の株式についての捉え方は『株式=企業の所有権』だと考えているので、株価という表面価値が上下したとしても、その企業の本質的な価値が変わらないのであれば持ち続けたいと思っています。その結果、ほとんどの企業の株価が上がっているんですよね。長期的に保有して配当金などを再投資すると、複利で増えるという効果も期待できます。

僕は本当に凡人だけど、ずっと市場に居続けたことで資産が増えました。リーマンショックやコロナショック、トランプ関税ショックで市場が荒れても離れなかったのがよかったんでしょうし、情報を集めて企業のことを知っていくと持ち続けよう、市場に残ろうって思えるんですよね」

株式投資のコツは「投資を好きになること」

株式投資を始めてから現在まで、働きながら資産運用を行っているなごちょうさんに両立のコツを聞いた。

「コツといえるかわかりませんが、僕の場合は貸借対照表や決算書を見て情報を集め、企業や業界の今後を予想するようになってから、だんだん情報収集が楽しくなってきたんですよね。もちろん予想が当たるときもあれば外れるときもあるんですけど、自分の予想と照らし合わせたり企業の情報を見返したりしているうちに、ワクワクしてくるんです」

いまや企業の情報を集める作業は日常の一部であり、「娯楽のひとつ」と言えるほどになっているそう。

「映画を見たりゲームをしたりするのと一緒で、僕にとっては情報収集が娯楽なんですよね。ドラマ好きの人が連続ドラマの放送日を楽しみにしているのと同じように、僕も決算が出る日を待っている感覚です。決算書って、通信簿を見るようなドキドキ感があるんですよね。保有していない企業の情報を見るのも好きで、旅行している間でもついTDnet(適時開示情報伝達システム)などで情報を追っちゃいます(笑)」

なごちょうさんの周囲の個人投資家も同じように娯楽の一環として情報収集している人が多く、「株式投資を楽しんでいる人で、損している人は見たことがない」と話す。

「多くの投資家が『投資を嫌々やっているうちはダメ。投資を好きになることが大事』と話しています。決算書を読まなきゃいけないという義務感で読んでいる人と早く決算書が出ないかなって楽しみにしている人では、モチベーションが大きく変わってきますよね。投資で成功しようと考えるより、まずは思うようにやってみて結果を楽しむというスタンスで臨むと、少しずつ投資を好きになれるのではないかと思います」

株式投資の第一歩は「身近なお店や製品」

「投資を好きになる」という第一歩を踏み出すため、株式投資を始めたいものの、どんな銘柄から手を付けたらいいかわからないという人は多いだろう。

「全米No.1ファンドマネージャーといわれているピーター・リンチは『まず身近なところから投資するといい』と言っています。

例えば、好きでよく行く外食チェーンがあるなら、そこの企業を調べてみる。普段使っている化粧品や洗剤などを製造しているメーカーもありです。その製品や企業に関しては、あらゆる業界に広く投資している機関投資家よりも自分のほうが詳しい可能性が高いといえます。好きな企業の情報であれば決算書などの資料を読むのも楽しく、『こんな事業でも利益を出してるんだ』という意外な発見もあるでしょう。その企業に将来性を感じ、さらに株価が低すぎると感じるのであれば、株を買うという第一歩を踏み出せるはずです」

気になる企業を調べていくと保有したいと感じる銘柄が増え、さらにその企業や業界の情報を集めるようになるという好循環が生まれる。

「僕は200以上の銘柄を保有していますが、実はマクロ経済に関しては全然詳しくありません。ただ、いま保有している銘柄だけでなく、気になる銘柄や過去に保有していた銘柄の情報も見ていると、各業界の動きみたいなものも見えてくるんです。あの国が安い製品を流しているから、この業界は今後ちょっと苦しいかもしれないといったことがわかってくるんですよね。だから、最初から全体を把握している必要はなくて、まずは身近なところから始めていくのでいいと思います。“木を見て森を知る”みたいなイメージでしょうか」

さまざまな数字や指標を参考にしながらも、「投資を好きになることが成功のコツ」と、一番大切なことを教えてくれたなごちょうさん。好きな製品やよく行くお店を手掛けている企業をチェックするところから始めてみよう。

(取材・文/有竹亮介)

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