知らないと怖いカラダのサインとは……

スポーツやサウナで汗を流すのは、とても気持ちがいいことだ。だけど、日本の炎天下では、汗がベタベタして不快だし、不潔な印象にも見られがち。


「汗には良い汗と悪い汗の2種類あります。特にベタベタとした汗は要注意。脱水症や熱中症の予兆かもしれません」と話すのは、小杉町クリニック副院長で皮膚科医の稲澤美奈子先生だ。


話を聞いたのはこの人!
ベタベタ汗は熱中症のサイン!? 医師が教える“悪い汗”を“良い汗”に変える方法

稲澤美奈子●皮膚科専門医、小杉町クリニッック副院長。専門は毛髪疾患や発汗異常、フットケア。肌トラブルに関する記事の監修のほか、セミナーでの講演なども行っている。



“悪い汗”はミネラルの流出が原因

ベタベタ汗は熱中症のサイン!? 医師が教える“悪い汗”を“良い汗”に変える方法


――そもそも、汗はなぜ出るのでしょうか?

汗をかくシーンは主に3つです。
① 暑いときや激しい運動をしたとき
② 恐怖や緊張、興奮などで脳が刺激されたとき
③ 辛さで脳が刺激されたときいずれも、体温をコントロールする生理機能で、肌表面に水分を分泌させ、気化により体温を下げる、いわば、体の打ち水としての役割があります。

――基本的に汗は良いものと捉えていいでしょうか?

はい、基本的に汗をかくことは体温調節のために必要であり、いいことです。

しかし、汗にも良い汗悪い汗があります。良い汗は、水のようにサラサラしていて、すぐに蒸発します。

ところが、汗の粒が大きく、いつまでもダラダラと出続けていたり、肌の上でベタベタ感が残っていたりするのであれば、それは悪い汗といえるでしょう。

――えっ! 外に長時間いると汗が止まらなくなりますし、むしろドロドロしています(涙)

汗は99%以上が水からできていて、残りは塩分やミネラル、乳酸などの老廃物が含まれています。


良い汗ならほとんどが水として流れるのですが、汗腺の機能が衰えていると、ミネラルが汗の中に入り込み、ベタベタとした悪い汗になってしまうんです。

――ミネラルが外に出るのは悪いことなんですか?

ミネラルは体を正常に機能させるために絶対に必要なもの。それゆえ、汗とともに流れてしまうと、脱水症を引き起こす可能性があります。

必要な栄養素が体に行きわたらなくなり、脚がつったり、しびれたりするほか、熱中症の症状も誘発します。

――脱水症や熱中症はミネラルの流出が原因だったんですね。

はい。汗を大量にかいたあとは、不足した電解質(イオン)を含むドリンクで水分補給しましょう。

私のオススメは、常温の麦茶。意外にもミネラルが豊富ですし、手軽に入手でき、味も飲みやすく、水分とミネラルをたっぷり補うことができます。
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汗はかかないより、かいたほうがいい!

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――汗をかかなければ、ミネラルの流出や、脱水症や熱中症も防げる気がします。

体温調整をしなくてもいい快適な温度や湿度の空間にいる現代の生活において、汗をかく機会は減っているのが実情。

しかし、汗腺は使われないでいると、どんどんサボって機能しなくなっていきます。稼働している汗腺が少ないと、ミネラルがダダ漏れするのを止めることができず、悪い汗になってしまうのです。


また、汗腺の動きが鈍ると、いざというときに発汗量のバランスをとることができなくなり、緊張したときなどに出がちな、ベタベタした悪い汗をかくことになります。

だから、普段から汗はできるだけかいておいたほうがいい。ただし、ミネラルがダダ漏れしていない良い汗であることが絶対条件です。

――悪い汗を良い汗に変える方法とは?

運動、ウォーキング、ヨガ、サウナ、半身浴、岩盤浴といった汗をかくことを日常的にするといいでしょう。だくだくに汗をかく必要はなく、じわっと汗がにじむくらいで大丈夫

これを「発汗トレーニング」と呼んでいます。

――寝汗をよくかくのですが、これは発汗トレーニングになりますか?

寝汗は睡眠の質を下げるので、寝ている間に「発汗トレーニングをしてしまおう!」という発想はやめたほうがいいでしょう。

ちなみに、快適な環境で寝ているのに大量の寝汗をかく場合、なんらかの内臓疾患や、自立神経失調症や更年期障害のサインという可能性も考えられますが、夜の飲酒習慣が起因している場合が多いようです。

ーーお酒が関係するんですか……

寝汗をたっぷりかけばアルコールが抜け、「朝には元通り!」と思ってしまいがちですが、寝汗が大量であればあるほど、水分とミネラルも大量に流出します。

朝起きたら脱水症と熱中症とで体を動かせない……なんてこともあり得ますので、夏の夜はとくにご注意を! 

夜に限らず、アルコールを飲むなら、同量~2倍以上の水分も摂るようにしましょう。


「悪い汗=ニオイがキツい」は間違い

ベタベタ汗は熱中症のサイン!? 医師が教える“悪い汗”を“良い汗”に変える方法



 ――悪い汗だとニオイがキツくなりますか? 

実は、良い汗も悪い汗もニオイで判断することはできません。なぜなら、ニオイのもとは汗に含まれるたんぱく質だから。


たんぱく質は肌の上にある常在菌の餌になるため、量が多いと菌が多く繁殖。その菌のせいで強いニオイに変わってしまうのです。

たんぱく質を多く含むのは、手のひら、足の裏、腕、脚などに多いエクリン汗腺から出る汗よりも、わき、乳輪、陰部などに多いアポクリン汗腺から出る汗。

だから、アポクリン汗腺が発達している人はニオイが強くなりがちですし、動物性たんぱく質を多く摂っている人も汗に含まれるたんぱく質量が多いという研究結果もあるので、強いニオイになる場合があります。

汗をかくのはよいことではあるので、ニオイが気になるのであれば、マメに拭き取ったり、シャワーを浴びたりするのがオススメです。

 ――汗を大量にかく人と、あまりかかない人がいますが、これはどうでしょう?

日常的に大量に汗をかいているなら「多汗症」かもしれません。「症」と言っていますが重大な病気ではなく、汗をかきやすいという個性。汗は決して悪者ではありませんので、気になるなら薬で押さえることが可能です。

汗の量はニオイと直接的な関係はありませんが、アポクリン汗腺だけでなくエクリン汗腺から出る汗の量が増えれば、菌の餌となるたんぱく質量も増えることになるので、結果ニオイにつながることはあるかもしれません。


湿度も気温も高く、運動をしなくても発汗しまくる日本の夏は、まさに眠った汗腺を目覚めさせて良い汗が出せる体にシフトさせるベストシーズン。

脱水症や熱中症のリスクを減らすためにも、発汗トレーニングでベタベタ汗からサラサラ汗に変えていこう。

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