「韓国の音楽シーンは幾何級数的に発展している」。そう話すのは韓国・ソウル出身のプロデューサー、シンガーソングライターのSUMIN。
新しいサウンドへの渇望はアーティストであれば誰しもが抱くもの
ピアノ教師をしていた母親の影響で、幼い頃から音楽に囲まれ、父親の運転する車の中で歌うのが大好きだったSUMINは、中学生でソウル特別市教育庁の特待生に選定され、声楽の英才教育カリキュラムを受講していた。しかし彼女にとって声楽は「アクティブな動きに対して制限があるパフォーマンス形式で、私の性格とは合わなかった」と感じ、実用音楽を勉強することを決心したという。「制約のない『声』を出して歌ってみたいと思い、高校、大学共に実用音楽科に進学しました。大学でボーカル専攻に入学してからは、私がボーカリストとして何を伝えたいのか、まったく浮かばない時期もあったんです。
![「自分の感情に素直になりたかった」ソウル出身のシンガーソングライターSUMINの挑戦と拡張](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FNeutMagazine%252F8e%252FNeutMagazine_2024_01_30_67337%252FNeutMagazine_2024_01_30_67337_2.jpg,quality=70,type=jpg)
その後2015年にSUMINとしての活動をスタートし、あらゆるジャンルのテイストが混じり合い、フレッシュかつノスタルジックなサウンドを提案し続けるSUMIN。
未来について考えるよりも、今を楽しみたい
1996年以降、K-POPアイドル文化が韓国音楽市場に着々と進出し、現在では韓国国内のみならず、世界中で支持・賞賛されるまでに成長してきた。同時に、K-HipHopやK-Indieへの注目も勢いよく集まっている。そんな韓国音楽シーンの変化、成長をSUMINは「幾何級数的に発展している」と表現する。
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「音楽にアクセスできる媒体とチャネルが多様化したことで、既成芸術に触れることが私たちの暮らしにおいてとても自然なことになったと思うんです。特に韓国の場合は、インターネット文化がとても発達しているので、インプットとアウトプットの活気がすごい。その結果、音楽だけでなく、映像プロダクションのクオリティも世界的な水準にまで発展していったと思います」 同時にSUMINは、「発展のスピードがあまりにも速くて、未来を予測することはとても難しくなっている」と話す。「現在の非常にアグレッシブな韓国の音楽市場の流れはとてもうれしく思っています。ただ、未来を予測することが難しくなっているからこそ、私は今後の韓国音楽シーンの未来について考えるよりも、今を楽しみたいと思っているんです」また、未来を予測できない現在に、音楽活動をするSUMINと同じインディペンデント・アーティストに対し「今を忍耐すること、勇敢さを持つこと」を伝えたいと語る。そこには彼女自身が「好きな音楽」を生業とし、生きていくことが当り前なことではなく、「ありがたい状況である」ことを認識しているからこそだという。
どのような形に仕上がったとしても魅力的で美しいものになる
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SUMINはこれまでに、数多くのアーティストとコラボ楽曲をリリースしている。そこにはZion.TやpH-1、So!YoON!など、今のK-HipHopやK-Indieを最前線で引っ張っているアーティストが名を連ねている。
2023年11月7日にリリースされた最新EP『SICHIMI』でも、シンガーであり俳優のUhm Jung Hwa、奇跡の歌声と称されるsunwoojunga、これまでにもコラボ楽曲をリリースしているラッパーのpH-1、ネクストブレイクシンガーとして注目されるOtis Limを客演に迎えた楽曲を収録している。
SUMINの拡張を意味する最新EP『SICHIMI』
リードシングル『Closet ft. Uhm Jung Hwa』を含む全6曲を収録した『SICHIMI』。あらゆる関係性や日常を詩的に映し出す本作は、これまでのSUMINの楽曲に一貫した美しいメロディーラインに加え、「拡張を試みた作品」だと話す。「私の過去の作品たちをベースに、ジャンル的な部分と大衆との親密度において、多様な『拡張』を試みた作品です。リリースから時間が経った今でさえ、私にとって拡張を意味する作品になっています」
タイトルの『SICHIMI』には、日本語と同じ調味料の七味を意味する韓国語もあるが、ここでは韓国語で「知らんぷり」の意味を持つ「シチミ」を使用している。「私の自己防衛的な側面を手放し、自分の感情に素直になりたいという意味でこのタイトルの単語を選びました」と話すように、収録楽曲には「何事もなく生きるのは難しい」「私の肌、爪、唇、かわいいお尻を見て」と、自分の中から出てくるネガティブな感情やセクシーな感情、波打つ豊かな感情を丁寧に汲み取り解放していく様が見られる。 私たちの生活のなかにある、見逃してしまいそうな一瞬を、普段どのように残しているのか聞くと、「文章はあまり書かないんです。その代わりに同僚でグラフィックデザイナーをしているSoyoに私の状況や、感情を常に話している」と、意外な答えが返ってきた。「電話でも、対面でも、常にSoyoが私の感情をバックアップしている感じなんです。本当に多くのことを一緒にやっているのもあって、何か物事を決めるときには、お互いのキャリアや個人的なことまでもを話し合って決めることも多いんですよ」と話すように、SoyoはSUMINにとって、彼女の音楽を形成するうえでとても大きな役割を果たしている。実際に『SICHIMI』のビジュアルディレクター、アートワークもSoyoが担当しており、公私ともに対話を続け、あらゆる決断を共に行なっているのだ。
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EP『SICHIMI』を通して、SUMINの現在地を共有してくれたばかりだが、最後に今後について、そして日本のファンへのメッセージを送ってくれた。「前作 『MINISERIES』を共に制作したSlomと次のプロジェクトについて話し合っているところなんです。お互いにデモトラックを作って共有していて、今年の上半期には本格的に制作を始める予定なので、楽しみにしていてください!そしてSUMIN個人としては、コンサートを計画していて、今年も日本に来れるように準備を進めています。また再会できることを楽しみにしています」
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SUMIN
韓国のプロデューサー、シンガーソングライター。2018年に発表した1stアルバム『Your Home』が韓国大衆音楽賞で「R&Bソウル最優秀歌賞」、韓国ヒップホップアワードで「今年のR&Bアルバム」を受賞。またBTS、KAI(EXO)、Red Velvet、BoAといったK-POPアーティストの楽曲制作にも携わっている。日本国内のアーティストでは、STUTSのミニアルバム『Contrast』の人気曲「Mirrior」で鎮座Dopeness、Daichi Yamamotoと共演しているほか、フジテレビ系月10ドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」の主題歌「Mirage」のRemixを手がける。近年は、SIRUPの「Keep In Touch」や、YonYon「Dreamin’ (prod. ☆Taku Takahashi)」にも客演している。