【格言かぶオプコラム】第9回：山高ければ谷深し

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相場格言というのは、相場が静かなときよりも、にぎやかなときほど胸に刺さるものが多いように思います。その代表格が、「山高ければ谷深し」です。

株価が上がっている最中というのは、実に楽しいものです。ニュースを開けば高値更新、証券口座を見れば含み益。「まだ上がる」「調整はあっても軽いはず」といった強気の見方が、相場を支配します。

この強気がもう一段階進むと、「持たざるリスク」などという言葉も聞かれるようになります。株を持っていれば得られたはずの利益を、持たないことで逃してしまう―そんな「機会損失」を指す言葉です。最近では、株価が急騰する局面で、周囲が儲けているのに自分だけが乗り遅れてしまうことへの不安を表す 「FOMO（Fear of Missing Out）」 という言葉も、見かけるようになってきました。

ところが、歴史を振り返ると、大きな下落の多くは、誰もが強気で、下落を疑うこと自体が場違いに思われるようなときに起きています。

山を登っている最中、人はなかなか高さを意識しません。頂上に立って初めて、「ずいぶん高いところまで来たな」と気づくものです。そして、足を踏み外した瞬間に谷の深さを思い知らされる―そんな事態は、できれば避けたいものです。

2025年、日経平均株価は1月6日の始値39,945.42円から始まり、11月には高値52,636.87円をつけました。

さて、今の相場はまだ山の中腹なのでしょうか。それとも、すでにかなり高いところまで登ってきているのでしょうか。この先の相場に思いを巡らせるとき、「山高ければ谷深し」という格言が、ふと心のどこかで聞こえてきます。

もちろん、株価が上がっているときに「そろそろ大きな下落が来る」と言うのは簡単です。しかし、実際にポジションを減らしたり、まだ下落してもいない段階で空売りをするのは、決して容易ではありません。そこで考えたいのが、当たっても当たらなくてもいい備え、すなわちプット・オプションの買いです。

プット買いは、「株価が大きく下がれば利益が出るが、下落が起きなかったとしても、大きな損失にはならず、小さな諦めで済む」ポジションです。プットを買った後に株価がさらに上昇すれば、プットの価値は下がりますが、その損失は、あらかじめ想定された範囲内に収まります。一方で、「山高ければ谷深し」が現実になったとき、プットは一気に存在感を発揮します。その例を見てみましょう。

今年2025年、大きな値上がりを見せた銘柄の一つがソフトバンクグループ（9984）です。同社はAI分野に巨額の投資を行っており、世界的なAIブームを追い風に株価は急騰しました。年初には10,000円を下回っていた株価が、10月末には高値27,695円を記録し、年初から見るとおよそ3倍という水準まで上昇しました。

ところが、その後の下落もまた急でした。11月末には株価は15,000円台まで下落し、高値からの調整幅は非常に大きなものとなりました。まさに「山高ければ谷深し」という格言を地で行く展開です。仮に100株を保有していたとすれば、評価額は270万円から150万円へと、一気に目減りした計算になります。

そこで、ソフトバンクグループの株価が25,000円を超えてきた10月28日に、11月限行使価格24,000円のプットを680円で買っておいたとしましょう。オプションの満期日である11月13日、ソフトバンクグループの株価は21,170円で取引を終えました。

もしプットを買っていなければ、25,000円を超えていたころの含み益は、その後の下落とともに絵に描いた餅、水の泡になっていたことでしょう。しかし、プットを買っておいたことで、保有株を24,000円で売却することができ、結果として大きな下落の中でも一定の利益を守ることができました。

この例のように、「ずいぶん高いところまで来たな」と感じたときは、プットをこっそり忍ばせておく。

相場には山もあれば谷もあります。ときには熊が顔を出すこともあるでしょう。そんなときこそ、「かぶオプ」の出番です。いざというときに役立つ「かぶオプ」を味方に、様々な局面を乗り越えてゆきましょう。

今年も「かぶオプコラム」をお読みいただき、ありがとうございました。どうぞ、良い年をお迎えください。

（提供元）株式会社シンプレクス・インスティテュート

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