大ヒット作品『鬼滅の刃』に登場するキャラクターの魅力に迫る連載コラム。今回は、主人公・竈門炭治郎とその妹・禰豆子(禰豆子)をピックアップ。
今作に登場する様々なキャラクターの魅力を解説する本連載コラム、煉獄杏寿郎、宇髄天元、鬼舞辻無惨らに続き今回はついに主人公である竈門炭治郎・禰豆子の兄妹をピックアップ。
過酷な運命に立ち向かい、連載での物語が終わってもなお多くの人を魅了し続ける二人の人気の秘密に迫ります。
※本記事は性質上、アニメ本編後の原作の内容を含みます
DVD『鬼滅の刃』11 画像
via DVD『鬼滅の刃』11巻 より兄・炭治郎が妹・禰豆子を救う話…だけじゃない?
マンガ、アニメ、そして映画と形を変え、大勢の人々に愛され続ける『鬼滅の刃』。この作品を端的に紹介するのであれば、ずばり「主人公・炭治郎が鬼にされた妹・禰豆子を人間に戻すための旅の物語」です。
鬼の黒幕である鬼舞辻無惨に家族を惨殺され、唯一辛うじて生き残っていた妹・禰豆子まで鬼にされた炭治郎。
本来であれば、一度鬼になってしまった人間を元に戻すことは不可能と考えられています。ですがそれでも、炭治郎は禰豆子を人間に戻すことを簡単には諦めませんでした。
鬼となり、太陽の元を歩けなくなった禰豆子をそれでも共に連れ。鬼舞辻無惨を倒すべく、彼女を人間に戻すべく、彼は一緒に長い旅路を歩むこととなりました。このようなあらすじから、大まかにこの『鬼滅の刃』を「兄・炭治郎が妹・禰豆子を救う、あるいは助ける物語」と把握している人もきっと多いはず。
事実、鬼となったことで禰豆子は陽の光の下を歩けなくなり、一方で死ねない体となった分だけ、多くの危険に見舞われたり数多の怪我や傷を何度も負う形となりました。

Blu-ray『鬼滅の刃』3巻(完全生産限定版)
via Blu-ray『鬼滅の刃』3巻(完全生産限定版)そんな禰豆子を思い「禰豆子が可哀想だ」「兄である自分が彼女を助けなければ」と、炭治郎が思いを馳せるシーンが作中では何度も登場します。ですが実は、この物語で核となる重要な局面において、この立ち位置はかなりの確率で逆転する現象が起きています。
『鬼滅の刃』のストーリーにおいて、いくつか現れる大きな転換点となるシーン。
そこには「妹・禰豆子が兄・炭治郎を救い、助け、あるいは導く姿」が数多く描かれているのです。
禰豆子「幸せかどうかは私が決めること」
まず最初にそれが印象的に描かれているのは、原作11巻「遊郭編」で訪れる鬼殺隊最大のピンチのシーン。頼みの綱であった柱・宇髄は倒れ、そのまま炭治郎は善逸と共に鬼の攻撃を受け、瓦礫と共に崩れ落ち気を失いました。
気絶している最中、彼は夢の中で人間だった頃の禰豆子と相対します。そこで禰豆子は涙ながらに、炭治郎をこう叱咤激励しました。「謝らないでお兄ちゃん どうしていつも謝るの? 貧しかったら不幸なの? 綺麗な着物が着れなかったら可哀想なの?そんなに誰かのせいにしたいの?」
「幸せかどうかは自分で決める 大切なのは“今”なんだよ 前を向こう 一緒に頑張ろうよ 戦おう 謝ったりしないで お兄ちゃんならわかってよ 私の気持ちをわかってよ」
(『鬼滅の刃』11巻より引用)人間だった頃も、炭治郎は禰豆子に辛い思いをたくさんさせていたと思っていました。
欲しい着物も買ってやれず、妹や弟の世話ばかりさせて、自分の好きな事を何一つさせてやれなかった。
挙句の果てに、鬼という異形の生き物にされてしまった妹。
そんな彼女を可哀想に思い、また同時に妹にそんな苦しみを背負わせている自分を、彼は責めるような言動を度々見せています。

Blu-ray『鬼滅の刃』9巻(完全生産限定版)
via Blu-ray『鬼滅の刃』9巻(完全生産限定版)ですがそれが例え家族であったとしても、誰かを“可哀想”だと思う感情は、結局はその人の主観でしかありません。周囲からどれだけ“可哀想”に見えたとしても、本人がそれをどう思っているかは全く別の話です。
むしろ自分が今の状況を幸せだとすら思っているのに、それを近しい人に“可哀想、可哀想”と言われてしまうと、あまりいい気はしませんよね。
あまつさえ目の前に遂行しなければならないことがあるというのに、自責や憐憫の念で足を止めている場合ではないというのに。
諦めの気持ちに囚われそうになっている炭治郎に対して、禰豆子は無意識化で背中を押してくれたのでしょう。その後押しから、炭治郎は究極に追い詰められた状況からなんとか脱しようと、悪足掻きにも近い奮起を見せます。
結果、それを引き金に4人共が最後の力を振り絞り、無事一人の犠牲も出すことなく、上弦の陸を撃破する事に成功したのです。
立ち止まらずに、前へ…兄・炭治郎は妹に何度も背中を押されて

DVD『鬼滅の宴』 (完全生産限定版)
via DVD『鬼滅の宴』 (完全生産限定版)禰豆子が炭治郎を助けたのは、なにもこのシーンだけに留まりません。その後にも重要局面では度々、分かりやすく彼女が兄を支えたシーンが登場します。
原作15巻「刀鍛冶編」での決着の際も、上弦の首と禰豆子の命を天秤にかけ即座に決断ができなかった炭治郎。
迷いを断ち切れなかった炭治郎を文字通り禰豆子が「蹴り飛ばし」前進させたことで、結果として万事が上手く収まります。
(後日きちんとこの瞬間について、自らの迷いを正直に認めていたのは非常に炭治郎らしい点ですが)
そして原作23巻の無惨との最終決戦後、予想だにしなかった炭治郎の最悪の展開をなんとか未然に防げたのも、禰豆子というキーパーソンの存在あってこそでした。
禰豆子を救う為、鬼を滅ぼす旅に出た炭治郎。彼の旅は皮肉にも、禰豆子に救われたことによってその終わりを迎えたのです。こうして見るとこの『鬼滅の刃』という物語にとって、そして主人公・炭治郎にとって、妹・禰豆子がどれだけなくてはならない存在であったかが、非常に明確に見えてくるのではないでしょうか。
「守られるだけではない、新たな物語のヒロイン像」としても一躍人気となった禰豆子。
一方的に支えられるのではなく、お互いに支え合い救い合う。そんな竈門兄妹の姿があったからこそ、『鬼滅の刃』はここまで面白い物語となったのではないかと思います。
(執筆:曽我美なつめ)
竈門炭治郎プロフィール
竈門炭治郎(かまど たんじろう)CV.花江夏樹
年齢:13歳→15歳
誕生日:7月14日
身長:156cm→165cm
好物:タラの芽、梅昆布おにぎり
『鬼滅の刃』の主人公。
鬼となった妹を人間に戻すため、家族の仇討ちのため鬼殺隊に入る。心優しい性格。
竈門禰豆子プロフィール
竈門禰豆子(かまど ねずこ)CV.鬼頭明里
年齢:12歳→14歳
誕生日:12月28日
身長:150cm→153cm
好物:金平糖
炭治郎の家族の中で唯一の生き残りだが、鬼に変貌してしまう。
TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編
2021年 TVアニメ化決定スタッフ
原作:吾峠 呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン:松島晃
アニメーション制作:ufotable
キャスト
竈門炭治郎:花江夏樹
竈門禰豆子:鬼頭明里
我妻善逸:下野紘
嘴平伊之助:松岡禎丞
宇髄天元:小西克幸
(TVアニメ『鬼滅の刃』遊郭編公式サイトより引用 https://kimetsu.com/anime/yukakuhen/)■ 『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎と宇髄天元の“死の価値観”とは。遊郭編は無限列車編との対比性に注目
https://numan.tokyo/anime/z3y87
■コロナ禍でも響く『鬼滅の刃』嘴平伊之助の名言。無限列車編で変化した“死”への概念
https://numan.tokyo/anime/hUzLg
■アニメ『鬼滅の刃』キャラクターの魅力徹底解剖まとめ!【竈門炭治郎&禰豆子、我妻善逸、胡蝶しのぶ、煉獄杏寿郎、鬼舞辻無惨etc.】
https://numan.tokyo/anime/yakmL