総勢12人の声優が出演するラッププロジェクト『ヒプノシスマイク』。実はMV第1弾が発表された2017年当時から、そのクオリティの高さに音楽業界も注目していたようです。

そこで『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』作者の服部昇大さんに、『ヒプマイ』音楽の"すごさ"をお伺いしてきました!

ラップバトルプロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』(以下、『ヒプマイ』)。男性声優が演じるキャラクターがラップで戦うという斬新なコンセプトが話題になり、MV(ミュージックビデオ)は突如Youtube急上昇ランキング3位にランクイン!  

そしてMV公開の約一ヶ月後、話題になっていたこんなTweetが。マンガ家の服部昇大さんによる『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』(以下、『美ー子ちゃん』)で『ヒプマイ』が取り上げられたのです。
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ヒプマイ

このTweetは 『ヒプマイ』で主な楽曲を手掛けているinvisible mannerの福山整さんまで届き、感謝のツイートが投稿されました。
”ガチの日本語ラップ文法””BL(バックロジック)感!”――褒められているのはなんとなくわかるけど、ラップ初心者な私たちにはどういう意味なのか正直よくわかりません……!

そこで、『美ー子ちゃん』作者・服部昇大先生を直撃。『ヒプマイ』音楽の"すごさ"を解説してもらいました。

Jポップのラップよりも"ヒップホップ"ど真ん中

『ヒプマイ』のココがすごい!"ガチのラップ"と絶賛される理由って?

ヒプマイ1

――まずは服部さんが最初に『ヒプマイ』を知った経緯と、そのときの印象を教えてください。

服部昇大さん(以下、服部) 最初に知ったのはMVの公開当日か翌日、Twitter上のRTで回って来たことからです。”男性声優12人によるラッププロジェクト”という今までにない企画で、一瞬「これは何かの冗談なのか? それとも夢?」と疑いました。

……かと思いきや、聞いてみると本気が感じられる企画で驚きました。声優の方々のラップの完成度がとにかく高い! やはり声のプロなんだな、と感じました。  
                                                       
ちょうどあの時期はTV番組『フリースタイルダンジョン』で”ラップ”や”ラップバトル”が浸透してきたタイミングかつ、LDHさんの『HiGH&LOW』で”不良のバトルもの”が流行っていたタイミング。

"不良"×"ラップバトル"さらに"声優(キャラクター)"を絡めたというのは見事なアイディアだな、と。僕も女性向けアニメを観る方なのですが、楽曲だけじゃなく、ビジュアルやキャラクターの完成度も素晴らしいですよね。
いちマンガ家の感想で申し訳ないですが……。        ――『美ー子ちゃん』で”よくできているのよね”と書かれていたのは、そのあたりを指すのでしょうか?  
                                                       
服部 Jポップや日本のポップ音楽における”ラップ曲”とされるものって、実はヒップホップとは別物だったりします。ですが、『Division All Stars「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」』がまさにヒップホップど真ん中の曲だったのでびっくりしたんです。                                                      
                                                       
福山整さんとのやりとりのなかで発言した”ガチの日本語ラップ文法で作り込まれている”というのは、”ヒップホップマナーにのっとっている”というニュアンスですね。  

ヒップホップは先人の歌詞やスタイルを取り込んだりサンプリングしたりして、”こういう感じが好き!”というのを新しく表現していくハイコンテクスト(※)な文化でもあります。 『ヒプマイ』の楽曲もそのあたりを踏襲していて「作り手のヒップホップ好きっぷりを見事に作品にしている!」とも感じました。  

『Division All Stars「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」』はまさに日本語ラップの粋を結集したような曲。むしろこれから日本語ラップを聴いていく入り口に最適じゃないでしょうか。

※「ハイコンテクスト」=物事の背景や文脈を重視すること  

ヒプノシスマイク Division All Stars「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」Music Video

2017年10月19日に公開された『ヒプマイ』MV第一弾via www.youtube.com――同じく、『美ー子ちゃん』で仰っていた”メイン曲のBL(バックロジック)感!”という意味についても教えていただけますか?  

服部 BACHLOGIC(バックロジック)は、日本語ラップ界でトップクラスのプロデューサーのことで、作った曲は音がバキバキに鳴り響く壮大な曲が多いんです。例を上げるとRHYMESTERの『ONCE AGAIN』が有名ですね。
『Division All Stars「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」』を初めて聞いたときに、そのあたりにも通じるトラックだ! ……と興奮しまして、思わず書いてしまいました。

ラップマニアも頷く、声優のスキル

『ヒプマイ』のココがすごい!"ガチのラップ"と絶賛される理由って?

ヒプマイ2

こちらはバトルシーズンの1 st Battle CD『Buster Bros!!! VS MAD TRIGGER CREW』――声優さんのラップスタイルの印象はどうでしょうか?

服部 個別に話していくとキリがないのですが、声の高いラップ、低いラップ、早口なラップ、歌っぽいラップ、喋りっぽいラップ、叫びっぽいラップ、エモいラップ、あえて平坦なラップ、ポエトリーリーディングっぽいラップ……など「いるいる、こういうラッパー!」とマニアもうなずく様々なラップスタイルを、みなさん見事にキャラクターに落とし込んでいるのがとにかくスゴイと思います。

特に僕が好きなのは山田三郎役・天﨑滉平さんのラップスタイル。彼はいわゆる高い声で早口のフリーキー(※)。
あえてところどころのリズムを外してるのがカッコイイ!
                                   
日本語ラップリスナーもこういうマイクリレー曲で「〇番目のラッパーヤバいよね」と盛り上がったり、いわゆる"推しラッパーを見つける"みたいなことをやってきてるので、『ヒプマイ』ファンのみなさんと似た楽しみ方をしています(笑)。

そういえば、イケブクロ・ディビジョン『Buster Bros!!!』中の『俺が一郎』では木村昴さんが好良瓶太郎名義で作詞を担当しているんですね。木村さんの本気を感じました。

※「フリーキー」=型破りなこと――さて、4月にはバトルシーズンが開幕しました。ディヴィジョン同士のラップバトルはいかがでしたか?

服部 3vs3のラップバトルというのは実際にラップバトルで行われる形式なのですが、それを楽曲にするというのは今までなかった、とても面白い試みだと思います。バトルリレーでもありマイクリレーにもなっているのが上手いですね。  
物語的にもさらに展開していくと思うので、そちらも期待しています!  

――ありがとうございました!

ヒプノシスマイク Division All Stars「ヒプノシスマイク -Division Battle Anthem-」

2018年4月27日に公開された、バトルシーズンのアンセム曲ともいえるMV第二弾はコチラ!via www.youtube.com

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{% assign arg1 = "ヒプノシスマイク,JNp9R" | split: "," %}{% render 'article_tagged', arg1: arg1 %}■服部昇大さんプロフィール■
『未来は俺等の手の中~J.P. STYLE GRAFFITI~』で、第67回手塚賞準入選。同作が「月刊少年ジャンプ」に掲載されデビュー。代表作に『今日のテラフォーマーズはお休みです。』魔法少女パロディギャグマンガ『魔法の料理 かおすキッチン』など(ともに集英社)

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