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日銀が2025年12月の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%から0.75%に引き上げた。約30年ぶりの高水準となった政策金利を受けて、長期金利も2%超に達し、預金金利や住宅ローンの金利なども上昇傾向になっている。



そのなかで、投資対象としての注目度が上がってきているのが「国債」だ。公共事業や教育費などの資金調達を目的として日本政府が発行する債券で、購入者は半年ごとに利子を受け取ることができ、満期になると元本が戻ってくる。受け取る利子の額を決める金利も上がってきているため、「国債」が見直されているのだ。

「国債」とほかの金融資産との関係や金利の変動について、『はじめての日本国債』(集英社新書)の著者である経済学者・服部孝洋さんに聞いた。

「債券」と「株式」を比較するポイントとなる「金利(利率)」

『はじめての日本国債』著者が解説!「国債」の特徴と効果


資産運用と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのは『株式』ではないでしょうか。運用対象は、そのほかに『国債』や企業が発行する債券を指す『社債』などがあり、これらはすべて有価証券と呼ばれるものです。皆さんは、どのような基準で資産形成に用いる有価証券を選択しているでしょうか」(服部さん・以下同)

基本的な話だが、「株式」に投資すると、その企業の利益に応じて配当が支払われ、成長して株価が上がればキャピタルゲイン(売買差益)を得ることができる。高いリターンを得られる可能性があるものの、元本割れするほどの損を抱える可能性もあるのだ。一方、「国債」での運用は、元本割れする可能性が限りなく低い。

一般的には、リスク・リターンの大きさで投資先を判断することが多いだろう。比較的リスク・リターンの小さい「国債」、リスク・リターンの大きい「株式」、その中間程度のリスク・リターンと考えられる「社債」のなかから、投資に対する考え方や求める成果に応じて選択していくはずだ。

服部さん曰く、「それぞれの金利に注目することで、より具体的な判断ができるようになる」とのこと。

『はじめての日本国債』著者が解説!「国債」の特徴と効果


「社債を発行している企業として、ソフトバンクグループを例に考えてみましょう。

2025年11月から12月にかけて募集がかけられていたソフトバンクグループの社債の金利は、年3.98%となっていました」

つまり、ソフトバンクグループの社債を購入すれば、年3.98%の利子が入ってくるものと考えられる。

「『社債』の金利を見ることにより、『株式』から期待されるリターンが年3.98%以下なのであれば、『株式』で運用する理由がないという判断につながります。投資家は、リスクが高ければそれに応じたリターンを求める傾向があるので、『株式』から期待されるリターンが『社債』の金利より低ければ、『株式』を買いたいと思う人は少ないでしょう。“期待されるリターン”と表現しましたが、事前で見た場合、『株式』に投資するならリターンが『社債』より高いと期待していなければ、投資家は買う理由が乏しいということをいっています。結果的に株価が下がるということがある点には、注意をしてください」

服部さんの書籍では強調されているが、新聞などで金利という表現を見たとき、「金利とは、『国債』などの債券を保有し、最後まで持ち切ったときの『(年率の)リターン』」と理解することが大切とのこと。

「ある債券を持っていると毎年1円もらえて、5年後には1円と元本である100円が返ってくるとします。この債券を90円で買うのと100円で買うのでは、リターンが異なります。当然、安く買ったほうがリターンが高いわけです。ほかの有価証券などとの比較を容易にするため、債券では年率のリターン(金利)に直して評価するのですが、これが金利です。新聞などで『金利』という表現に出会った際、債券のリターンを示している点に注意してください」

リスクの大きさ=発行元の信用度

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では、「国債」と「社債」は、どのように比較することができるだろうか。

ちなみに、2026年2月に募集がかけられている個人向け国債の金利は「変動金利型10年満期」で年1.48%、「固定金利型5年満期」で年1.66%、「固定金利型3年満期」で年1.39%となっている。

「日本政府と民間企業、どちらのほうが破綻する可能性が低いかといったら、日本政府のほうが低いですよね。つまり、『社債』よりも『国債』のほうが安全性が高いといえます。

先ほどと同じロジックで、仮に『国債』と『社債』が同じ金利であれば、『社債』を買いたいと思う人はいません。したがって、『社債』を発行する企業は、投資家を説得するため、そのリスクに応じて高い金利の『社債』を発行する必要があるのです」

「債券」「株式」の発行元や金利に注目することで、それぞれのリスク・リターンがグラデーションになっていることを実感しやすくなるという。

「日本政府よりも民間企業のほうが破綻する可能性が高いから、資金調達を行う際、高い金利を付けなければ購入してもらえないというロジックでプライシングされていることがわかると、さまざまな資産がリスクとリターンのグラデーションと見えてくると思います。そして、そのなかでもっとも安全な『国債』のリターンが、そのグラデーションを考える際の軸になります。すべての資産が、『国債』に対してどのくらいのリスクがあるかという形でプライシングされている。このように考えると、『株式』や『社債』に投資するにも、その軸になる『国債』を勉強しなければならないということに気付くはずです」

グラデーションのなかには「預金」も含まれる。もっとも元本割れする可能性は低いが、その分リターンも少ない。

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「先ほどのロジックでいくと、日本政府よりも民間銀行のほうが破綻する可能性が高いので、『預金』のほうがリスクはあるといえます。しかし、預金保険制度があり、預金者1人当たり1000万円までは保護されます。裏を返すと1000万円を超える部分は保護されないということです。ある程度資金がある人に関しては、預金に置いておくよりも『国債』を買ったほうがリスクは低い、という考え方もできるでしょう」

金融政策などの影響を受ける「金利」の動き

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「株式」や「社債」と「国債」が密接に関係していることがわかったが、そもそも「国債」の金利はなぜ変動するのだろうか。

「実は、証券会社がつくるマーケットを通して、満期を迎える前の『国債』の売買を行うことができます。

簡単にいうと、メルカリのように、中古の『国債』を売買できるプラットフォームがあるというイメージです。この市場は流通市場と呼ばれており、『国債』の場合、主に銀行や生命保険会社などのプロの投資家(機関投資家)を主軸にした市場です」

このように中古市場を考えると、「国債」の価格と金利の関係が明らかになる。「国債」を含む債券の世界では、金利と価格が逆に動くことは難しいといわれるが、そのロジックは次のようなものだ。

例えば、読者が金利1%の「国債」を持っていたとする。その後、日銀の利上げにより金利が上昇して、金利1.5%の「国債」が市場に流通したら、読者が持っている1%のリターンの「国債」を買いたいと思う人はいないだろう。投資家を説得するためには、価格をディスカウントする必要が出てくる。100円で買ったものを99円にディスカウントすると、買い手から見れば、99円で買ったものが満期には100円で戻ってくるため、1円のキャピタルゲイン(売買差益)が生じる。読者がディスカウントするほど、このキャピタルゲインが増えるため、1.5%の金利に負けない魅力を持つところまでディスカウントすれば、購入希望者が出てくるという仕組みだ。

「中古市場(流通市場)と新規で『国債』を発行する市場(発行市場)は関連していると考えるのが大切です。財務省が新たに『国債』を発行するときには、マーケットで取引されている金利と同等またはそれ以上にしなければ、投資家は新規で発行する『国債』を買う理由がありませんよね。もちろん、ほかの資産も『国債』を軸にリターンが決まっているため、『国債』の金利の上昇は、ほかの有価証券にも影響を与えます。後編で個人投資家を対象とした『個人向け国債』の説明もしますが、その金利にも当然影響を与えます。

あらゆるものが『国債』の影響を受けるので、その動向を追っていくことは重要だといえます」

すべての金利の起点になっているといえる「国債」。後編では、「国債」を個人の資産運用に用いる際に知っておきたいことを伺う。

『はじめての日本国債』著者が解説!「国債」の特徴と効果


(取材・文/有竹亮介)

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