男性は仕事、女性は家事など性別で役割を決める“性別役割分担”。地元での昔ながらの価値観が、若い世代のUターンを阻む要因となっている?新潟県が行った調査から若者の本音が浮かび上がった。

■若い世代に聞いた「性別役割分担でモヤモヤした経験は?」

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
NST新潟総合テレビ

「男性だから」「女性だから」と、性別で役割を決めつけられた経験はあるだろうか?新潟駅前で聞いた。

20代女性:
正月に家族の集まりがあると、母や私、女の人が率先して料理をやるような、何となくの空気感がある。

20代女性:
言葉遣いが荒いときに「女なんだからもっとちゃんとしなさい」と言われる。なんで「女だから」なのだろうと思う。

10代男性:
学校で重い荷物を運ぶときは「男子だけで」と言われることがある。女子にも手伝ってほしいのに。

10代女性:
大学を決めるときに「女性だから資格を取れる大学がいい」と言われたことがある。(資格がないと)妊娠・出産で困るのではないかと言われた。

(Q.それを聞いてどう思った?)
面倒くさいなと思った。

個人の能力ではなく、性別によって役割やあるべき姿を求められたという経験が語られた。

■生まれ育った地域で経験した「女性だから…」の役割分担

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
NST新潟総合テレビ

進学や就職を契機にした若年層の首都圏への人口流出が止まらない。

新潟県は若者・女性の県外流出の理由や背景にある意識などを把握し、県内定着に向けた施策に生かそうと、県出身の18歳から39歳の男女に意識調査を実施した(2025年11月実施・2026年2月公表/首都圏在住400人+県内在住400人が調査対象)。

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
新潟県知事政策局 白沢知美 男女平等・共同参画統括監(取材当時)

中でも注目したいのは、性別で役割を固定されることについて「生まれ育った地域で経験したこと」を尋ねた項目だ。

○地域や親戚の集まりで食事の準備やお茶出しは女性の仕事
○結婚や子どもを持つことは当然
○家事・育児・介護は女性の仕事

いずれの項目でも“新潟県出身で首都圏在住の女性”が「生まれ育った地域であった」と回答した割合が高くなっている。

新潟県知事政策局の白沢知美男女平等・共同参画統括監(取材当時)は、「今回は自由意見欄でも『新潟に戻りたいが、女性は家事・育児・介護を担うといった昔ながらの圧力が考えられるので、新潟に戻るつもりはありません』といった率直な声もいただいた」と、調査を通して明らかになった若者の本音に言及する。

■「新潟には帰らない」Uターンを阻む昔ながらの価値観

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
NST新潟総合テレビ

今回の調査では首都圏在住の県内出身者のうち約4割にUターンの意向があることも明らかになった。

その一方で、Uターンの意向のない約6割の中から「祖父母が古い価値観を持つため帰りたくない」「多様性の部分で東京のほうが過ごしやすいため帰らない」といった声が上がった。

白沢統括監(取材当時)は「残り6割(Uターン意向なし)の方をいかに減らせるか」を強調。

「新潟に戻りたいが昔ながらの価値観がネックであるならば、“そういった意識の解消”がUターンの割合を高めていくことにもつながる」と見ている。

■学生が考える…無意識の思い込み“アンコンシャス・バイアス”

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
清野栞里さん

昔ながらの価値観に基づく思い込みについて考えている学生が、新潟県新発田市の敬和学園大学にいる。

清野栞里さんと赤澤功汰さんだ。

新発田市が開催した市民講座でも「アンコンシャス・バイアス(無意識に形成される思い込み)」について発表した2人。

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
赤澤功汰さん

清野さんは、「簡単な例を挙げると、女は力が弱い。男は強くあるべき。最近の若者は根性がない。シニアはパソコンが苦手とか。実際には力の強い女性もいるし、力の弱い男性もいる。根性のあるお姉さんも、根性のないおじさんも、パソコンを使いこなす高齢者もいると思う」と語り、聴衆を引きつけた。



赤澤功汰さんは、人口減少の原因を考える中で、無意識に形成される思い込みについて言葉の観点から問題意識を持ったという。

「育児をする男性のことを特別視しているから“イクメン”という言葉がある。女性が育児をすることが当たり前の世の中になっているから“イクウーメン”という言葉がない。そのことがすごく疑問に思うというか、引っ掛かる部分だな思った」

赤澤さん自身は年長者から、「男なんだからくよくよするな」と言われ、とまどった経験がある。

「男性は強くなくてはいけないとか、弱いところを見せてはいけないとか、そう言われる経験が多くあり、大変だなと思った」と本音をにじませた。

■若い世代にも思い込みはある?

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
NST新潟総合テレビ

清野さんは発表で、日本の家父長制が無意識の思い込みにつながっているとした一方で、若い世代にも思い込みはあると考えている。

「結婚して名字を変える場合も、『結婚したら男性の方に名字を変えるんでしょう?』とか『女性の方に名字を変えるんだ』とか」と回想し、自身の思い込みに目を向けた。

清野さんは「様々な価値観があることを念頭に、自分と違う考えだからと過剰に反応しないことが無意識の思い込みを減らすことにつながる」と提案。

そして、「古き良き慣習はいいものもたくさんあるが、時代の変化に合わない場合もある。そうしたことを柔軟に変えていけたら良い社会になる」と願っている。

■“性別役割分担が当然”だった年代の本音

若者が性別役割分担の解消を求める一方で、新潟駅前では60代以上からも本音が聞かれた。

70代男性:
私の時代は性別役割分担があったし、自分自身にもそうした意識があった。今はそれが薄れてきている気がする。

60代女性:
私の頃は『男の子は大学に行って当然。

女の子はその次でいい』と言われ、第一に男性があったという世代。上の世代はそう思わされ、マインドコントロールされているわけなので、今さら急にコロッと価値観を変える訳にはいかないと思う。

この声は、「男性だから」「女性だから」と性別によって役割を求められてきたかつての時代を過ごした人たちの一つの本音だろう。

■専門家が語る“思い込みの集団を壊す”必要性

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
敬和学園大学 大岩彩子 准教授

こうした世代間の考え方のギャップは埋めることはできるのか。

市民性教育などが専門の敬和学園大学・大岩彩子准教授は、3つのポイントを挙げる。

1:性別役割分担の意識を持っている相手に対し「もしかしたら気付いてないんだろうな」「悪気はないんだろうな」と、受け取る側が理解すること。

2:「今の発言はよくないと思う」「今の言葉は傷ついた」と思いを伝えること。

3:「女性はお茶くみ」という雰囲気があれば、男性側が「僕もお茶を出せます」と手を挙げること。

大岩准教授は特に3について、「『女性だけがやらなくてもいいんじゃないですか』と行動し、“思い込みの集団”を壊していくこともできるのではないか」と強調する。

■“ジェンダーギャップ”の解消へ行政も本腰

「男性だから…女性だから…」と言われた経験は?性別役割分担がUターンを阻む… 若者の本音・中高年の本音を取材
NST新潟総合テレビ

性別役割分担などを含むジェンダーギャップを解消しようと、新潟県は2026年度、市町村の申請に基づいて100万円を上限とする交付金を交付。

住民や企業への働きかけなど、地域に即した事業を後押しする。

白沢統括監(取材当時)は、個人の意識に切り込むのは難しいとしながらも「今回明らかになった性別役割分担意識をはじめとしたジェンダーギャップの解消に、県としても本腰を入れて強化していく」と意欲を示す。

若い世代の人口流出が止まらない中、次の世代が生きやすいと感じる地域を目指すことは、その地域の未来のありようにつながっている。



私たちは今、当たり前だと思ってきた意識や価値観を見つめ直すタイミングにあるのかもしれない。

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