ネットで見かけておもしろかった漢字クイズがあったので、みなさんにも。北極星、北上川、北枕など、方位を表す「北」という漢字。
これに、送り仮名の「く」を付けた「北く」という言葉があるそうです。さて、何と読むのでしょう?もちろん、「きたく」ではありません。「北」の音読みは「ホク」なので、「ホクく」…ってこともありません。ほかに、どんな読み方あるっていうの?さて、正解は…。

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小学校で習うのに読めない漢字クイズ♪

【問題】

「北く」なんと読むでしょう?

thinking time♪







正解は…「そむく」でした。

「北」に「そむく」という読み方があるなんて、初耳。

それもそのはず、この「北(そむ)く」という読み方は、常用漢字表に掲載していない「表外読み」なので、あまりなじみがないのも当然かも。

でもちゃんと、漢字辞典には載っているんですよ。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!


画像出典:辞典オンライン『漢字辞典』

「そむく」の下に、もうひとつ、見慣れない読み方がありますね。

「北(に)げる」とも読むなんて、これまた、初耳。

意味をみると、

・きた。方位の名。

・きたする。北のほうにいく。
・にげる。敵に背を向けてにげる。
・そむく。背を向ける。 と書いてあります。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!
意味

画像出典:辞典オンライン『漢字辞典』

方位を表す「北」の意味のほか、「にげる」「そむく」という意味もあるんですね。

北の方に行く、北進するという意味の「北(きた)する」という言葉も初耳ですが、調べても特にこれ以上何もなかったので、今回はスルーということで(笑)。

では、本題。

なぜ、「北」という漢字に「にげる」や「そむく」の意味があるのでしょう?

その理由は、「北」という漢字がもともと方位ではなく、”体のある部分”を意味する漢字だったからなんですって。

「北」はもともと方位を示す漢字ではなかった!?

”体のある部分”とは、なんと「せなか」。


【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!
背中

画像出典:イラストAC

「北」という漢字は、”背中を合わせる人の形”から生まれた漢字で、もともとは方位ではなく、「背中」「二人が互いに背を向けていること」を意味していたそうです。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!

画像出典:漢字の成り立ちイラスト【日本語初級クラス「みん日-U.15」】

だから、相手に”背を向ける”=「そむく(北く)」というわけです。実際に相手に背を向ける行為だけでなく、相手と対立したり、逆らうといった意味でも使われるようになったそうです。

また、戦いの場で、敗者は勝者に”背を向けて”退散することから、「にげる(北げる)」となりました。

「敗北」という言葉がありますが、この「北」は方位を意味する「北」ではなく、「敗れて敵に背を向けて”北げる”」という意味だそうですよ。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!
逃げる

画像出典:イラストAC

ではなぜ、「背中」「二人が互いに背を向けていること」を意味した「北」という漢字が「方位」を表すようになったのでしょう。

「背中」を意味する「北」がなぜ方位に?

中国には古来から「天子南面」という言葉があり、皇帝は、太陽の光が射す南を正面にして座っていたことから、”皇帝が背を向けている方向”を表す言葉としても使われるようになったそうです。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!
玉座

画像出典:フォトAC

そして、「せなか」より「方位」として用いられることが多くなったため、人の体を意味する「にくづき」をつけて、「背」という漢字が新たに作られたそうです。

「背」という漢字に「北」が入っているのを不思議に思っていましたが、もともと「北」が「せなか」を表す漢字だったからなんですね。

現代中国語では、日本語同様、「北」という漢字はほぼ方位にしか使われていないそうですが、発音が「北」běi、「背」bèiと、似ているので、なんとなく、つながりがあるようには感じますよね。

中国語では、běiと発音する「北」ですが、日本語では「きた」と読みますよね。せっかくなので、「きた」「ひがし」「みなみ」「にし」という方位の呼び方の語源についても調べてみました。


方位「北」をなぜ「きた」と呼ぶ?

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!

画像出典:フォトAC

調べたところ、「東」「西」「南」「北」の4つの方位のうち、「東」以外は、はっきりとした語源はわかっていないみたいです。

「西」「南」「北」は説をいくつか紹介することにして、まずは語源がはっきりしている「東」から。

「東」は、太陽が登る方角という意味の「日向かし(ヒムカシ)」が訛って「ヒンガシ」→「ヒガシ」となったそうです。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!

画像出典:フォトAC

これは、わかりやすい!

続いて「西」。

日が去る(日が沈む)方角という意味の「日去(い)にし」から「ニシ」になったという説や、日が沈む「西」には死者の国があると考えられ、古事記に登場する死者の国「根之堅州国(ねのかたすくに)」の「根」が「ニ」に変化し、方角を表す「シ」と組み合わさって「ニシ」になったという説などがあるそうです。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!
夕方

画像出典:フォトAC

「西」の語源はなんとなく合点がいきますが、「北」と「南」が微妙なんですよね(笑)。

「南」は、古代の人々が、太陽を神として信仰し、祈りをささげたことから、「神に祈る方角」という意味の「神祈む(ミナム)」が訛ったという説や、右のことを「左(ヒダリ)」に対して「ミギリ」と呼んでいたそうで、「東」の右にある方角が南であることから、「ミギリ」が変化して「ミナミ」になったという説などなど。いろいろありました。

ちなみに、「東」の右とは、下の図の中央に立って東側を向くと、「南」が「東」の右にありますよね。中央を向いてしまうと、「東」の右は「北」になっちゃいます。

【小学校で習うのに読めない漢字クイズ】「北く」の読み方、わかる?もちろん「きたく」ではないよ!


画像出典:イラストAC

そして、最も語源がはっきりしないのが、本日の主役「北」。

「南」と同じ考え方で、東の左にある方角なので、「ヒダリ」が変化して「ヒダ」になり、そこから「キタ」になったという説。
…これ、けっこう苦しいかも。ほかには、神(太陽)が最も高い位置にのぼる南の反対側ということで、不浄や穢れ(けがれ)という意味の「汚し(キタナシ)」が語源という説もありました。

汚しが語源というのはちょっとイヤな説ですよね。北は日光が当たらないので暗い→黒い→忌まわしい、不吉などと連想するのもアリかなとも思いますが…。

ということで、今回は、「北く」という読み方から始まり、「北」という漢字の語源などについてご紹介しました。「北」がもともと「背中」を意味していたなんて、新鮮な驚きでした。「北」は小学校2年生で習う見慣れた漢字ですが、知らないことがまだまだあるんですね。漢字っておもしろい♪
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