歴史があり、日本人にとっては馴染み深いウイスキーの1つでもある「オールドパー」。背が低く、ひび割れたデザインのボトルはBARやスナックなど、場所を問わず見ることができます。
実は、オールドパーは日本に最初に持ち込まれたスコッチウイスキーとして知られており、明治天皇への献上品でもあったことから、「ジョニ黒」と呼ばれるジョニーウォーカーブラックラベルとともに、超高級ウイスキーとして庶民の憧れだったそう。歴史深く、日本とのエピソードも豊富なこのオールドパーは語り飽きないウイスキーです。
もちろん有名になるからにはテイストも一級品!
今回はそんな「オールドパー」の歴史を紐解いて、さらにオールドパーを楽しめる豆知識やオールドパーのおすすめの飲み方をご紹介します。
オールドパーの基本情報
オールドパーは主にスコットランドで大麦を原料につくられる蒸留酒、ウイスキーの1つです。
ウイスキーには生産国によって名前が違い、例えば日本でつくられるウイスキーがジャパニーズウイスキーと言われるように、スコットランドでつくられるウイスキーはスコッチと呼ばれています。
このスコッチは世界中のウイスキー流通量の半数以上を占めており、スコットランドといえばウイスキーを連想する方も非常に多いと思います。
ウイスキーの種類について
例外はありますが、スコッチに限らず全てのウイスキーが以下の種類に分類されます。
・1つの蒸溜所で大麦を原料にしてつくられる「シングルモルトウイスキー」
・1つの蒸溜所で小麦などの穀物を原料にしてつくられる「グレーンウイスキー」
・複数の蒸溜所のシングルモルトウイスキーのみを混ぜて(ヴァテッド)つくられる「ヴァテッドウイスキー」
・複数の蒸溜所のシングルモルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜてつくられた「ブレンデッドウイスキー」
オールドパーは、複数の蒸溜所のシングルモルトとグレーンウイスキーをブレンドした「ブレンデッドウイスキー」に分類されます。
シングルカスクとカスクストレングスの違い
上記でご紹介したウイスキーの種類からさらに細分化することもできます。
少しマニアックな知識になってしまいますが、オールドパーにももちろん関わってくることなのでご紹介します。
・1つの蒸溜所の1つの樽からつくられるウイスキーは「シングルカスク」
・加水によるアルコール度数調整を行なっていない、樽出しの「カスクストレングス」
混同しがちですが、シングルカスクは1つの樽から生まれるウイスキーなので、加水の有無は問われません。
カスクストレングスは加水を行わないですが、樽の混同は行われます。
シングルカスクのブレンデッドウイスキーは存在しませんが、カスクストレングスのブレンデッドウイスキーは存在します。
また、オールドパーにもカスクストレングスは存在します。
カスクストレングスは樽や原酒の個性がダイレクトに伝わる分、最高の状態の原酒をブレンドするため、今でも少々高級品にはなっています。
ブレンデッドウイスキーの特徴
先述した通り、オールドパーはブレンデッドスコッチウイスキーとして分類されており、複数の蒸溜所のシングルモルトとグレーンウイスキーをブレンドしてつくられます。
シングルモルトウイスキーは年やブレンダーの変更によって、テイストに変化が発生するウイスキーです。
それがシングルモルトも面白さでもあるのですが、ブレンデッドウイスキーはどのようなシングルモルトウイスキーをブレンドするか大まかにレシピが決まっているため、シングルモルトに比べると安定したテイストが楽しめます。
50年単位でみるとブレンデッドウイスキーでもだいぶテイストは変わるのですが、現行品を楽しむ分には変化をしっかりと感じることは、なかなかないでしょう。
もちろん例外として、癖の強いシングルモルトウイスキーばかりをブレンドしたブレンデッドウイスキーも存在するのですが、稀有なケースです。
ウイスキー初心者の方でもライトに楽しむことができますし、シングルモルトを好んで飲む方もたまにオールドパーに原点回帰して、安定した美味しさを楽しむ光景もよく見られます。
オールドパーのキーモルト
ブレンデッドウイスキーには、使われるウイスキーのレシピがしっかりと存在しています。
詳細は企業秘密の企業が多いですが、キーモルトと言われるそのブレンデッドウイスキーを形づくるシングルモルトウイスキーは公開されていることが多いです。
オールドパーもキーモルトを公開しています。
オールドパーを楽しんで、次にキーモルトを味わい、またオールドパーを飲んでみると新しい発見がたくさんあり、これもブレンデッドウイスキーの楽しみ方の1つと言えるでしょう。
クラガンモア
スコットランドのスペイサイド地方。
超大手の「グレンリベット蒸溜所」から10kmもかからない近くに構える蒸溜所でつくられるウイスキー「クランガンモア」。
シングルモルトとしてもとても飲みやすいテイストのウイスキーで、一般的に知名度はないですが多くのウイスキー愛好家やウイスキーメーカーに愛されているスコッチウイスキーです。
非常に繊細なテイストで、ウイスキーに慣れている人でもしっかりとテイスティングを行うのは至難の技。
この飲みやすくまろやかなウイスキーに深く潜った時にようやく、フルーティーな香りや花の香りの優しさや、甘く、少しスモーキーな表情をみることができます。
飲んだ後は少し甘く、スモーキーさが余韻として残るウイスキーです。
このウイスキー単体でかなり複雑なテイストですが、だからこそオールドパーのキーモルトとして愛され続けられているのだと思います。

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グレンダラン
クラガンモアと同じく、スペイサイドで造られたウイスキー「グレンダラン」。
グレンフィディック蒸溜所から、フィディック川を挟んだ斜向かいに位置する蒸溜所で造られます。
20世紀初頭には国王エドワード7世へ献上され、その後王の愛飲するウイスキーになったというエピソードも、このグレンダランのクオリティの高さを物語っています。
ちなみにクラガンモア蒸溜所から10km強しか離れていないのですが、スペイサイドらしい飲みやすいテイストはそのままに、ある意味正反対のテイスト。
はっきりとした華やかな香りを皮切りに、蜂蜜のようなリンゴのような糖度の高い香り、青リンゴと少しはっきりした口当たりが特徴。一方で、徐々に強くなるスモーキーさは両者に共通しているように感じます。
もちろん、ウイスキーのテイスティングは主観によるところが大きいですが、オールドパーはインドア派とアウトドア派の友人同士が仲良く遊んでいるような組み合わせです。
スペイサイド地方のウイスキーは、どれもすっきりとした飲みやすいテイストが特徴です。この特徴をまさにそのままに、それも非常に高い次元で体現しているキーモルトと言えるでしょう。

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ブレンドの比率
この、クラガンモアとグレンダランのオールドパーに使われる比率は、以前はグレンダランの方が高かったそう。
現在はクラガンモアの方が比率が高いと言われています。
オールドパーの歴史

1871年に創業以来、進化を繰り返してきたオールドパーには長い歴史が存在します。
オールドパーの歴史を知ることで、飲んだ時の感じ方まで変わってくるのがウイスキーの面白さの1つです。
長い歴史には様々な説が存在するため、正解としてご紹介するのは難しいですが、ここでは諸説ある中からオールドパーの歴史を少しだけご紹介します。
名前の由来は実在した人物
オールドパーの由来は実在した人物でした。
ボトルデザインにも描かれている彼の名前は、トーマス・パーと言われる人物で、シェイクスピアなどの著名人が眠るウエストミンスター寺院に埋葬されています。
伝説的な程長生きをしたことから長寿をウイスキーの熟成、培った英知をブレンド技術になぞらえてウイスキーに名付けたのだそう。
152年生きたレジェンドお爺さん
オールドパーのラベルには、彼が生きたと言われている年代が記載されています。
彼は1483年に生まれ、1635年に永眠。つまり152歳の超長生きな人物として「10人の英国王の時代に生きた」とも言われ、イギリスの伝説になっています。
そんなトーマス・パーは生き方も波乱万丈でした。
80歳でジェーン・テーラーという女性と初めての結婚という、今でいう熟年結婚をした後になんと2人の子供にまで恵まれます。
残念ながらこの2人の子供は若くして亡くなってしまったそうですが、その後なんとキャサリン・ミルトンと不倫して子供をつくってしまいます。
その時のパー爺さん、105歳。
この不倫騒動で、逮捕されたとも教会で懺悔させられたとも言われています。
その後、最初の妻が亡くなった後に、再婚。122歳の時だったのだそう。
長寿として、イングランド中で話題になったトーマス・パーは有名画家の絵画に描かれるほどに。彼が亡くなる直前の1635年にはイングランドの貴族がチャールズ1世に拝謁させるために
彼をロンドンに連れ出し、チャールズ1世は大変喜んだようです。
彼は菜食主義と節度のある生活を長寿の秘密として話していましたが、ロンドンでの食生活の変化がたたり、亡くなってしまいました。
彼の墓標には「10代の英主の御代に生きたり。」と刻まれることになりました。
実年齢相違が指摘される
彼の死後、検死を行った名医ウィリアム・ハーヴェイの検死報告書には、彼の死因は食生活の変化による胃潰瘍だったと記されています。また、実年齢は70歳未満だったと示唆しているとジョン・ペッツの著書に記載されていることから、彼の祖父と混同されているのではないかとする指摘も存在します。
ですが、30代にトーマス・パーの名義で借地契約を行った記録や、彼の早くに亡くなってしまった2人の子供以外は、息子113歳、曾孫124歳などかなりの長寿のため、150年以上生きた彼の伝説はあながち本当かもしれませんね。
オールドパーをつくる企業とは
父の蒸溜所と提携しながらウイスキーの販売を行っていた、後のオールドパーの生みの親グリーンリース兄弟。
彼らが家業を継ぐと決めたことから、ブレンディングを行う会社「グリーンリースブラザーズ社」を1871年に設立します。
この、グリーンリースブラザーズ社からオールドパーは生まれました。
その後は19世紀末まで一族経営を行っていましたが、アレクサンダー・マクドナルド社と合併し現在の製造元であるマクドナルド・グリーンリース社が誕生します。
1925年にはディスティラーズ・カンパニー・リミテッド社(DCL社)の傘下に入り、現在はディアジオ社の傘下となっています。
日本で初めて飲まれたスコッチウイスキー
オールドパーは、日本で初めて飲まれたウイスキーとしても有名です。
グリーンリース兄弟が創業した1871年の2年後には、岩倉使節団の遣欧米使節団が日本に持ち帰り明治天皇に献上されたのが始まりと言われています。
政治家が好んで飲んだ理由とは?
そんな背景もあり、オールドパーは高価なお酒という立ち位置で多くの政治家や文豪に愛飲されてきました。吉田茂や田中角栄などの大物政治家も、オールドパーのファンとして有名。
現在も経営者が好むウイスキーとも言われていますが、実は験担ぎ的な理由かあるんです。
オールドパーのボトルは、バランスよく置くと斜めに置くことができます。このことから、「右肩上がり」や「決して倒れない」ウイスキーとして親しまれていました。
少しコツが必要ですが、今のボトルデザインでも可能なのでぜひチャレンジしてみてくださいね。
オールドパーの種類とテイスト

様々なエピソードがあるオールドパー。
非常にバランスが取れた飲みやすいブレンデッドウイスキーですが、熟成年数などによって様々な種類が存在します。
限定生産で現在は入手不可能なものも存在するので、ここでは入手可能なオールドパーの代表的な種類とテイストをご紹介します。
価格は購入する場所によって差があるのでおおよその目安として記載します。
オールド・パー 12年

オールドパーの代表作。
12年以上のモルトをヴァッティングしてつくられ、長きにわたって世界中から愛されてきたボトルです。
水割りかハイボールにすると飲みやすく、華やかなオールドパーのテイストを楽しめます。
価格はおよそ3000~5000円、アルコール度数は40度です。

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オールドパー シルバー

日本国内限定流通商品です。
ウイスキーとしては珍しく、冷やして飲むことを前提につくられており、キンキンに冷やしてハイボールや水割りがおすすめ。
ストレートやトワイスアップにすると、12年と比較して少し若い原酒特有のトゲを多く感じます。食中酒としてはコストパフォーマンスが非常に高いので、ハイボール好きの方にオススメしたい1本です。
価格はおよそ2500~3000円でアルコール度数は40%です。

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オールドパー 18年

使われるモルトは18年熟成の贅沢なオールドパー。
12年と比較すると、かなりの熟成感からくる甘さを感じることができます。飲み始めから飲み終わりまで、クリーミーな甘みと滑らかさが優しい1本です。
ストレートから徐々に加水して変化を楽しむのがおすすめです。箱も上品なデザインなのでプレゼントにも最適。
価格はおよそ8500~11000円でアルコール度数は40%です。

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オールドパー クラシック18年

ブレンデッドウイスキーではなく、基本の2つのキーモルトを中心に合計9種類のモルトのみを使い、1930年代のレシピを再現してつくられたヴァッテッドウイスキーです。
非常に複雑なモルトの味わいと重く高級感のあるフルーツやバニラの甘み、少しだけスパイス感、優しいスモーキーさが非常にバランスよく、全く飽きずに楽しむことができます。
価格は8000~ アルコール度数は46%です。

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オールドパー スーペリア

この1本のすごいところはブレンダーの卓越した技術。長期熟成のモルトや若いモルトをブレンドすることで、立体感があるテイストと気品のあるテイストを両方表現しています。
最初は若いフルーツ香がだんだんと熟成されたフルーツ香に変化していくのはさすがの一言です。
あくまで「オールドパーという上品なテイスト」という枠組みの中に、荒々しさや遊び心が見事に調和した1本です。
価格はおよそ6000~13000円でアルコール度数は43%です。

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まとめ

昔から現代に至るまで身分など関係なく愛飲されてきたオールドパーというウイスキー。手軽に手に入る時代に生まれてよかったと思います。
昔から国内で流通していた影響もあり、今でもオールドボトルを取り扱っているBARやネット通販などでは数十年前のオールドボトルを購入できます。
昔は「特級」という表記が国内では使われていたことから、特級表記のオールドパーに出会ったらぜひ飲んでみてください。
大物政治家が当時飲んでいたオールドパーをそのまま楽しむことができますよ。
今でも様々な場所で飲むことができるオールドパー。ぜひしっかりと味わってみてください。