航続可能距離はカタログ値で485km(WLTC)。719万円。
▶︎すべての画像を見るボルボ初のBEVである「C40 リチャージ」。既にボルボは新車での販売を全車種ハイブリッドへ移行。サステイナブルな取り組みをいち早く進めてきた。そして、その取り組みは電動化だけでない。「0%レザー」。つまりは、内装に本革をいっさい使用しないことも掲げている。また、ルーフからリアにかけて傾斜するデザインや、ふたつのスポイラーを設置したのも、空力特性を向上させ航続距離を最大化することで、電力消費を可能な限り抑える役割を果たしているのだ。
BEV時代への皮切り
2030年には販売する全車種をBEV、すなわち完全なる電気自動車にすると公言しているボルボ。’20年には既に全車種のハイブリッド化を完了させており、現在はPHEV、すなわちプラグインハイブリッドへのシフトも活発化させています。既存メーカーの中では最も野心的に電動化への道を歩むメーカーの、本格的なBEV市場投入への皮切りとなるのがこのC40 リチャージです。C40のベースとなったモデルはコンパクトSUVのXC40ですが、ファストバック調のキャビンでクーペフォルムを形成したBEV専用デザインとしています。グレードは前・後輪をふたつのモーターで各々ドライブする4WD、前輪のみにモーターを持つ2WDのふたつを用意。4WDはスポーツカー並みの動力性能が売りとなりますが、BEVはゼロ発進から力が最大に発揮されるため、2WDでも実用域での速さは十分に感じられるはず。
充電も日本のCHAdeMO規格をカバー、新しい高出力仕様にも対応できる余力がありますから不自由はないでしょう。そして2WD仕様のほうは電池容量=航続距離と価格の相関関係的にも、今後登場する日本製BEVに十分伍せる競争力を備えているといえます。
自動車ライター渡辺敏史出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。
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人が主役になる車
ボルボは格好いい車を造るブランドじゃない、なんて書くと誤解を招くので、ちゃんと説明します。自動車メーカーは高級車になるほど、「どないだー! カッコええやろ!」というノリで車を造る。でもボルボは違う。格好いい車というより、乗る人が格好良く見える車を造るのだ。最近のボルボに乗っている人は知的でセンスがいい人に見えるし、ちょっと前のカクカクしたボルボに乗っている人は“イイ人”に見える。で、ボルボ初のBEV専用車、C40 リチャージも、そんな伝統を継承する。内外装の造形はご覧のとおり、でしゃばることなく、あくまで乗る人が心地良い時間を過ごせるようにデザインされている。そのあたりは北欧家具のテイストにも共通する。
いざ走らせれば、モーターのワープ的加速でビビらそうとするブランドもある中で、ボルボC40は人間の感性に寄り添った、ナチュラルな加速で和ませてくれる(本気で踏めば、メッチャ速いけれど)。というわけで、C40は車じゃなくて人間を主役に置く、いかにもボルボらしいBEVだった。この先、BEV化と自動運転化が進むと、「刺激的なエンジン音」や「シャープな操縦性」はウリにならないから、ボルボ的世界観がさらに意味を持つはずだ。
モータージャーナリストサトータケシフリーランスのライター/編集者。最近は、いろいろなメーカーのBEVを乗り比べる機会が増えたらしい。「BEVになったらどれも同じという説は間違いです」とのこと。
日本車やドイツ車とは違う視点
ボルボは電動化に向いているブランドのひとつ。安全と環境への配慮が最大のウリですし、最近ではデザインの魅力を加えて、まるでこれからの時代をとうに見越していたかのよう。スウェーデンという小国に生まれて、モビリティの行き先を日本やドイツとは“違う目”で見つめてきたのかもしれません。そして、いよいよ未来への試金石というべきBEVのC40 リチャージを発売。はたしてボルボらしい車に仕上がっているのかどうか。“らしい”という意味では走行性能がさほど重要ではなかったブランドです。
だからこそ、内燃機関から電気モーター&バッテリーへの変換もうまくいくと思ったわけです。なので、走行性能を問うのは少しお門違いだとは思うものの、乗ってみて魅力のない、ただモーターによる加速だけがバカみたいに速い車じゃ購買欲の湧きようもありません。そこはたとえBEVであっても„らしさ„の演出が欲しい。それもまたC40 リチャージに期待したことでした。結果は◎。重量バランスの良さとパワー制御の緻密さが安心感となってドライバーに伝わってくる。乗っていて平和な気分になる。落ち着く。デザインや素材選びも含めて、この包み込む力こそ北欧からやってきたボルボらしさなのだと思った次第です。
モータージャーナリスト西川 淳フリーランスの自動車“趣味”ライター。得意分野は、スーパースポーツ、クラシック&ヴィンテージといった趣味車。愛車もフィアット500(古くて可愛いやつ)やロータス エランなど趣味三昧。