充実している夫婦は「将来」だけでなく「いま」も大切にしている...の画像はこちら >>


将来に向けてお金を備える際、直近の支出を見直してできる限り節約し、貯蓄や運用に回そうと考える人は多いだろう。実はこの考え方、注意が必要だという。



『一度始めたらどんどん貯まる 夫婦貯金 年150万円の法則』(青春出版社)の著者で1級ファイナンシャル・プランニング技能士の磯山裕樹さんは、「お金について考えるときには『将来だけ』を見るのではなく、『いまと将来のバランス』を見ることが重要」と話す。なぜ、「いま」のことも考えたほうがいいのだろうか。

人生のなかでできる体験には「賞味期限」がある

「お金について相談に来られる方には、『人生のなかでできる体験には賞味期限がある』と伝えています。一般的に『お金は使わずに、貯めるべき』という考え方がよしとされていますが、将来のために貯めたお金もいずれは使うので、すべて使うお金だといえます。そう考えると、なんとなく将来に向けて貯めるのではなく、『いま使うお金』と『将来使うお金』をきちんと区別したうえで、いましかできないことにもお金を使うことが大切ではないかと思うんです」(磯山さん・以下同)

かつて磯山さんが旅行会社に勤めていた頃、60代夫婦のハワイ旅行に同行したことがあった。旦那さんに持病があり、標高の高いマウナケア山での星空観測ツアーに参加できなかったときに、夫婦で「子どもが独立したら2人で旅行しようと考えていまになったけど、もっと若いときにお金を使って来たらよかった」と話していたそう。

「20~30代の間は『いまはお金を貯めて、定年退職したら世界一周旅行をしよう』と考えていても、いざ60~70代になって実現できるかというと、その気力も体力もないかもしれません。そうなるのであれば、いま頑張って稼いだお金を自分や家族に使うことで思い出や経験が増えますし、その体験を活かすことでよりよい仕事に就けたり収入が上がったりする可能性も出てきます。使うことが悪いことではないんだと、知ってほしいですね」

将来の計画は、家族の希望によってその都度変わっていくもの。変わったタイミングで、お金の使い方や備え方を見直していくのも大切だ。

「うちの話ですが、小学5年生の長男が卓球をやっていて、『成績がよければ、県外の強豪校に進みたい』と言っているんです。僕らは岡山に住んでいるんですが、県外の中高一貫校に入り、そのまま東京や大阪の大学に進学、就職するとしたら、長男と一緒に暮らせるのはあと2年もないかもしれない。だから、小学生のうちにいろいろな経験にお金を使おうという方針に変えました。

将来に向けて備えることも大事ですが、家族を含めた大切な人たちのためにお金を使うことも考えると、人生の充実度は上がるのではないかと思います」

家計改善のコツは「全体的に一気に見直す」

家族のために使うお金を確保するには、現在のお金の使い方を見直す必要も出てくるだろう。まずは、何から始めるといいだろうか。

「効果が大きいものから手を付けていくと、モチベーションが上がります。保険や携帯電話料金、住宅ローン、税金などです。保険を見直したり携帯電話のキャリアや料金プランを変えたりすると、効果が実感できるので、細かな部分を見直すやる気が出てくるでしょう」

ただし、家計の見直しにあたっては重要なポイントがあるという。「部分的に見直す」のではなく「全体的に一気に見直す」ことだ。

「保険は保険会社、住宅ローンは銀行、投資は証券会社と、それぞれ異なる窓口で相談や契約を行う形になっているので、別々に考えてしまいがちです。しかし、すべて家計につながっているものなので、全体的に考えていかないと、なかなか理想的な家計になりません」

そうはいっても、保険や住宅ローン、投資に関することまで、すべての知識を頭に入れて総合的に考えるのは、なかなかハードルが高いだろう。

「もともと家計や資産運用に関心が高い方はできるかもしれませんが、多くの人は苦手意識を抱いている分野ですよね。難しいと感じる場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)などのお金の専門家を頼りましょう」

磯山さんもかつてはお金に関する知識がほとんどなかったため、勉強も兼ねてFPを頼ったそう。

「相談料が10万円くらいで、当時かなり驚いた記憶があります。でも、そのFPさんは保険会社や証券会社などの商品の契約をゴールにするのではなく、僕の家族の幸せをゴールに設定して家計全体を見直してくれたので、納得のいくプランができあがったんです。僕も同じようにお客さんの幸せを一緒に目指す仕事がしたいと思って、豊かで幸せに生活できる家計を実現するFPを志しました」

安心して相談できる専門家を見つける方法

現在はさまざまな家庭の相談に乗っている磯山さんだが、過去には20人以上のFPに相談した経験がある。

そのなかで見出した「いい専門家」の見つけ方を教えてもらった。

「第一に伝えたいのは、『無料相談は要注意』ということです。気軽に相談できる場ではありますが、無料で対応できるのは、別の部分で収入を得ているからだといえます。保険や投資商品などの販売手数料が収入源かもしれないため、相談をした結果、よくわからずに保険や投資の契約をしてしまうということもないとはいえません。セミナーでも、参加無料なうえにケーキが出てきたりお肉がもらえたりするものもありますが、その分だけお金がかかっているわけですし、お土産がないと集客できないという裏事情もあるかもしれません。甘い言葉につられないよう、注意しましょう」

「タダより高いものはない」ということだ。つまり、相談料を設定している専門家のほうがいいのだろうか。

「有料で相談を受けるということは、金融商品の販売手数料などに頼る必要がなくなるので、公平な目線でアドバイスしてくれるでしょう。また、直に料金を受け取る分、専門家は相応の責任を負うことになるので、より真剣に取り組んでくれるといえます。また、相談する側としても、相談料を払うからにはしっかり見直したいという覚悟のようなものができるので、取り組み方も変わってくると思います。無料か有料かという点は、ひとつの判断材料になるでしょう」

「ただし、無料相談を受け付けている専門家のなかにも親身になってくれる人がいる一方、有料相談でも理想と異なる形になるケースはある」と磯山さんは話す。大切なのは、複数の専門家を比較すること。



「相談する専門家によって出てくる答えが変わるので、無料・有料問わず、少なくとも2~3人に相談してみてほしいと思います。その際は提案内容を聞くだけでなく、その専門家の収入源や提案してくれた商品、運用方法などを自身でも実践しているかといったことも聞いてみるといいでしょう。その受け答えによって、信用度を判断できるはずです」

専門家を選ぶときに、もうひとつ重要なのが「相性」だという。

「お金の相談では家計をすべてさらけ出す必要がありますし、多くのケースで3カ月~半年ほど、定期的に話す場を設けていくことになるので、なんとなく相性がよくないと感じる人だと負担になってしまいます。何気ない態度や話すテンポ、言葉遣いなどを見て、『この人なら安心できる』と思える人を見つけられると、相談しやすくなりますし、一生のお付き合いになるかもしれません。そのためにも、まずは複数の専門家に話を聞いてみてほしいと思います」

家計は、今後ずっと向き合っていかなければいけないもの。心を開いて相談できる相手を見つけることで、「いま」と「将来」のバランスを見ながら、無理せずお金と付き合っていけるだろう。

(取材・文/有竹亮介)

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