推しを応援するためにファンが広告を掲出する『応援広告』をご存知だろうか? 日本でもかなり広まってきたこの応援広告をサポートしてくれるのが、株式会社ジェイアール東日本企画(jeki)が手掛ける応援広告事務局「Cheering AD」(チアリング アド)だ。中の人にここまでの紆余曲折を伺ってみた。
『応援広告』という言葉をご存知だろうか?K-POPアイドル界隈や海外俳優推しなら知っている方も多いかもしれない。
まずは百聞は一見にしかず。駅や屋外ビジョンでこういった広告を見かけたことはないだろうか。
- via https://twitter.com/jeki_ooh/status/1585640828751740929
-
誕生日祝や、コンサートやイベントの開催記念、アルバムやシングルの発売など推したい内容は多岐にわたり、広告自体も駅ばりポスターや屋外ビジョン広告を始めとして、カップホルダーイベント(※)や付箋広告(※)など様々だ。
※カップホルダーイベント…コーヒーやドリンクのカップに巻く紙製の筒のような製品。カップスリーブとも言う。オリジナルのカップホルダーを制作してカフェでドリンクを注文した人に配布してもらうイベントのこと。
※付箋広告…駅構内などに掲示されたポスターなどに、来訪者が付箋でメッセージを記入し、貼り付けるもの。たくさんの付箋が貼られたポスターには、それだけ多くの人が足を運んでくれたということで視覚的にもわかりやすい。
応援広告は、元々は韓国から広がってきた推し活の一形態である。韓国では誕生日を主に祝うことが多いのでセンイル(誕生日)広告と呼ばれている。
韓国で放映され爆発的な人気を誇ったオーディション番組『PRODUCE 101』シリーズ(※)がきっかけで広く普及するようになった。
※『PRODUCE 101』シリーズ…韓国の音楽専門チャンネルMnetで放送されたサバイバルオーディション番組。101人の練習生の中から国民プロデューサーと呼ばれる視聴者の投票でデビューメンバーが決定される。
そしてこの『PRODUCE 101』シリーズの日本版『PRODUCE 101 JAPAN』(※通称:日プ 2019年放送のSEASON1ではJO1、2021年放送のSEASON2ではINIがデビュー)の開催をきっかけに日本でも徐々に広まってきている。オタクなら誰でも「俺の推しを見てくれ」──自分の推しをもっと沢山の人に見てほしい! 知ってほしい! 布教したい!と思ったことはあるだろう。
かく言う筆者もその1人だ。KPOP沼やタイ沼にも片足を突っ込んでいる故、応援広告の存在自体は以前から知っていた。そしてSNSや街中で応援広告を見る機会が増えるにつれ、漠然とした憧れはもっていたものの、実際の費用面や手間などを考えると難しい……とも感じていた。
だがしかし! そんな筆者にも一大転機がやってくるのである。
Twitterスペースで友人たちと推し語りを展開していたとある週末の昼下がり──。「そういえば、某月某日って、○○記念日なんですよ」
「えっ、そうなんだ! なんかお祝いしたい!」
「ですよねー! 皆で集まってお祝いもしたいんですけど、なんかこう形に残る思い出を作りたいんですよね」
「それもそうだね! もっと推しを布教したい! 全世界とまでは言わないけど街を歩く人にアピールはしてみたい!」
(ハッ!)
「「「……応援広告……やり、たい!!」」」──とまあ、こうして筆者は推しの応援広告を実施することに。
そしてこの応援広告で筆者が非常にお世話になったのが、株式会社ジェイアール東日本企画(jeki)が手掛ける応援広告事務局「Cheering AD」(チアリング アド)だ。
個人での広告出稿が難しい日本において、媒体社との調整や枠取りなどを手配してくれる広告代理店は必須であり欠かせない存在でもある。
今でこそ知名度も上がり、週末には見かけない日はないほどの勢いのある応援広告だが、実際このように普及するまでにはどんな紆余曲折があったのだろうか?
「Cheering AD」の中の人に話を伺った。
「どうしてファンが広告を出すの?」理解されるまでが大変だった
──まずは『Cheering AD』設立のきっかけについて教えてください。jeki河原氏(以下、同) 私、元々KPOPファンなんです(笑)。それでセンイル広告(応援広告)を日本でもずっとやりたいと思っていたんですね。
日本だと権利関係が厳しいのでなかなか広まるのが難しかったのですが、突破口を開いたのが「PRODUCE101 JAPAN」でした。
韓国でも応援広告が広まったのは「PRODUCE 101」シリーズだったのですが、日本版(日プ)でも同じく応援文化をそのままに展開してくれた。練習生の写真やロゴを公式側が提供して、応援広告に使っていいよと。
でも日本の場合はどうしても間に広告代理店が入らないと広告が出せないので、応援広告をやりたいんだけど皆さんどうしたらいいのか結構困ってらして。
なので最初は個人的に「その部分お手伝いできますよ」という感じで始まったんです。
最初は「応援広告」っていう言葉もなかったので、とにかく理解してもらうまでが大変でした。
やはり広告って販売促進が目的だという認識が一般的。社内も社外も、そもそも「どうしてファンが広告出すの?」というところから説明していかないといけない。──儲かりもしないのにどうして?と。オタクにしてみれば多少お金を出してでも推しをアピールするチャンスが有るのは嬉しいですが。
そういった初期の頃から考えると、今ではかなり一般的になってきたと感じます。
2020年に新規事業企画の募集があって、社内のオタク仲間と応援広告の企画でエントリーしたのですがその時はダメだったんですよ。でも少しずつ実績を積み上げていって、ようやく2022年に「Cheering AD」として正式にスタートしました。
広告出稿だけであれば会社として実績も経験も十分にありますが、やはり対企業でのBtoB事業がメインなので、応援広告のようなBtoC事業というのは会社としてもあまりないので挑戦なんですよね。
その点を心配されることもありますが、頂いたご意見を反映しながらこれからも実績を積み上げていければと考えています。──JR東日本企画という社名もあって、やはり交通広告に強いのかなと漠然とイメージしていたのですが。
社名のせいか、「JRしか広告出せないんですか?」っていうお問い合わせをよくいただきます(笑)。
日本全国どこでも出せますし、JR以外の電鉄や屋外広告の取り扱いもできます! むしろ出せないところのほうが少ないです!
JRグループである強みを生かして、ルミネなどの駅ビルでのカップホルダーイベントなども可能です。
応援広告用のメニューの開発もしていまして、そのうちの一つが『付箋広告』です。
日本の場合は、通行の妨げにならないかとか安全面はどうかなど、かなり厳しいハードルがあったのですが、媒体社側と調整して開発、実現できたメニューですね。

件数として一番多いのは、駅ばりポスターですね。
それほど価格も高くないので、手が出しやすいのかもしれないです。
次に屋外ビジョンです。新宿のユニカビジョンやクロスビジョンは人気ですね。ユニカビジョンはもう応援広告の聖地みたいな感じになっていたり。
応援広告が広まってきたのもあって、人気の場所も出来てきたりしています。東京メトロの新宿駅から新宿三丁目をつなぐ地下通路は、駅ばりポスターの中では人気の場所ですね。
──確かによく見かけますね! SNSを見ていると、全国規模で応援広告が展開されているものもあったりして、規模もすごく拡大しているなと思います。
そうですね。やはりKPOPから発生してきたというのもあるので、ファンダム文化というか応援広告に参加するファン数も多いですし、規模も大きくなっていますね。──実際2次元のキャラと3次元のアイドルや俳優などと、どちらの応援広告が多いんですか?
もともとKPOPファンから始まったという成り立ちもあって、3次元が多かったんですね。
特にJO1やINIといった日プ出身のグループは、事務所や権利元自体が応援広告での利用を認めていて、素材も提供しているので実施しやすい。同じくオーディション番組出身のBE:FIRSTも同じように応援広告用の素材を提供しているので実施が増えています。
にじさんじさんとの応援広告の取り組み(※)を始めてから、2次元キャラや声優などの問い合わせや実施も増えましたね。
※「Cheering AD」では、VTuber /バーチャルライバーグループ「にじさんじ」の応援広告を受け付けている。