働く男のバッグの中身●働き方が多様化したここ数年、仕事道具に求める役割も変わってきた。世の働く男たちはどんな基準でモノを選んでいるのか? 仕事バッグとその中身を拝見!
▶︎すべての画像を見るビームスFのディレクターを務め、インスタグラムでは14万人超のフォロワーを抱える西口修平さん。
メンズのドレスもカジュアルも知り尽くした彼が今、仕事道具に求めることとは?
肩肘張らない今のムードにマッチする、レザーのデイパック
西口修平●1977年生まれ。ビームスFのディレクターとしてレーベルを率いる。ピッティ ウォモなどの海外の服飾展示会場では「最もスナップされる日本人」としてその名を馳せる。著書に『Nishiguchi Essentials 100』(ワン・パブリッシング)。
無類のファッションアディクトとして日本のドレス業界を牽引する西口さん。仕事柄、バッグはレザーシューズ同様に多数所有しており、
“バッグは着こなしに合わせて持ち替える派”と言う。「働き方のスタイルに多様性が出てきた今は、スタイリングのムードも変化してきていますよね。それに合わせて自分も、どちらかというと柔らかいバッグを持つことが増えてきました」。
バッグもスタイリングの一部として重要視する西口さんにとって、この変化はある意味で当たり前のこと。取材日に持っていたのはオールレザーのデイパックだ。それも、しなやかな質感のイタリアンカウハイドレザーを一枚革で仕上げた、高級感を醸すニューアイテム。
イタリア発の新進レザーブランド「エス マーノ」の新作。西口さん自身が実際にバイイングにも携わり、ビームスFにて絶賛取り扱い中。
7万5900円/ビームスF 03-3470-3946「以前はトートやクラッチバッグを持ち歩くことが多く、もちろん今でもそういうバッグを持ちますけど、このデイパックのように
軽快な気分で装いたい日が増えてきているんですよね。レザーのデイパックなんだけど、内側の布地を省いたアンライニング仕上げなので、ぐっと軽量化されているんですよ。何グラムかどうかという重量も大事ですが、
軽快に見えるかどうかというのもポイントです。
ナチュラルなレザーには革本来のシボが入っていて、シボ風の型押しレザーには出せない“くたり”とした風合いも魅力です」。デイパックとはいえ、自転車通勤で背負うコミューター系のアイテムではない。だからクラシックな服に合わせても違和感がない。「ペーパーレス化、キャッシュレス化が進み、バッグもスモールバッグ化が進んでいます。だからこの容量でも余裕をもって仕事で使えるんですよね」。--{}--
「バッグを毎日替える派」の西口さんを支えるギャルソンのポーチ類
セレクトショップのディレクターが実際に持ち歩く、仕事道具はいったいどんなものだろう?
「日ごとにバッグを持ち替えるので、こまごまとしたものはポーチに収納するようにしています」。財布やポーチはコム・デ・ギャルソンを愛用。いい意味でクセのない中庸なデザインは、伝統的なテーラードから古着までをジャンルレスで着こなす、西口さんの幅広いスタイリングに対応してくれる懐の深いアイテムだ。
「ギャルソンの財布はかれこれ5年ぐらい同じ色のモデルを使っています。
長財布も通ってきましたが、使い勝手の良さが気に入ってます。財布もポーチも定番品として継続展開されているので、使い込んでヘタッてきたら刷新できるのもいいんですよね」。
ノートPCは、J&M デヴィッドソンのクラッチバッグに収納。社内での会議や打ち合わせであれば、このクラッチを持って移動することも。
「洋服屋として絶対に外せない必需品が、このメジャーですね。商品を企画する際に、具体的な数字でお願いできないと話が進みません」。
それからもうひとつ、長く愛用している仕事道具がある。
名刺入れとペンケースは「エルメス」を愛用。
「業界の先輩から受け継いでいる風習のようなものなのですが、『ペンはいいものを使え』と。スターリングシルバーのペンは英国のヤード・オ・レッドで、ビームスの社員になったときに記念として入手したもの。店頭で、高価なお買い物をしてくださったお客様にサインなどのやりとりをお願いする際、ちゃんとしたペンをお貸しできないと店頭での体験にミソがついてしまいますよね。
スターリングシルバーのペンは、十数年を経た現在も健在だ。
オレンジの柄のはデルタのペンです。イタリアのメーカーなので、イタリア人と商談する際にこれを取り出すと『いいボールペン持っているな』と会話のきっかけになるんですよ」。
「自分にとって、
バッグは単なる道具ではなく、ファッションアイテムのひとつ。ファッションはライフスタイルと切り離せないので、自然と日々のライフスタイルを反映したバッグ選びになります。同じコーディネイトを続けないのと同様に、バッグも毎日持ち替えたいんです」と語る西口さん。ファッションアディクトの名に恥じないバッグ選びのスタンスだが、現実問題、毎日バッグを替えるとなると、忘れ物の心配が出てきそうなものだが……
「自宅での仕事道具の定位置を決めておらず、基本的にカバンの中に入れっぱなしにしています。それで、朝、家を出る前に中身ごとまるっと入れ替えるんですよ。これなら、日ごとにバッグを替えても大丈夫です」。
ならではの道具選びのセンスが光る、西口さんの仕事バッグの中身。仕事のスタイルが多様化してきた今こそ、その日のスタイルに合わせてバッグを持ち替える術、真似してみるのも一興だ。