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「老後2000万円問題」がニュースで取り上げられたり、NISAやiDeCoという制度ができたり、日々物価が上がっていたりと、お金について考える機会が増えたと感じる人は多いのではないだろうか。

そのなかで、いま重視されているのが「金融リテラシー」。

お金に関する知識や判断力を意味する言葉で、経済的に自立し、よりよい生活を送るために欠かすことのできないものといわれている。

現代を生きていくうえで、なぜ「金融リテラシー」が必要とされているのだろうか。『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』(徳間書店)の著者で、元ゴールドマン・サックス投資部門日本共同統括という経歴を持つ田中渓さんに聞いた。

インフレ下で生活水準を維持するために必要な知識

金融リテラシーを身に付ける方法は「ビジネスの想像」と「少額投資」


「過去30年間は、そこまで金融に関心がなくても生きていける時代だったと思います。日本全体がデフレの状態で、社会はそこまで明るくないけれど、企業が頑張って値下げ競争を行ったことで、みんなが好きなものを選んで暮らせる時代だったからです」(田中さん・以下同)

しかし、デフレの時代は終わり、日本社会はインフレに突入。物価が継続的に上がり続けている。

「30年ぶりにインフレを実感している人は多いでしょう。ただし、それは物価に関してだけかもしれません。自分の給料はほとんど変わらない、ないしは緩やかに上がる程度。一方で、物価はものすごいスピード感で上がっている。この状況が続くと、給料が相対的に目減りしている状態になってしまうといえます」

アメリカは過去20年間で物の値段が約2倍となった。日本でも同じ状況になると想定すると、どのようなリスクが考えられるだろうか。



「現在の日本の平均年収は450万円ほど。そのまま物の値段だけが倍になると、平均年収は現在の価値で225万円程度になるのとほぼ同義といえます。つまり、このまま何もしないでお金を寝かしておくことはリスクである、ということを理解しなければいけません」

インフレ下で生活水準を維持するための方法を知り、実践するためにも、金融リテラシーが必要になるのだ。

「金融リテラシーを身に付けて動いた人と動かなかった人では、結果に大きな差が付くといえます。例えば、利益が利益を生む『複利』の仕組みを理解していれば、仮に『1日1%プラスになる運用方法』があった場合にすぐ取り入れられるでしょう。1年間100円を1日1%で運用すると101%の365乗となるので、3780円になります。逆に、1日マイナス1%で運用すると、99%の365乗で3円。明らかな差がありますよね。つまり、今日からでも動き出し、効果の時計を進ませることができれば、未来は大きく変わるというわけです」

金融リテラシーを身に付ける方法は「ビジネスの想像」と「少額投資」


もうひとつ、金融リテラシーを身に付けるべき理由があるという。

「情報化社会となったうえにSNSも普及し、正しい情報を選びにくくなっていますよね。大規模な詐欺だけでなく、寸借(すんしゃく)詐欺っぽいものも含めていろいろな人が小さく小さく搾取するような話が出てきているので、何の知識もなく資産運用の方法を探すのは、装備なしで戦場に出ていくようなものです。正しい情報を見極めるためにも、金融リテラシーが必要だといえます」

詐欺の話ではないが、田中さんが金融リテラシーを身に付けていたことで損をせずに済んだエピソードを教えてもらった。



「かつて、MIXIやグリー、ディー・エヌ・エーなどのWebマーケティングを行っていた会社が、こぞってゲームを開発し始めた時期がありました。当時、アイテムがランダムで手に入る『ガチャ』というシステムがブーム化して盛り上がったのですが、景品表示法で規制がかかり、各社の株価が一斉に下がったんです。ここで金融知識がないと『この業界はダメだ』と損切りをして、大きな損失を抱えて終わってしまいます。しかし、金融の基礎的な知識を持って各社の情報を見ることができれば、『ガチャ』をほとんど導入していなかった会社があることがわかり、その会社は早々に回復するという予測を立てられます。実際に私もその会社の株式を持ち続け、結果的に株価が回復し、利益を出すことができました。知識があるかないかで、差が付くひとつの例です」

(さらに…)

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