1億円の資産を、投資で2.5億円に増やした人がいます。お笑い芸人のオモロー山下さんです。
投資を始めた2022年は「最悪の年だった」
――山下さんはかつて「ジャリズム」というお笑いコンビで活動し、解散してからはピン芸人になりました。どのようなきっかけで投資を始めたのでしょうか?
山下 自分がプロデュースしたうどん事業が成功したのが最初のきっかけです。私は2012年に「山下本気うどん」といううどん屋を開店しました。途中からフランチャイズ運営に移行し、順調に店舗数を拡大していきました。2021年10月には、商標権も買い取っていただいたんです。
これによってまとまったお金が入り、これまでのうどん事業で稼いだお金と合わせて1億円ほどになりました。その中で「投資をした方がいいな」と思ったのです。
――なぜそう考えたのですか?
山下 もともと投資に興味があったわけではありません。貯金もすべて普通預金に入れているだけでした。
その中でふと浮かんだのが、昔どこかで聞いた「投資とはお金自身に働いてもらい、資産を増やすこと」という考え方です。利子がこれだけ低いなら、投資せなあかんな……と思い始めました。ちょうど同じ頃、あっちゃん(オリエンタルラジオの中田敦彦さん)のYouTubeで投資について説明している回を偶然見て。これは「絶対にやった方がいいな」と思ってチャレンジしたのです。
――最初はどんな商品に投資を?
山下 まずはNISAを活用して、投資信託やETFを買うところからスタートしましたね。本などでいろいろ勉強して、S&P500やNASDAQに連動する商品など、米国市場のインデックス投資を中心に行いました。手数料が低いということで、「バンガード・S&P500 ETF(VOO)」あたりを購入しましたね。個別株は難しいと聞いていたので、知識のないうちはあまり手を出すものではないと思っていました。
本格的に資産運用をスタートしたのは2022年です。ただ、この年が最悪だったんですよ(笑)。
――ということは、運用成績も……。
山下 もちろん大きくマイナスです(笑)。しかも私は「ナンピン」していったんです。つまり、株価が下がったら買い増す。これを続けたら、どんどん株価が下がってマイナスも増えていきました。
だんだん怖くなって、最終的には一切の情報を見なくなりました。現実逃避ですね(笑)。投資に使う予定だった資金もすぐに尽き、買い増すのも止めました。資金の3割は現金で残したいと思っていましたから、これ以上は投資しないと決めました。
ただし、今までに買った銘柄は売らずにほったらかしていたんです。
――株価が下がっている時に「損切り」せず、持ち続けてよかったですね。
山下 本当ですよ。よく「投資家は損切りできなければダメ」と言われますが、それは状況によりますよね。デイトレードや短期投資では、一定の値下がりをしたらサッと損切りしなければいけないと思います。でも長期投資の場合は、値動きに左右されず、放っておく方がいいこともある。むしろそれが長期投資の基本ですよね。
生活防衛資金と趣味、2つを使い分けた運用スタイル
――今はどんな考え方で資産運用をしているのですか?
山下 絶対的に強いのはインデックス投資だと思っています。
「投資の神様」として知られるウォーレン・バフェットも、もし自分が死んだら、「運用資金の9割をS&P500に、残り1割は短期国債を買うように」と奥様に伝えているのは、有名な話ですよね。
特にこれからは、NASDAQのインデックスに注目しています。NASDAQはITやテクノロジー系の企業が数多く上場している市場です。代表的な100銘柄を集めた「NASDAQ-100」の指数を見ると、2010年以降はS&P500のパフォーマンスを大きく上回っていますよね。今後、少なくとも10年はAIの進化が続くと見ているので、その関連企業が多いNASDAQは変わらずに優位だと思います。
――ということは、現在はインデックス投資がメインですか?
山下 そう言いたいところですが、実は個別株にかなり投資しています。全体の中でインデックスの割合は15%ほど、残りは個別株ですね。自分の年齢を考えると、少なくとも5割はインデックス投資にしておくべき。そう思って徐々に割合を変えようとしているのですが、なかなか進んでいません(笑)。
――投資を始めた頃は「個別株にはあまり手を出さない」という方針でしたよね。
山下 はい。でも徐々に個別株投資をやるようになると、とにかく面白いんですよね。だからついつい金額を増やしてしまう(笑)。決して個別株の運用成績がいいとか、大きな成果が出ているというわけではないんです。今のところ、個別株もS&P500と同じくらいのパフォーマンスになっていますが、それは相場の地合いがいいから。いつまでも続くとは思っていません。インデックス投資の比率を上げた方が賢明でしょうね。
ただし、こういった計算もしています。私は今、iDeCoと新しいNISAを合わせて毎月14万3000円をS&P500に積み立てています。内訳ですが、個人事業主なので、iDeCoは月6万8000円まで掛けられる。新しいNISAについては、つみたて投資枠と成長投資枠の合計1800万円があるので、それを20年で使い切るとすると、月7万5000円投資ができます。これらを合わせると、月14万3000円になります。
S&P500の年率リターンは、過去60年の平均で10%ほど。仮に毎月14万3000円を利回り10%で20年間積み立てると、1億円を超える計算になります。もちろんこの通りに行くとは限りませんが、最低限この積み立てをしておけば、それ以外のお金で個別株を楽しんでもいいかなという考えです。
個別株投資は本当に難しいので、あくまでこういう「余裕資金」でやらないと痛い目に遭うと思っています。自分の老後を支える資金は最低限積み立てておいて、残りのお金で趣味的に個別株を楽しむ。そんな投資スタイルになっていますね。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2025年12月現在の情報です

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