2025年11月28日、東京証券取引所は2025年版のETF受益者情報調査結果を公表しました。これによると、ETF(上場投資信託)・ETN(上場投資証券)の受益者(投資家)が初めて200万人という大台を突破しました。
そもそもETF受益者情報調査とは?
ETF 受益者情報調査(以下、「本調査」)は、ETF・ETNの保有状況を明らかにするために全国の証券取引所が共同で実施・公表しているものです。「受益者」という言葉になじみがない方も多いと思うのですが、細かい話をすると、ETFやETNの法律上の位置づけが「受益証券」のため、それら受益証券を持っている人を「受益者」と呼んでいます。投資家、保有者と意味合いは同じです。
本調査は2012年7月から毎年公表しており、今年の調査対象は、2025年7月末時点で全国の取引所に上場しているETF及びETN 352銘柄。近年、ETFの新規上場が相次いでおり、昨年に引き続き過去最高の銘柄数を更新しました。調査には一部対象外の銘柄(外国籍ETF等)があるため、気になる方は本調査の末尾に記載されている調査要綱をご覧ください。
受益者の集計ですが、各銘柄の受益者数を単純に合算した「延べ人数」であり、いわゆる「名寄せ」が行われていないため、こちらも注意が必要です。例えば、Aさんが一人でETFを10銘柄持っていた場合、本調査では受益者が10人とカウントされることになります。
調査でどんなことがわかるの?
主に所有者の属性別に、様々な角度から調査を行っています。属性は大きく分けて(1)政府・地方公共団体、(2)金融機関、(3)証券会社、(4)事業法人等、(5)外国法人等、(6)個人・その他の6種類。金融機関のなかに都銀・地銀、信託銀行、保険会社等々、さらに細かいカテゴリーに分かれています。
調査結果で特に面白いのは、カテゴリー別の受益者数です。日本株(市場別)、日本株(市場別以外)、外国株、国内債券、外国債券、国内REIT(不動産投資信託)、外国REIT、コモディティ、レバレッジ・インバース型(内国)、レバレッジ・インバース型(外国)、レバレッジ型・インバース型(債券)、その他、ETNと、ざっくりとした連動対象のカテゴリー別の受益者数や受益権口数、純資産総額が公表されており、昨年との比較も出ていますので、どのカテゴリーで増えたのか、あるいは減ったのかが一目瞭然です。
ちなみに、REITというのは、REITそのものではなく、REIT関連指数に連動するETFのこと。
なお、昨年調査から新たに「レバレッジ型・インバース型(債券)」のカテゴリーが追加されており、全体のカテゴリー数が12から13となりました。
調査はPDF 20ページ以上のボリュームで、少々とっつきにくいですが、最初の1,2ページに調査結果の概要が記載されていますので、そちらを読むだけでもおおよその傾向がわかります。
2025年7月ETF受益者情報調査結果
今年の注目ポイントは?
編集部の私見ですが、受益者数が200万人、特に個人受益者だけでも200万人を突破した点は注目に値します。
ETF受益者数推移、個人の純資産総額推移
例年、ETF受益者の97%以上は個人ですが、2016年の個人受益者数83.6万人をピークにしばらく減少・停滞気味でした。受益者数は、様々な要因で増減するため、単年度ごとに一喜一憂するのではなく、長い目で見て増加していくことが望ましいと捉えていますが、2020年に4年ぶりに過去最高を更新したのを皮切りに、2021年には個人だけで受益者数107万人と100万の大台を初めて突破、以降順調に受益者を増やし、今年は個人法人含む全受益者の合計で209万人、個人受益者数だけでも204万人と、6年連続で過去最高を更新しています。
では、どんなカテゴリーで受益者数が伸びたのか、詳しく見てみましょう。
カテゴリー別の個人受益者数2024-2025比較
一番受益者が多かったのは、「外国株」カテゴリーでした。2024年も2023年に比べて43%増加しましたが、今年はさらに前年比45%増加し、個人受益者数は58万人となりました。
次に多かったのは日本株(市場別以外)。前年比25%増加で個人受益者は38万人となりました。ちなみに、「日本株(市場別)」は、例えばTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価(日経225)など日本の代表的な株価指数に連動するETFのこと。
従来、日本のETFで受益者が圧倒的に多いのは、「日本株(市場別)」、「レバレッジ・インバース型(内国)」でした。2025年調査においてもそれぞれ25万人の受益者となっており、全体カテゴリーの中では引き続き多いものの、「レバレッジ・インバース型(内国)」は今回13あるカテゴリーのなか、唯一昨年比で受益者が減少しています。
レバレッジ・インバース型ETFは、その商品特性から長期投資には向いていないため、数年前はETF投資家=投資上級者のイメージが少なからずありました。そんななか、従来「コモディティ」よりも受益者数が少なかった「外国株」が2021年にカテゴリー2位に上り詰め、以降順調に受益者数を伸ばし、2023年調査からは堂々のカテゴリー1位をキープしています。
「日本株(市場別以外)」についても、2023年調査のカテゴリー順位は「コモディティ」に次ぐ5位でしたが、2024年は前年比166%増という驚異的な伸びをみせて受益者が30万人となり、今年同様、カテゴリー2位に踊りでました。着実に潮目が変わってきていると言えるのではないでしょうか。この2つのカテゴリーは新規上場も活発に行われており、今回他のカテゴリーの調査対象銘柄がほとんど変わらないなか、「外国株」は9銘柄、「日本株(市場別以外)」は11銘柄増え、それぞれ合計で73銘柄、86銘柄となりました。
従来の主力商品であった「日本株(市場別)」や「レバレッジ・インバース型(内国)」だけでなく、それ以外のETFについてもジワジワと認知が拡大し、個人投資家の方々に選んでいただけているようです。
日本のETF全体の純資産総額については、前年比5兆4,772億円(6.2%)増加の93兆7,807億円となり、調査開始以来、16回連続で最高を更新し続けている状況となっています。銘柄の新規上場もここ数年活発になっており、日本の個人投資家の間で着実に広がりを見せつつあるETF。規則改正により2023年9月から新しく登場したアクティブETFや、NISAの成長投資枠対象のETF・ETNなど、是非チェックしてお気に入りのETFを見つけてみてくださいね。
また、その際は、ETF・ETN銘柄検索も是非ご利用ください!
(東証マネ部!編集部)

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