特集:ランクル・レトロスペクティブ●絶賛延長中のランクル熱狂時代。欲しい気持ちが先立ち、本質を理解せず手を出せば、後悔がもっと先に立つ。
そこでお役立ち、プロに訊いた今のところのレトロスペクティブ。車種ガイド、相場、狙い目の最前線。
もともと人気の高いランドクルーザー。

そこにコロナ禍によって沸騰したアウトドアブームが重なり「ランクルが欲しいんです!」という人がさらに増えていると、国内屈指のランクル取り扱い台数を誇るカーショップ「フレックス・ドリーム」の谷崎さんは言う。

 ひと言でランクルといっても、その歴史は70年以上あり、大きく2つの系譜に分けられる。ひとつは「ランドクルーザー シリーズ」。もうひとつは「ランドクルーザー・プラド シリーズ」だ。

なかでも今回は、リアルクラシックとしてギリギリ普段の足替わりに使える60系以降のモデルの概要を、谷崎さんに紹介してもらった。

 

ランドクルーザーは60系、80系、100系、200系

 ・「これぞランクル」スタイルの60系
  
ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー60系。写真の後期型は角目4灯。前期型は丸目2灯だ。

 
北米をはじめ海外では、高機能な4WD車で長距離を走ることが多く、荷物をたくさん載せられて乗り心地もいいステーションワゴンタイプのニーズが高かった。

そこでヘビーデューティ系の40系から派生して生まれたのが50系で、その後継車が1980年に登場した60系だ。


 「スタイリングに根強いファンが多く、現在でも大人気のモデルです」(谷崎さん。以下カッコ内はすべて)。

▶︎ロンハーマンPRが乗るランクル60はこちら

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説



 60系は日本ではバン(商用車)として販売されたが、海外では乗用車仕様のステーションワゴンが販売されていた。

「エンジンのバリエーションは豊富で4.2L、4.0Lのガソリン、ディーゼルですと3.4L、4.0L、4.0Lのターボが存在します。

燃料の噴射方式やマニュアル、オートマチックとの組み合わせなど仕様変更も多いので、60の特徴を一概に説明するのは困難ですね。

トラックと同じ前後リジッド(左右輪を1本の車軸で連結する方式)のリーフサスペンションですから、乗り心地は“それなり”です」。

 「NoxPm法に抵触する車種のため、1、4ナンバー車は特定地域では乗ることが出来ません。60系で唯一当時のまま登録可能なのは後期モデルのVXガソリン、AT車(3ナンバー)ですが、当時国内販売用としては1300台ほどしか製造されていない、実はかなり貴重なモデルなんですよ」。



・“名車”と名高い80系


ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー80系。


60系の後継が1989年登場の80系で、日本でもステーションワゴン仕様(≒ガソリンエンジンの8人乗り)が設定されるようになった。

 「ランクル好きの間でも名車として名高いのが80系です。
2度のマイナーチェンジがあり、前期、中期、後期モデルが存在しますが、どのモデルも年々タマ数も減り、相場は上昇中です」。

 パートタイム式(一部グレードに設定)もあるが、ほとんどがフルタイム4WDを採用している。

▶︎コロナ禍に手に入れたランクル80はこちら

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランクル80にはオーバーフェンダーなしのボディバリエーションも存在する。


「ステーションワゴン仕様は当初4Lガソリンエンジンです。バン(≒ディーゼルエンジンの5人乗り)には4.2Lディーゼルターボもありました。またサスペンションのスプリングがリーフからコイルに変わり、乗り心地が大きく改善されています」。

 1992年にはガソリンエンジンが新開発の4.5Lエンジンに変更された。

 
・高級路線へ向かった100系

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー100系。


1998年に登場した100系はステーションワゴンが4.7L V8ガソリンエンジン、バンが4.2L直6ディーゼルターボを採用。

「フロントサスペンションがついにリジット式から独立懸架方式サスペンションになり、乗り心地が向上しました。快適度は80系がクラウンクラスだとすれば、100系はセルシオクラスです」。


ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

こちらがシグナスモデル。


全グレード2WD/4WDの切り替えが不要なフルタイム4WDとなったことや、車高調整が可能なアクティブサスペンションの設定が加わったこと、現在ならレクサスモデルに位置づけられるような高級車モデル・シグナスも追加されたのも、高級車志向の強まった100系を現していると言える。



・現代的ハイテクを纏った200系

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー200系。

 
100系の後継が2007年に登場したのが200系だ。

「極低速を自動で維持する世界初のクロールコントロールなど悪路走破性が高められるとともに、ラグジュアリー性も磨きがかけられました。ジャケパンスタイルでも似合うランクルです」。

国内販売では全グレードガソリンエンジンのみで、搭載されたV8エンジンは当初4.7Lからマイナーチェンジにより4.6Lに。後期モデルには衝突被害軽減ブレーキを含むトヨタ・セーフティ・センスPが標準装備された。

 
・現在4年待ち!?の現行型300系

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー300系。


2021年8月に登場した現行型である300系。「エンジンは3.5Lガソリンツインターボと、3.3Lディーゼルツインターボが用意されています」。

足回りは形式こそ200系を踏襲するものの大幅にリファインされ、上級グレードのGRスポーツには電子制御式スタビライザー(E-KDSS)が採用されるなど、悪路走破性と乗り心地の向上が図られている。


「久しぶりに国内でディーゼルエンジンがラインナップしたことも話題になりました。その人気や社会情勢も相まって、現在4年以上とも言われるぐらい納期が掛かっているようです」。
--{}--

ランドクルーザー・プラドは70系、90系、120系、150系

・プラドの“紀元前”的70系(ランドクルーザー・ワゴン)

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー・ワゴン70系(1985年)。


1985年、バン(商用車)の70系から派生した乗用車仕様が「ランドクルーザー・ワゴン」。これがランドクルーザー・プラドの祖となる。

「70シリーズ初となるワゴン仕様は3ドアのショートボディでした。エンジンは2.4Lディーゼルターボ。

もととなる商用の70系や60系とは異なり、乗用車仕様としてサスペンションは前後リジットとしながらもリーフスプリングではなく、乗り心地の良いコイルスプリングが採用されました」。
 

・初めてのプラド70系(ランドクルーザー・プラド)
 
ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー・プラド70系(1990年)。


さらに1985年には3ドアのみだったランドクルーザー・ワゴンに5ドアモデルが追加され、同時にサブネームの「プラド」が付けられた。

「ショートの選択肢もあり、伝統のラダーフレーム。クロカン4WDとしての性能はそのままに乗用車としてのパッケージされたランクルです」。


搭載エンジンは引き続き2.4Lディーゼルターボが採用されたが、1993年に3Lディーゼルターボに変更された。

 

・街乗りを意識した90系

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー・プラド90系5ドア。3ドアは丸目2灯となる。


1996年に登場した90系から乗用車志向が鮮明に。3ドアと5ドアではフロント周りのデザインが異なる。

「デビュー時の搭載エンジンは3.4Lガソリンと3Lディーゼルターボ。80系や100系と比べて排気量が小さいですが、ボディも小さいので扱いやすい一台です」。1997年に2.7Lガソリンが追加された。

「シャシーが当時のハイラックスサーフと共有化されたため、フロントが独立懸架式、リアがリジット式になりました」。また従来のパートタイム4WDではなく、フルタイム4WDとなっている。

 
・21世紀最初のランクル120系
 
ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー・プラド120系。


2002年に120系へとモデルチェンジ。
悪路走破性が高められるとともに、電子制御式エアサスペンションが用意されるなどオンロードでの快適性の向上も図られた。

「こちらもハイラックスサーフと共有のシャシーで、ショートボディも用意されました。デビュー時の搭載エンジンは3.4Lと2.7Lのガソリン。3Lディーゼルターボがあり、2005年にガソリンエンジンは3.4Lが4Lに切り替えられました」。
 

・後期型で人気に火がついた現行型150系 

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

ランドクルーザー・プラド150系。


2009年に登場した150系から、国内では5ドアモデルのみの販売となった。

「デビュー時の搭載エンジンは4Lと2.7Lのガソリンエンジン。極低速を自動で維持するクロールコントロールや、首位の路面状況を確認できるマルチテレインモニターなどが用意されました」。

「後期モデルは迫力のあるフロントマスクに変わり、人気がかなり高まっています」。2015年には2.8Lディーゼルターボが追加され、2017年に衝突被害軽減ブレーキを含むトヨタ・セーフティ・センスPが標準装備された。

海外で生き続ける70系のバン(商用車)

ランクル60と80の違いは? プラドのメリットは? ランドクルーザーを系統別にザクっと解説

2014年に再販された70系。


60系などのランドクルーザーと、90系などのランドクルーザー・プラドとは別に、ランドクルーザーの祖であるBJ型の正統後継車の「ヘビーデューティ」系もある。

1984年に登場した70系バン(商用車)がそれだ。プラド70系はこの70系バンの乗用車仕様で、そこからプラドへと独自進化していったというわけだ。

「さまざまなバリエーションのある仕様はとても語り切れませんが、あくまでも“ギア(道具)”に徹しており、いずれもシンプルなパッケージで余計な装備は設定されていないのが特徴です」。

日本では2004年に販売が終了しているが、今でも海外では70系バンは販売されている。

「この“復刻版”は、AT(オートマ)が設定されていなかったにも関わらず、想定以上の販売台数だったようで高値で取引されています」。

このように、ランクルにはひと口では語りきれない多くのバリエーションが存在する、スタイルやスペック、装備、乗り心地など、ランクルの中でも自分は何が欲しいのか? を冷静に見定めることがまずは重要なのだ。

次回はそれぞれの系統ごとの現在の市場動向を深掘りする。

 
[取材協力]
フレックス・ドリーム
www.flexdream.jp
編集部おすすめ