話を聞いたのは……ゴアテックスの偏愛さん「ジ・アパートメント」代表・大橋高歩さん![]()
大橋高歩●1979年、東京都板橋区生まれ。中学時代にヒップホップの洗礼を受け、アメリカ東海岸のスタイルに傾倒。以後、USAメイドのヘビーデューティなアイテムのあれこれを収集し始める。2009年、吉祥寺にセレクトショップ「the Apartment」をオープン。彼のアーカイブ目当てに足を運ぶ、世界中のコレクターやファッション関係者は数知れず。
時代によって変わるゴアテックス。本当に魅力的なのは……

ヴィンテージのフラッシャーも保存している。こちらのゴアテックスのロゴデザインは、’80~'90年代当時に流通していたもの。
“ゴアテックス”が防水性、透湿性に優れた機能素材ということは有名だろう。とはいえ、その歴史やアイテムのバリエーションを把握して、「最も魅力的なゴアテックス」にこだわって収集している人は、ほぼいない。大橋さんは、まさにレアな存在だ。① ユニークな作りが魅力のゴアテックスハット


② 異素材ミックスのティンバーランド


ティンバーランドの名作、7アイレットのモカシンブーツは人気の高い定番。
「このブーツは、アッパーのフロント部分がレザーでサイドは高密度のキャンバス地になっていて、中にゴアテックス素材が張られているんですよ。
③ タフさを感じるゴアテックス製ジャケット


胸にはUSPSの大きなワッペンが。同ジャケットは、ザ・ノース・フェイス製のものも存在する。
「これは郵便局員の制服として作られたゴアテックス製のジャケット。実はゴアテックスがユニフォームに使われることは結構多いんです。このジャケットはプロパーという軍ものを多く手がけるブランドによるものですが、ザ・ノース・フェイスも警察や山林を保護する公的機関のユニフォームなどを作っています。収集のきっかけは、ザ・ノース・フェイスだった

「ジ・アパートメント」の扉も黒×黄を基調にしている。
そもそもゴアテックスに魅せられる前に、大橋さんはザ・ノース・フェイスのアイテムを自然と集めるようになっていた。「子供の頃に買ってもらったアメリカの Tonka(トンカ)という玩具メーカーのトラックがきっかけで、黒×黄色の配色がたまらなく好きになっちゃったんですよね。自然とこの配色が多いザ・ノース・フェイスを着ることが多くなっていきました。ザ・ノース・フェイスの高額なアイテムにゴアテックスが使われていることを知り、着るようになりました」。最初は周囲への優越感もあり、ゴアテックスを選んでいたが、徐々に快適さを実感して、今度は機能に魅せられていった。
2020年に、大橋さんプロデュースで発売した「ジ・アパートメント」別注のニューバランスML801 GTX。配色は、もちろん黒×黄がメイン。
気がつけば、世界的なコレクターと呼ばれるように
雨の日は防水性能、晴れの日は透湿性能を実感し、長く着ると経年劣化しにくいことにも気づいたという。それからキャップ、シューズ、ウェアなど、ヴィンテージや現行品を問わず幅広くゴアテックスのアイテムを収集し続けてきた。
1989年に、6カ国が合同で参加した犬ゾリによる南極横断プロジェクト。こちらは、希少な記念グッズのテディベア。

ゴアテックスのアーカイブをコレクトしている日本人はほぼ皆無。「ヴィンテージを入手する場合は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパのコレクターとネットを介してやり取りしています」。
「コレクションしているヴィンテージアイテムは、仕事道具でもあります。細部がどんな作りになっているか? 歩んできた時代の技術をちゃんと継承しているのか? それらを確認する標本であり、大切な資料にもなっています」。自らの店を開き、モノづくりもしている大橋さんにとって、ゴアテックスが刻んできた歴史やアーカイブは、まさに生きる百科事典そのものだ。
裏地にゴアテックスメンブレンとシームテープが貼られたニューエラキャップは、近年発売された。
今では、世界の著名ブランドからも、重要な資料としてコレクトアイテムの提供依頼や、アドバイスを求められることも多い。大橋さんが長い時間をかけて収集したゴアテックスのアイテムは、いずれも世界的に見て希少なものばかり。それは、市場価格云々を超越した、レガシーそのものだ。今回訪れたのは……「ジ・アパートメント」![]()
アメリカのヴィンテージウェア、靴、グッズ、ガジェット、フィギュアetc.……、大橋さんの審美眼が発揮された品揃えは、国内外のファンを唸らせ続けている。
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-28-3-106電話番号:0422-27-5519営業時間:12:00~20:00www.the-apartment.net