【読み間違えやすい漢字クイズ】これ、正しくは「じゅっぴき」と読むのでは…ない!では、何て読むの?
別れる時のあいさつ「さようなら」も略語!?

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「さようなら」の語源は、「それならば」「それでは」という意味の「左様(さよう)ならば」という、接続詞だそうです。
「左様ならば、ごきげんよう」「左様ならば、のちほど」など、「ごきげんよう」「のちほど」といった別れの表現と結びついて用いられるようになり、江戸時代後期に「さようなら」という独立した別れの言葉として一般化したそうです。
ほかにも、江戸時代の武士の挨拶だった「左様ならば、御暇(おいとま)仕(つまかつ)らん」が省略されたという説もあるようです。「それならば、私は帰らせていただきましょう」という意味なので、現代で仕事終わりに使う「それでは失礼いたします」とか、軽い言い方だと「じゃあ、そういうことで」みたいな感じなのかな。
いずれにせよ、「左様ならば…」の「ば(接続助詞)」と、それに続く、意思や思いを表す言葉が丸ごと省略され、言葉自体に別れの意味はない接続詞だけが残り、「さようなら」となったわけです。
接続詞は文と文をつなぐ、あくまで”つなぎ”の言葉で、前の文と後ろの文があってこそ成立するもの。接続詞自体に感情や思いなどは特に含まれていないのに、そんな接続詞が別れの言葉として使われるようになるなんて、おもしろいですよね。
世界中の別れの言葉や挨拶を見ても、接続詞を使っているのはけっこう珍しいみたいですよ。
世界の”別れ言葉”の中でも珍しい「さようなら」

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例えば、英語の「good-bye」は「God be with you(神があなたとともにありますように)」の略語。中国語の「再見(ツァイチェン)」は、「再び見る=また会おう」という意味、韓国語の「안녕히계세요(アンニョンヒケセヨ)」は「안녕히(アンニョンヒ)=安寧に」+「계세요(ケセヨ)=いてください」、直訳すると「お元気でいらしてください」という意味だそうです。
このように、他の国々で使われている別れの言葉は、言葉自体にちゃんと意味があります。
そして、世界の別れの言葉は「神のご加護を祈る」「また会いましょう」「お元気で」を意味する3パターンにほぼ分類出来るそう。ですが、「それならば…」「それでは…」という、意味が明確でない接続詞が語源となっている日本語の「さようなら」は、この3パターンには当てはまらないようです。
個人的な意見ですが、日常的なあいさつとしてだけでなく、悲しくて切ない別れの場面でも使うこともある”別れの言葉”に、意味がはっきりしない接続詞を使うところは、なんだか、日本語っぽいなと(笑)。
言葉の背後にある感情や意図を読み取る、「行間を読む」という日本語の文化が表れているような気がします。あくまで、わたしの個人的な感想ですけどね(笑)。
言葉と言葉をつなぐ接続詞だからこそ、「さようならば…」の「…」には、いろいろな感情や思いを込めることが出来、「明日また会おう」という気軽な気持ちを込めても、今生の別れ的な重めの「もう会えませんが、お元気で」を込めても「さようなら」というひと言で表されます。
「さようなら」という言葉をかけられた人は、そこに込められた思いを、相手との関係性や、その場のシチュエーションを踏まえて、行間を読み、自分なりに受け止めているんじゃないかなと…。
これって、日本人の特殊能力?(笑)
フランス語やスペイン語の場合、長い別れや永遠の別れを告げるときに使う「さようなら」は、フランス語は「Adieu(アデュ)」、スペイン語は「adiós(アディオス)」を使うそう。行間を読まなくても、ダイレクトにはっきりと「もう会えない」ことがわかります。けれど、日本語は明日会うつもりでも、今生の別れでも「さようなら」と、同じ言葉を使うことが出来るのはおもしろいなと思います。
「さようなら」は、「行間を読む」文化のある日本人だからこそ使える言葉なのかもしれませんね。
では、「さようなら」以外の挨拶についても調べてみましょう。
「さようなら」以外のあいさつも略語!?

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まずは、朝の挨拶。
「おはようございます」の由来は、歌舞伎なんだとか。歌舞伎役者は、準備に時間がかかるため、公演が始まるずっと前に芝居小屋に行き、準備をするそうです。それに対し、裏方さんたちが”いつも早くから準備されてご苦労さまです”との労いを込めて、「お早いお着きでございます」と歌舞伎役者を出迎えていた言葉が省略されて、「おはようございます」となったそうです。
「こんにちは」は、「今日(こんにち)は御機嫌いかがですか」といった挨拶が、「今日は…」に続く部分がごそっと省略され、明治時代の教科書に「こんにちは」と書かれたことで、広まったそうです。
ほかにも、昔は太陽のことを敬って「今日様(こんにちさま)」と呼んでいたそうで、「今日様があなたを無事に守ってくれますように」との思いを込めて、日中のあいさつを「こんにちは」と言うようになったという説もあるとか。
「こんばんは」も「こんにちは」と同じで、「今晩は御機嫌いかがですか」といった挨拶の「今晩は…」に続く部分がごそっと省略され、「こんばんは」になったそうです。
朝の挨拶である「おはようございます」だけ、「ございます」が付いているのは、なんでだろうと子どもの頃、不思議に思ってましたが、「こんにちは」や「こんばんは」とは語源が違うからなんですね。何十年越しかで、謎が解けました(笑)。
また、「こんにちは」と「こんばんは」は、「今日は…」「今晩は…」の主語だけ残り、文の内容である「…」の部分が丸ごと省略された形。「さようなら」と同じように、意思や思いなどを表す重要な部分を省略してもOKなのは、”行間を読む”、”言わなくても伝わる”といった日本人ならではの文化が影響しているんでしょうか?どうなんでしょう?
ということで、今回は、「さようなら」などの挨拶の語源を紹介しました。
日常でよく使う言葉が使いやすいように省略されるのはよくわかりますが、「さようなら」「こんにちは」「こんばんは」のように、意味を成す部分をそのままごっそり落とすというのは、おもしろい省略の仕方ですよね。
ごっそり省略されたこれらの挨拶言葉は、それ自体では意味不明ですが、省略された言葉を知ることで、なんだか、言葉の奥深さを感じます。
ちなみに、「挨拶」という言葉の「挨(あい)」は「心を開く」、「拶(さつ)」には「心に近づく」という意味があり、挨拶とは「自分の心を開き、相手の心に近づいていく」ことだそうですよ。
日本語って、いろいろ奥深いですね(笑)。
<参考文献>
WEB
『ジャパンナレッジ・知識の泉~第262回「さようなら」』
https://japanknowledge.com/articles/blognihongo/entry.html?entryid=278
『 国語講師の学習ブログ ~札幌発!こくごの教室~さよならの歴史。~』
https://ameblo.jp/kokugo-migaku/entry-11987433319.html
『PRESIDENT Online~接続詞を「別れ言葉」にしている…「さよなら」という4文字を米国人作家が「最も美しい言葉」と評したワケ~』
https://president.jp/articles/-/60692?page=1
『KONEST~TODAYSはんぐる~』
https://www.konest.com/contents/todays_korean.html?id=17661
『Pando~ 意外と知らない(?) 挨拶の由来と礼儀作法~』
https://pando.life/hiyori/article/25699
『株式会社えいすう総研~日本語の由来 あいさつ編 ③~』
http://www.eisusouken.co.jp/2022/02/26/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%81%AE%E7%94%B1%E6%9D%A5%E3%80%80%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%95%E3%81%A4%E7%B7%A8-%E2%91%A2/#:~:text=%E3%80%8C%E3%81%93%E3%82%93%E3%81%AB%E3%81%A1%E3%81%AF%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%8C%E4%BB%8A%E6%97%A5%EF%BC%88,%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82