『正直不動産』(小学館『ビッグコミック』連載中)©️大谷アキラ・夏原武・水野光博

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コロナ禍により自宅で過ごす時間が増え、家というものを見つめ直す人が増えたという。

「それに伴い、住み替えニーズが高まっています」と、話すのは「誠不動産」代表の鈴木 誠さんだ。


鈴木さんはなんと、次回の放送で最終回を迎える山下智久主演のNHKドラマ『正直不動産』の“モデル”になった人物。

ドラマ『正直不動産』の“モデル”になった男に聞いた。絶対NGな不動産営業の見分け方

鈴木さん曰く「いやいや、モデルになったというわけではなく、取材協力者として関わらせて頂いたまでです」とのことだが、漫画の帯にもバッチリ登場している。オーシャンズ連載「37.5歳の人生スナップ」でも3年程前に鈴木さんを取材している。


『正直不動産』は、山P扮する悪徳不動産営業の永瀬が、ある日突然嘘がつけなくなり、正直さをウリに契約をしていくというストーリーで、不動産業者の裏側を知ることができると話題なのだが……。実際に、永瀬のような悪徳営業はいるのだろうか。

「ものすごく悪徳な不動産会社は少ないと思いますが、契約さえ取れれば、嘘をついてもなんでもOK! と思っている営業マンは多いですね。僕も昔はそうでしたから(笑)。半分ぐらいはそういうスタンスだと思いますよ」と鈴木さん。

ドラマ『正直不動産』の“モデル”になった男に聞いた。絶対NGな不動産営業の見分け方

鈴木誠●1977年生まれ。自衛官、アパレル店員、不動産営業などさまざまな職を経験した後、完全紹介制の「誠不動産」を立ち上げる。著書に『奇跡の不動産屋が教える幸運が舞い込む部屋探しの秘密』(朝日新聞出版)。

そこで今回は、悪徳営業に引っかからないために知っておきたいポイントを鈴木さんに教えてもらった。

悪徳不動産営業を見分けるための7カ条!

1. 問い合わせへのレスポンスが遅い
2. 「内見予定の物件、他の方で決まっちゃいました」と店舗来訪時に言われる
3. 「とりあえず」を連発する
4. リクエストと違う物件を勧めてくる
5. 服装に清潔感がない

6. 「日当たりの良さ」など、分かりやすいことばかりを謳う
7. 内見時に換気をしない


問い合わせの段階から不動産営業へのチェックを怠るな!

ドラマ『正直不動産』の“モデル”になった男に聞いた。絶対NGな不動産営業の見分け方



――「嘘つきな不動産営業が半分ほど」という前述の話にすでにビックリしています。

ノルマがあったり、歩合制で契約を取らないと給料が下がってしまうとなると、無理やりでも決めてしまえ、と考えがちなんですよね。

――どうやったら、良い不動産営業を見つけることができるのでしょうか?

まず、今はネットで問い合わせをすることが多いと思うのですが、レスポンスが遅い営業マンに任せるのは辞めたほうがいいですね。

最近は物件もスピード勝負なので、レスポンスが遅いと、この物件に申し込みたいというときに対応が遅れて、住めなくなる可能性があります。

僕の感覚では返事まで2~3時間でも遅いのですが、半日以上かかるようだったら要注意です。

――なるほど。スタートから肝心なんですね。

そうです。問い合わせへの返事が来たら、次は不動産会社の店舗を訪れるのが基本の流れですが、店舗の清潔さも要チェックです。

雨が降っていないのに傘立てが出ていたり、エントランスが汚かったり、カウンターの上が散らかっているようなところは避けたほうがいいでしょう。なかには書類が散らばっていて、個人情報が全開になっているようなところもありますから。

ドラマ『正直不動産』の“モデル”になった男に聞いた。絶対NGな不動産営業の見分け方



店舗の中はしっかり見ておいたほうがいいですし、内見に行く車がボコボコに傷ついてたり、車内が汚かったりするのもNGです。

――車がボコボコって、命の危険すら感じます。


そういう不動産営業車、結構多いですよ。そんな車に当たってしまったら、勇気を持って退散しましょう!
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来店させることが目的の「おとり物件」に気を付けろ!

――店舗や営業車の清潔感でいうと、全国展開しているような不動産会社のほうが安心ですかね?

そうとも言えません。大手の安心感はあると思いますが、地元の会社のほうがフットワークが軽いことが多く、アフターサービスがきちんとしていることもあります。

あと地元に根付いた会社は管理物件を所有していることが多く、そこから毎月お金が入ってくるので、ノルマもないことが多いんですね。だから営業マンも無理やり契約に持っていくなど、焦る必要がありません。

――でも、大手のほうが情報を多く持っているということはないんでしょうか?

それはありません。ほとんど情報量は同じです。

ドラマ『正直不動産』の“モデル”になった男に聞いた。絶対NGな不動産営業の見分け方



極論を言うと社名が漢字とカタカナだったら、僕は漢字を選びます。漢字の会社は、地元の老舗ということが多いですから。

『正直不動産』のストーリーの中でも、永瀬が属する登坂不動産の宿敵として登場する悪徳不動産会社の名前は“ミネルヴァ”不動産ですからね。

それと賃貸では今だに「おとり物件」があります。これは契約が終わっているのに、良い物件でお客さんから問い合わせがありそうだからと、そのままホームページに載せているんです。

お客さんが「内見できますか?」と問い合わせをしたとします。
「できますので、店舗に来てください」と言われたのに、実際に行ったら「たった今、別の方からの申し込みが入っちゃいました」とか「人が亡くなっている」、「近隣の音がうるさいんですよ」とか適当なことを言って、「他の物件を探しましょう」と促してくる。

――そんなことが許されるんですか!?

正式な申し込みが入った後、そこから2週間は物件情報を掲載していても、罰せられないと言う業界の変なルールがあるんです。

これは不動産業界の悪い習慣なのですが、それを逆手にとって、お客さんを捕まえるために、良い物件はあえてそのまま掲載しておくというところは結構多いですね。

――なぜ残しておくんですか?

とにかく店舗に来てもらって、お客さんを捕まえるためです。

僕が昔いた会社は、初回の内見で契約に漕ぎつけなかったら、お客さんに次のアポを取り付けないといけなかったんです。なので、内見後にお客さんを店舗に連れて来れないと、「なんでそのまま帰しちまったんだよ!」って怒られました。

ネット掲載物件の4割は「おとり物件」だと思っていいでしょう。

――思っていた以上に多いですね……。

ただ、最近は物件の動きが非常に早くて、内見しないで決めてしまう人がかなり多いので、本当に決まってしまう可能性はあります。それでも「すぐになくなっちゃう物件ですよ」などと焦らせる営業マンはNG

ドラマ『正直不動産』の“モデル”になった男に聞いた。絶対NGな不動産営業の見分け方



あと「とりあえず」という言葉を連発する営業マンも僕は信用しません。「とりあえず申し込みましょう」とか、「とりあえず行きましょう」とか。

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多くの人は“不動産営業が住まわせたい物件”に住んでいる

――「とりあえず」の連発は気を付けないと、ですね。

そもそも、自分が住みたかった物件ではなく、営業マンが住まわせたい物件に住んでいることも多いです。

――ど……どういうことですか?

広告料というのがありまして、早く入居者を決めたい、条件が悪い物件などは、オーナーが弱気になって「手数料を1カ月上乗せするので何とか契約を決めて来て下さい」と、条件を良くするんです。

すると営業マンは、お客さんからの仲介手数料に加えて広告料ももらえるので、売り上げが2倍になる。

ちなみに良い物件は黙っていても契約が決まるので、広告料は付かないことが割と多い。そうすると売り上げが2倍の物件を勧めてくる、というワケです。

――自分の条件と違う物件ばかりを勧められたら要注意ってことですね。

そうですね。条件に合う物件はないと言われて、勧められるままに、自分が住みたい物件とズレているところに住んでいる人はとても多いですよ。

――そういう不動産営業に当たりたくないですね~。見分ける特徴はありますか?

う~ん。先に店舗の清潔感についても触れましたが、もちろん清潔感のない営業マンもダメです。


ドラマ『正直不動産』の“モデル”になった男に聞いた。絶対NGな不動産営業の見分け方



爪が伸びていたり、靴のかかとがすり減ったままだったり。

不動産営業は靴のかかとがすり減りやすいのですが、ケアせず放っておくような人は仕事もズボラです。

あと、日当たりがいいとか、部屋が広いとか、分かりやすいポイントでアピールしてくる営業マンは信用しないほうがいいです。

それよりも、コンセントの配置や家具の置きやすさ、ベランダの状況から隣に変な人が住んでいないかなど、プロ目線でチェックしたことを、それがマイナスであっても正直に伝えてくれる人は信頼できます。どんな物件にも、必ず悪いところはあるものなので。

あとは内見の基本である、スリッパやメジャーを持ってきているか、窓を開けて換気をしているかなどはチェックしてください。

それと宅地建物取引士の資格を持っているかどうか。これは名刺に書いてあることが多いので、もらったときに確認しましょう。

――不動産営業は全員、宅建の資格を持っているものだと思ってました。

物件を案内をする人はほとんどが持っていませんよ。

1人が宅建の資格を持っていれば、従業員を5人まで雇えることになっているんです。こういう業法があるから、営業マンの質がどんどん悪くなっていくんだと僕は思っています。


――でも、宅建の資格を持っていないと契約できないんじゃないですか?

その通り。資格がないと重要事項説明が行えないので、契約時になると奥から資格を持ったオバちゃんが出てくることが多いです(笑)。

宅建は実務で使うことはほとんどありませんが、少なくとも勉強をする意気込みがあったという証明になりますから。

――なるほど。チェックするポイントは意外と多いですね……。ほかに気を付けるところはありますか?

まず引っ越そうと思ったら、面倒くさがらずに不動産会社を何軒か回って、相性の良い営業マンを探すといいでしょう。

で、見つけたら、その営業マンに意思を伝えるのがポイントです。「あなたに任せたいので、お願いします」と言われると、営業マンも「よし! 絶対に良い物件を提案しよう」と気合が入ります。

逆に、「ほかにも不動産会社、回ってます」とか、「知り合いに不動産営業がいます」はスーパーNGワードです。

そう言われると「契約はほかの不動産会社で決まっちゃうかもしれないしな」と、テンションが下がってしまいます。

あとは開口いちばんに「仲介手数料を安くして」と伝えるのは控えたほうが良いかと。

「だったら、きちんとお金を払ってくれるお客さんを優先しよう」ということになって、良い物件には出合う確率が減ってしまいます。

最初にケチって変な物件に住んだら、元も子もありません。住む家で人生は変わりますから、ケチらず、良い物件を見つけてください。


良き物件に出合うには良き不動産営業に出合うことが大切。

引っ越しを考えている人は、ぜひ鈴木さんのアドバイスを参考にして、自分に合う「正直不動産」を見つけてほしい。
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