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暑くなってきましたね。午後の町に出るとプール帰りの小学生たちとすれ違うようになってきました。海や川にゆく予定が入っている方も多いのではないでしょうか。夏の動詞、「泳ぐ」の短歌を読んで一緒に言葉の海を泳ぎましょう。
躍(をど)り入り抜手切れどもここの海の渦巻く潮(うしほ)の力深しも
北原白秋(きたはら・はくしゅう)『雲母(きらら)集』
力強く海を泳ぐ一首です。遠泳をしているところでしょうか。
シャワー室にくりくり白き息子の尻水泳パンツを脱がせば跳ねて
佐佐木幸綱(ささき・ゆきつな)『瀧の時間』
父・幸綱が私の尻を描いた一首。日焼けした体と対照的な「くりくり白き」という色彩描写が鮮やかです。そして「跳ねて」とじっとしていない少年の騒がしい動きを結句に持ってきたことで一首に微笑ましさと躍動感を与えてくれます。
父には海やプールによく連れて行ってもらいました。文学的な意味とは少し外れますが、この歌は私にとっては父の視線を借りて愛情を確認できる楽しい一首でもあります。
仰向きて長く泳げば身に重く支ふるかたなき頭蓋と思ふ
古谷智子(ふるや・ともこ)『ロビンソンの羊』
水泳の得意な作者が背泳ぎをしている一首。
■『NHK短歌』2019年7月号より