広告映像や、ショートフィルムを作って暮らしています。昨年末にTSUTAYA CREATORS’ PROGRAMで監督賞を受賞し、長編映画デビューが決まったので、それに向けた脚本を書いたりしています。
みなさんは自粛期間中、どんな映画を観ましたか?
観る映画を選ぶ基準として、とりあえず気になるものを観る、好きな俳優で選ぶ、興行的にヒットしている映画、友達のオススメ、色々な選び方があると思います。とにかくなんでもいいから映画に親しみをもって鑑賞することが重要なので、選び方は本当になんでも良いと思います。最近はAIでアルゴリズムされたものなど、レコメンドもかなり精度が高いので、個人的にはとても重宝しています。映画誕生からチャップリン時代まで
ではさっそく映画史を一緒に辿りましょう!第一回、第二回はかなりお勉強感が強いかもしれないですが、これを知っておくと、色々なクリエイターの頭の中を理解しやすくなるような気もします…!まずは映像の成り立ちから。映画(映像)はもともとは写真の技術の応用です。

1800年代後半、写真家エドワードマイブリッジが制作した連続写真や、連続する絵をかいて筒状にし、筒を回転させると絵が動いて見えるという錯覚を用いたゾーイトロープという技術が時間をかけて発展していき、発明家のトーマス・エジソン、リュミエール兄弟によって今の形の映像の基礎が出来ました。ちなみに世界最古の映像は1888年にフランス人の発明家ルイ・ル・プランスが作った『Roundhay Garden Scene』。

ジョルジュ・メリエスは元々は手品師で、現在の映像の礎ともなるような、たくさんの映像的なトリックを発見しました。彼が見つけた技術が、当時あまりにも流行した技術だった為、私たちの日常生活で目にするような映像表現も、実は彼が発見したものだったりします。例えば、オーバーラップやディゾルブといわれるような、フェードアウトと同時にフェードインする技術も彼が発見しました。

当時はまだ真新しかった映像トリックがふんだんに使われた『月世界旅行』は今みてもユーモアがあって飽きずに見れる作品です。1910年あたりになると、トーマス・エジソンが、自分が特許を持つ映画技術を勝手に使用しているとして、映画人たちを訴訟しはじめます。この特許戦争から逃れてきた映画人たちがアメリカのカリフォルニアへたどり着き、ハリウッドを作ったとも言われています。気候がよく、砂漠や森に囲まれた映画に適した条件が揃うハリウッドに移ったことにより、映画制作はより一層盛んに作られるように。バスター・キートンやチャールズ・チャップリンといったみんなも知っているような映画監督/俳優たちがこの時代から現れ始めます。

バスター・キートンとGoogle検索すると、「バスター・キートン イケメン」とリコメンドに出てきます。笑チャールズチャップリンやバスターキートンは自分で監督もしつつ、主演も務めていました。チャップリンで有名な作品は「街の灯」「モダンタイムズ」そして「独裁者」。この3作品は見ておいて損はない作品です。全てAmazonプライムにてご覧頂けます。「独裁者」の中のセリフで、「私は誰のことも支配したくない。出来る限り多くの人を救いたい。

時代とともに、映画の技術が発展していき、サイレント映画は姿を消し、トーキー映画という音声と映像を同時に再生する技術にとって変えられました。技術躍進の中で、失われつつあったサイレント映画で作品を作ろうと闘ったのがチャップリンです。トーキー映画が主流になる中、抵抗するようにサイレント映画で制作したのが『街の灯』と言われています。それでも時代に押され、モダンタイムズや独裁者は最後の部分だけ歌を歌ったり、セリフを喋ったりして、部分的にトーキー映画の技術を使ったようです。最近でも、2012年に公開されたサイレント映画で「アーティスト」が話題になりましたね。どの時代でもそうですが、いろんな監督がその時の映像技術を駆使して、どんなことが出来るのかを実験しています。そういった観点から映画を見るのもとても楽しいですよね。前述したアーティストのように映画の原点に戻るような作品もあったり。ちなみにこの時代、赤狩りと言われる共産主義への圧力によって、映画人がハリウッドから追放されるということも起こりました。
不況の時は映画産業が伸びる
この原稿を書きながら、少しハラハラもしています。けっこううんちくと言いますか、なんかお勉強要素が強くて、みんなうんざりしていないかなと…どうか映画を嫌いにならないでほしい….です….つい先日まであった自粛期間で、たくさんの人が映画、もしくは映像を観ていたと思います。昔、「不況の時は映画産業が伸びる」というグラフを授業で目にしました。気分が沈んでいるとき、将来が不安なとき、お金はあんまりないんだけど、映画を観に行きたい気持ちになる。それって人間の真理なんだ、という話でした。自粛期間中、NetflixやAmazonの株価は最高値を更新し、Youtubeの再生回数も増えたそうです。未曾有の今この時代に私たちは映画(映像)をたくさん消費しています。その反面で、ミニシアターと呼ばれるようなインディペンデント系の映画館や劇場などは非常に苦しいところに立たされています。多方面でミニシアターを支援するようなクラウドファンディングやチャリティー、署名活動が行われていて、なんとなく、KindleやAmazonの台頭により淘汰されていく街の本屋を支援する活動が盛んだったあの時期を思い出しました。結局、街の本屋は減りましたよね。サイレント映画がトーキー映画に打って変わられたように、時代、技術の中で変容していく映画の歴史。これからの時代がどうなっていくかは誰にもわかりませんが、映画が映画館を離れ、自宅での鑑賞がメインになったとき、映画は『体験』するものから、『消費』するものに変わっていくのだと思います。自分の好きなタイミングで、好きなときに再生ボタンを押し、携帯をいじりながら鑑賞して、トイレ休憩の為に映画を止める。幼い頃のわたしが、重たい防音扉をあけて観にいった映画体験のようなものは、もしかしたら過去の産物になるかもしれません。それが良いとか、悪いとかはそれぞれの人の価値観なので、別に映画館こそ映画の真髄だという話をしたいわけではないのをご理解頂きたいです。ただ私は、時代とともに変容していく映画の姿を、これを読んでくれているみなさんと一緒に、しっかりと見つめていきたいと思います。この自粛の時間で各々、いろんな副産物がありましたよね。みなさんはどんな映画を観ましたか?そして何を思いましたか?ぜひ、聞かせて欲しいです。
Motoyo ‘Jo’ Uzawa
Filmmaker / 映像作家
武蔵野美術大学映像科卒。在学中からフォトグラファーとして活動し、ポエティックで奥行きのある画作りに定評がある。2015年よりTOKYO所属。コピーライターとしてWieden+Kennedyへの出向を経て、2019年、監督復帰作となる「Midnight 0時」を制作。Adfest 2019で Fabulous Five 観客賞を受賞、Young Director Award 2019のShort Film部門で、日本人女性初ののSilverを受賞。同年、Jo Motoyoが自ら書き下ろした脚本企画が Tsutaya Creators’ Awardにて監督賞を受賞し、長編映画監督デビューが決定している。年間100作以上の映画を鑑賞。日本語、英語、中国語を話す。