『このマンガがすごい!2019』にも選ばれ、実写映画化も決定している話題作『メタモルフォーゼの縁側』。推し活女子に響くポイントは? 完結した今、改めてその魅力を振り返ります。

どこまでも優しく、あたたかい物語――鶴谷香央理著『メタモルフォーゼの縁側』は、宝島社 『このマンガがすごい!2019』オンナ編第1位や第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞などを受賞したマンガです。

ひとりの老婦人がひょんなことをきっかけにBLマンガの存在を知り、女子高生と出会い交流していく姿を描いた本作は、「好きなものを誰かと共有できる喜び」を描き、多くの読者を魅了しました。
そんな『メタモルフォーゼの縁側』、「推し」を応援する「推し活」に全力な女子におすすめしたい作品なのです。

なぜ「推し活」女子にすすめたい作品なのか? 本コラムでは「人や作品が”好き”という想いを伝え合い、共有すること」の喜びや醍醐味が描かれた作中シーンをピックアップしながら、おすすめポイントを紹介していきます。
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via 『メタモルフォーゼの縁側』第1巻(KADOKAWA)

趣味に年齢や所属は関係ない。

まず『メタモルフォーゼの縁側』を読んで感じること。それは描かれている世界がとても優しく、時間の流れが穏やかであることです。

アニメやマンガなど、趣味を全力で楽しむカルチャー女子の姿はこれまでも様々な描き方をされてきました。
本作は主人公となるキャラクターに特別勢いがあるわけではなく、あくまで日常の中で起きる些細な出来事に焦点を当てて描かれていることが特徴です。
本屋でアルバイトをする主人公・佐山うらら。ある日店へとやって来た老婦人・市野井雪がBLマンガを購入したことをきっかけに知り合い、ふたりの友人関係が始まります。
うららはBLマンガが好きなことを家族や他人に話せず、学校でもクラスメートの輪に馴染めずにいました。そんな中、初めてできた共通の「好きなもの」がある雪と次第に親しくなっていきます。

ふたりの距離がゆっくりと一歩ずつ近づいていく様子を描いた本作は読者を癒し、同時に「同じ趣味を持つ友達」ができた時の嬉しさを思い出せてくれます。
『メタモルフォーゼの縁側』は推し活女子に読んでほしい。“好き”で繋がる喜びを思い出させてくれた

『メタモルフォーゼの縁側』より 画像

『メタモルフォーゼの縁側』は推し活女子に読んでほしい。“好き”で繋がる喜びを思い出させてくれた

『メタモルフォーゼの縁側』より画像2

(C)Kaori Trusutani 2021今では簡単にそういった友人関係をネットで築くことができる時代になりましたが、本作ではあえてアナログで出会うふたりを描くことによって、現実世界での人とのつながりに重きを置いて描かれています。

BLマンガ、という本を通して仲を深めていくふたりを見ていると、趣味を語らうことに年齢や所属は関係ないのだ、ということを気づかされます。歳の差があっても楽しそうに語らうふたりを見て、こんな友人を持ってみたかった!と羨ましくなるかもしれません。

「好き」を表現することでつながっていく。

また、本作では1巻で雪とうららが同人誌の即売会へ行く回や、その後うららが自分で同人誌を作ってみたいと思い立ち、サークル参加する回が描かれています。「推し活」をしている女子なら、やはり「好きなものに対する熱意」をどこかにぶつけてみたいと思うことでしょう。

「私がうららさんだったらね もう 描いてみちゃうかもしれないわ」
―『メタモルフォーゼの縁側』第2巻より

雪の言葉をきっかけに、うららは初めてマンガを描き、同人誌を作ることを決意します。その姿に、どこか自分を重ねる読者もいるのではないでしょうか。
『メタモルフォーゼの縁側』は推し活女子に読んでほしい。“好き”で繋がる喜びを思い出させてくれた

『メタモルフォーゼの縁側』より画像

『メタモルフォーゼの縁側』は推し活女子に読んでほしい。“好き”で繋がる喜びを思い出させてくれた

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(C)Kaori Trusutani 2021表現方法はそれぞれ違っても、「好き」という気持ちをを自分の手で表現してみたい――本を作ることだけに限らず、ファンレターを書くことや日々募る思いをSNSに書き連ねることも同じ。
自分から何かを発信してみる第一歩を後押ししてくれるマンガが、『メタモルフォーゼの縁側』なのです。そして、雪のサポートもあって初めてのサークル参加を果たしたうららに思いもよらない出来事が訪れます。ふたりで作品について語り合った大好きなBL漫画家が、うららの作品を手に取るのです。

「この漫画のおかげで 私たちお友達になったんです
描いてくださってありがとうございました」
―『メタモルフォーゼの縁側』第5巻より

それは、即売会という一期一会の場所で起きた奇跡でした。自分で作品を描くという一歩踏み出す勇気が、うららと彼女たちが愛する「推し」作家を繋げたのです。

自分の発信したものから輪が広がっていく瞬間は、思わず「(人や作品を)好きでいてよかった」と感じてしまいますよね。「好き」という気持ちを外側に向かって発信することの喜びを感じられる、心温まるエピソードです。

実写映画ではどう描かれる?

「推し」を愛する女子が共感できるマンガ『メタモルフォーゼの縁側』。実写映画化が決定し、1月7日に作者の鶴谷香央理先生がツイートで告知しました。

一回りも二回りも年齢が違う雪とうらら。それでも好きなものを遠慮なく語り合える、かけがえのない友達。緩やかで優しい空気の漂うふたりの日々がどのように実写で描かれるのか、期待しながら公開を待ちたいですね。

(執筆:安藤エヌ)

■『メタモルフォーゼの縁側』特設サイト:https://promo.kadokawa.co.jp/engawa/
(C)Kaori Trusutani 2021

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