▶︎すべての画像を見る業界きってのスニーカーコレクターである「スキット」のオーナー・鎌本勝茂さん。所有するスニーカー数は2000足以上、専用の保管部屋まで借りるほどの偏愛ぶりだが、その保管方法にもかなりこだわりがあるらしい。
▶︎動画も観てね!話を聞いたのは……「スキット」オーナー・鎌本勝茂さん 鎌本勝茂●現在は吉祥寺、大阪、仙台、福岡に店を構えるスニーカーショップ「スキット」の大黒柱。18歳でスニーカー業界に足を踏み入れ、販売やバイイングを経験。そのキャリアは20年以上にも及ぶ。オリジンへの愛着はひとしおで、さらには眠れる名品を掘り当てる嗅覚と目利きにも秀でる。
「アッパーの素材によっても保管方法はさまざま。間違えた方法で保管しているとスニーカーを劣化させる危険性があります」。“加水分解”や“黄ばみ”といった大敵から、どのように愛用スニーカーを守っているのだろうか。今回は、鎌本さんが普段実践している保管術を聞いた。
履いたら汚れ落とし&天日干しを!
まず鎌本さんが取り出したのは、レザー(合皮)アッパーの「エア ジョーダン 1」。聞けば、スニーカーをしまう前にはやっておくべきことがあるという。「どのスニーカーにも言えることですが、履き終わったらタオルで水拭きしたり、ブラッシングでホコリを落としたりと、ひととおり汚れを落としておきましょう。そしてスニーカーをしまう前には、必ず天日干しすることが大事。ベランダや庭など日光が当たるところに置いておきます。
これをやっておくとカビの予防になります」。
鎌本さんは以前、スニーカー用クリーナーを作っている知り合いに「太陽に敵う除菌はない」と聞いてから、天日干しを習慣づけるようになったとか。「天日干しは30分から1時間くらいでも構いません。出勤前に身支度をする時間だけでも十分だと思いますよ」。長時間日光に当てると黄ばみの原因になるので要注意。長くても半日程度にしておいたほうがいい。これで下準備は完了。いよいよスニーカーをしまっていく。段ボール製のシューズボックスで保管する人も多いが、鎌本さんが使うのはコレ。--{}--
スニーカーはフリーザーバッグに入れて密封を!
ジップロックを代表する食品保存用のフリーザーバッグである。「密封できるため、スニーカーの加水分解を防ぐことができます。どのブランドでもいいのですが、僕は『ヘフティ(Hefty)』という、アメリカブランドのスライダーバッグを使っています。これはジャンボサイズ。
日本製のフリーザーバッグだとハイカットのスニーカーが入らないケースが多く、ヘフティを愛用するようになりました」。
スニーカーを袋に詰めたら除湿剤を投入。シーズン毎に交換できるよう、3~4カ月くらい効果が持続するものを選ぶのがおすすめだ。
また、鎌本さんが湿気対策としてもうひとつ使っているのが紙製の脱臭剤。これをつま先に入れておけば型崩れ予防にもなる。
あとはしっかり空気を抜いて密封! 保管方法は至ってシンプルで簡単だ。
「スニーカーを保管するときには部屋の湿度と灯りにも気を付けてください。日光はもちろんですが、スニーカーは蛍光灯の下でも黄ばんでしまうのでなるべく暗い部屋に置いておくほうがいいでしょう」。
ちなみに数年履かない場合は、シュリンクフィルムで梱包しておくのも手だ。使用するには専用機材やフィルム、ドライヤーが必要だが、これをやっておくだけでスニーカーの劣化をだいぶ遅らせることができる。
基本的にはこの方法で保管すればOKだが、素材によっては保管に注意が必要なスニーカーもある。それがエナメル素材の一足だ。
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デリケートなエナメルの保管は慎重に
コチラも「エア ジョーダン 1」。
保管方法はレザーと同じで、水拭きしてから天日干しし、除湿剤とともにフリーザーバッグに入れるだけ。ただし、他素材のスニーカーに比べて劣化しやすいため「余計なことはやらないほうがいい」と鎌本さんは話す。
「しばらく履かない場合もシュリンクフィルムで密閉するのは厳禁。そのまま3~4年置いておくと、エナメルとフィルムが同化したようにくっついて取れなくなってしまいます」。大切に保管しようと、エナメル用のクリームを塗ったりする人も多いが、それも好ましくないようだ。
「クリームをしっかり拭き取らないと部分的に変色したり、そこだけ色が薄くなったりするので、僕はやらない方がいいと思います。汚れを落とすのは水拭きだけで大丈夫。エナメルは劣化すると表面がベトついてくるので、定期的に袋から出して、こまめに水拭きすることをおすすめします」。
スエードスニーカーにはラップを使え!
スエードスニーカーも、汚れを落としたあと天日干しするまでの手順は同じだが、フリーザーバッグに入れる前にワンポイントが。鎌本さんが取り出したのは、どの家庭にもある食品用ラップだ。
「しばらく履かないスエードスニーカーはラップで包んでおくと劣化が防げます。お皿にくっつきにくいペラペラの安いヤツの方がスニーカーにはおすすめです」。
縦方向にも2~3巻き。
包み方も簡単。縦・横それぞれの方向に2~3回ずつ巻きつけるだけ。そのあとは除湿剤とともにフリーザーバッグに入れて保管する。
ラップはスニーカーの形が変わらない程度のテンションで、シューレースはつけたままで問題ない。
「簡単ですが効果は絶大です。昔、同じスニーカーで履いたあとに何もせずそのまま置いていた靴と、ラップを巻いて保管していた靴を比べてみたんです。何もしないで置いておいたスニーカーは見事に黄ばんでましたが、ラップを巻いていた方は買った当時のまま。黄ばんだのはラップだけでした。この防御効果は結構すごいなと。このゲルライト 3は、2008年に購入して数回履いていますが、ご覧の通りキレイな状態を保てています」。
なんとも優秀なラップだが、スエード以外のアッパーに巻くと、くっついて取れなくなるリスクがあるので、くれぐれもご注意を。
湿気が多い日本では、加水分解は避けては通れない。鎌本さん曰く、アメリカでは10年もつスニーカーも、日本では6~7年で加水分解してしまうことがザラだという。
「スニーカーは本来、スポーツ用の靴。ソールに使われているTPUやEVAは、衝撃を吸収するために発砲させたり密度を抑えたりしているわけです。そのちょっとした隙間から空気中の水分が入り込むことで加水分解が起こる。それは避けようがないですよね。ただこの保管方法を実践すれば、スニーカーを加水分解や黄ばみから守って長持ちさせることができると思います。やるとやらないでは4~5年は違うんじゃないかなと」。やっぱりスニーカーは履いてナンボだ。履くときの取り出しやすさも考えれば、このメンテナンス法はかなり実践しやすい。汚れや黄ばみを経年変化として楽しむのもアリだが、いつまでもキレイに保ちたいのなら、ぜひお試しあれ。加水分解のアレコレが満載!
今回訪れたのは……「スニーカーショップ スキット東京・吉祥寺店」 色褪せない大定番から名作、さらには珍品まで多彩なスニーカーが揃う。
中には国内未発表の貴重なモデルも。また、買い取りも随時行っている。住所:東京都武蔵野市吉祥寺南町1-18−1 D-ASSET吉祥寺 1F電話番号:0422-47-6671営業:11:00~19:00Instagram:sneaker_skit