CLAMPの伝説的大ヒットコミック『ホリック xxxHOLiC』(以下、『xxxHOLiC』)を蜷川実花監督が実写映画化! 侑子を演じる柴咲コウさんはもちろん、神木隆之介さん、松村北斗さん、磯村勇斗さんの姿にも注目です。
『カードキャプターさくら』『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』などの超ヒット作をいくつも誕生させてきた創作集団・CLAMP。本作は人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が視えてしまう能力を持つ高校生・四月一日(ワタヌキ)が不思議な【ミセ】にたどり着き、対価と引き換えにその能力を女主人・侑子に消してもらおうとするところからはじまります。ミセで半ば強制的に働かされる中で、侑子やミセの客人、同級生たちとの出会いが四月一日の日常にどんどん変化をもたらしていくというストーリー。
そんな本作を『ヘルタースケルター』『Diner ダイナー』を手掛けた蜷川実花監督が実写映画化! 主要キャラクターとなる四月一日君尋を神木隆之介さんが、壱原侑子を柴咲コウさんがつとめます。ほかにも松村北斗さん、磯村勇斗さんら豪華キャストが出演。そんな4月29日(金・祝)から全国公開となった本作を、原作ガチ勢のライターが一足お先に鑑賞してきました。
※一部ストーリーの内容に触れています。
映画『ホリック xxxHOLiC』メインビジュアル
via 映画『ホリック xxxHOLiC』メインビジュアル侑子の【ミセ】と柴咲コウの再現度が半端ない…!
筆者が鑑賞前に一番気になっていたのが侑子の【ミセ】。「ストーリーじゃなくてそこ?」と思われるかもしれませんが、ミセは“あちら側”と“こちら側”を線引きする重要なファクター。ミセが異質であればあるほど、この映画の吸引力も高まります。同映画では、四月一日がミセへたどり着くまでの道のりが原作よりもとても長く描かれていました。背景の見せ方が絶妙で、始めは繁華街の雑踏や人の往来が強調されており、建物の映し方も具体的。しかしミセの入り口に近づくにつれて彩色のみが強調され、輪郭はぼやけて抽象的になっていきます。

映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真1
via 映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真より極彩色の背景に囲まれた四月一日はどこを切り取っても絵になっていて、見ている側もどんどん陶酔。光の強弱とアングルの変化でここまで異質性を表現できるのか!と脱帽です。ようやくミセにたどり着き侑子と対峙する瞬間、今度は逆に画面いっぱいに様々な小道具の要素が詰め込まれており、視覚的な情報が一気に流れ込んでくるように緻密な設計が施されていました。
そしてそこにゆったりと腰掛ける侑子にも注目。

映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真2
via 映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真より和洋折衷の豪華な侑子の衣装。これを3次元で表現することは不可能では…?と、鑑賞前はそう考えていました。しかしどれも見事に再現されているどころか、蜷川監督の持つオリジナリティも美しく共存。これを着こなす柴咲さんのスタイルの良さがあってこそですが、監督や衣装さんの細部に至る調整とこだわりが見受けられます。柴咲さんが演じる侑子は、謎が多く妖艶な姿は原作そのままで、四月一日へ向けた眼差しの中にはたくさんの感情が見え隠れします。
また声の抑揚の付け方に特徴があり、終盤でそれが顕著になっていくのですが、静かな中に哀しみと凄みが混ざった不思議な声は強烈に耳に残ります。
神木隆之介、松村北斗、磯村勇斗…3人のイケメンから目が離せない
同映画で驚いたのは四月一日、百目鬼 静、アカグモの3人の男性キャラクターの存在感! それぞれが違う方向性の魅力を持ち、物語の中で引っかかりを作っていきます。その引っかかりが解決されないまま、むしろどんどん増えていくので、3人の次の行動が気になって気になって仕方がない!(笑)どのCLAMP作品にも大なり小なり含まれる“救いのなさ”は、登場人物をとにかく苦しめて絶望の淵に突き落としてくるのですが、『xxxHOLiC』は世界観が現代寄りなだけに「リアルで救いのない展開」が用意されています。そして同映画でその展開に巻き込まれたり、自ら介入したりと良くも悪くもこの翻弄されるのがこの3人というわけです。

映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真3
via 映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真より他人と距離を置いて孤独になろうとする四月一日の心の成長を、神木さんは作品内で丁寧に丁寧にたどっていて、その歩みの中には目を覆いたくなるほどの苦しさがありました。この成長は映画の序盤と終盤の四月一日の顔を見れば一目瞭然。その変化に感動を覚えます。原作とはまた違った表現方法をとっていて印象的だったのが、女郎蜘蛛(吉岡里帆)に四月一日が心を入り込まれていくシーンの数々。数回に渡って彼女と接触するうちに、絶望や葛藤や諦めなど様々な感情で変わるその目つきには、なんとも危うい色気があって背筋がゾクゾクします。

映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真4
via 映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真より松村北斗さんの百目鬼は静寂をまとっていて、無口で何を考えているのかわからないけれど、人間愛に満ちていて。安直な言葉では表現できない不器用な寡黙さがありました。そして百目鬼といえば弓! もちろん同映画にも弓を射るシーンは何度も登場します。そう、ストーリーの都合上、何度も何度も(笑)。毎回少しずつカメラアングルが異なるので、そのシーンに差し掛かるたびに鍛え抜かれた松村さんの肉体美と所作の上品さに目を奪われること間違いなし。この映画のオリジナルキャラクターであるアカグモを演じるのは磯村勇斗さん。このアカグモという男、物語の冒頭から周りの人々を狂わせます。飄々としていて掴みどころがない彼が、実は変態的に一途…というギャップを持つところが秀逸すぎる!
もしかしたらアカグモが一番救いのない人物かもしれません。そんなとてつもなく難しい役どころに挑まれた磯村さんですが、彼のアカグモだからこそ『xxxHOLiC』の世界でも埋もれず、物語に刺激的な読点を設ける存在になっていると強く感じました。

映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真5
via 映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真より学校のお昼休憩やお祭りシーン、オフの表情にも胸が熱くなる
オカルトファンタジーな本筋の中に、コミカルなシーンがアザーとして要所で紛れ込んでいる、というのも鑑賞する際の重要ポイント。例えばミセのマルダシ(DOAKO)とモロダシ(モトーラ世理奈)と四月一日の家事のシーンや、学校の中庭で九軒ひまわり(玉城ティナ)、百目鬼、四月一日の3人で昼食をとるシーンなど、実写映画でしか見ることのできない各キャラクターのオフの顔をたくさん垣間見ることができます。

映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真6
via 映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真より個人的に動線が綺麗だなと感じたのが、お祭りで百目鬼と四月一日が買い食いするシーン。出会った当初は愛想笑いしかしなかった四月一日が年相応に笑い、無邪気な顔をしそうにない百目鬼が少し笑いながら相手を茶化すような素振りをみせる。

映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真7
via 映画『ホリック xxxHOLiC』場面写真よりこの、つかの間の団らんとしたシーンで、この2人の信頼感がようやく絵になって見えてくるんです。そしてあとに待ち受けている過酷な展開も、この絆を先に見ていたことで胸の熱さが加速しました。蜷川監督が10年間構想を練っていたという熱量が端々から伝わってくる新体感ビジュアルファンタジー、映画『ホリック xxxHOLiC』は2022年4月29日より上映開始。圧倒的映像美をぜひ劇場で体感してみてください。(執筆:ナスエリカ)
映画『ホリック xxxHOLiC』作品概要

映画『ホリック xxxHOLiC』
4月29日より公開中!<ストーリー>
願いを叶えるには、代償が必要。
さあ、あなたの願いは?
人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”が視える孤独な高校生・四月一日(ワタヌキ)。その能力を消し去り普通の生活を送りたいと願う四月一日は、ある日、一羽の蝶に導かれ、不思議な【ミセ】にたどり着く。妖しく美しい【ミセ】の女主人・侑子(ユウコ)は、彼の願いを叶えるために、“いちばん大切なもの”を差し出すよう囁く。同級生の百目鬼(ドウメキ)やひまわりと日々を過ごし“大切なもの”を探す四月一日に、“アヤカシ” を操る女郎蜘蛛らの魔の手が伸びる。世界を闇に堕とそうとする彼らとの戦いに、侑子や仲間たちと共に挑んだ四月一日の運命はーー?!
<スタッフ・キャスト>
監督:蜷川実花
出演:神木隆之介 柴咲コウ
松村北斗 玉城ティナ
趣里/DAOKO モトーラ世理奈
磯村勇斗 吉岡里帆
原作:CLAMP「xxxHOLiC」(講談社「ヤングマガジン」連載)
脚本:吉田恵里香
音楽:渋谷慶一郎
製作:映画「ホリック」製作委員会
配給:松竹 アスミック・エース
©2022映画「ホリック」製作委員会 ⓒCLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社・公式サイト:https://xxxholic-movie.asmik-ace.co.jp/
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