映画『キングダム2 遥かなる大地へ』に蒙武役で出演している俳優/モデルの平山祐介さんが『キングダム』の魅力について語る本企画。

名武将について語った前回に続き、今回は、思わず目頭が熱くなる名シーン集をどうぞ。


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※以下の内容は、コミックス版『キングダム』のネタバレを含みます。
[PROFILE] 
涙なしには語れない。『キングダム』の名シーンを蒙武役・平山祐介が厳選!


平山祐介●1970年生まれ。オーシャンズ看板モデル。俳優としても活躍し、ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』(日テレ系)、『今際の国のアリス』(Netflix)、映画『ミッドナイトスワン』など数々の話題作に出演。現在公開中の映画『キングダム2 遥かなる大地へ』では蒙武役を熱演した。


死期迫る王騎が信に見せた”大将軍の景色”

編集部 前回は好きな名武将BEST3を挙げていただきましたが、今回は「好きなシーン」について教えてください。

平山 名シーンを選ぶとしたら、やはりどうしても好きなキャラ絡みになってきますね。

編集部 ということは、王騎、蒙武、桓騎絡み?

平山 そうですね。王騎でいえば、やはり龐煖と相対する馬陽の戦いでしょう。

編集部 過去の因縁が根深いだけに内容の濃い戦いでした。

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平山 馬陽は王騎にとって、最愛の人である摎が殺された場所であり、その命を奪った者と再び戦う場所になるわけですから。摎が殺されたときの王騎の怒り狂った様子は印象深いですよね。

編集部 確かに、あんなに取り乱す王騎の姿も珍しかったですね。


平山 発した言葉が「貴様ー!」でも「うぉー!」でもなく「亜!!」ですから。あんな王騎は後にも先にも見たことがありません。その一コマだけで彼の感情がすごく伝わりますよね。原先生はすごいなと思います。

編集部 たしかに馬陽の戦いはあらゆるターニングポイントになりました。

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平山 今後、主人公・信の最大の敵になる李牧も登場し、さらに面白味が増していきます。王騎と龐煖の一騎打ちも見応え十分でしたね。ただ王騎が、何万という敵に囲まれながら脱出を試みるさなか、馬上で信に見せた“将軍の景色”。あのシーンはいつ見てもグッとくるものがあります。

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編集部 確かに、物語序盤のハイライトですね。

平山 このときの経験があったからこそ、信はひとりの武将として大きく成長していきました。王毅は信に矛を託して死んでしまいますが、この一連の出来事は涙なくして語れません。


編集部 信の目指す場所が鮮明になった瞬間でもあります。

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平山
 龐煖との死闘も目の前で見ているわけですから。彼がひと皮むける非常に大事なシーンだと思います。大きい男ですよね、王騎は。こういう男になりたいと誰もが思うはずです。そんな男たちが『キングダム』にはたくさん出てくる。バイブルみたいにして読んでいるファンは多いんじゃないでしょうか。
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中華最強を決する戦い「蒙武 vs. 汗明」。そして…

編集部 だとすると、蒙武ではどういったシーンが心に残っていますか?

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平山
 蒙武といえば、やはり合従軍と死闘を繰り広げた函谷関の戦いでしょう。楚の総大将、汗明との勝負は戦い全体を左右する重要なものでしたし、蒙武の存在感を中華全土のみならず、読者にも印象付けたのではないでしょうか。

編集部 劣勢の中、よくぞ勝ちきったと思います。

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平山 思いますよね。
汗明は蒙武よりひと回りも大きいし、力も強い。単純に実力だけを比べれば、おそらく汗明のほうが強いでしょう。

編集部 そうかもしれません。

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平山 でも、自分が中華一であることを証明するため正面から立ち向かい、ボコボコになりながらも最終的には倒すじゃないですか。その胆力というか、思いの強さで実力の差を逆転してしまった。そのブレない姿勢は好きですね~。

編集部 正直、負けるんじゃないかとさえ思いました。

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平山 たしかに。相対したとき、汗明は自らの武勇を語りながら、自身が中華最強であることを滔々と説明するじゃないですか。それを聞いて蒙武は「昨日まで相手に恵まれていただけだ」と言い放つ。カッコいいですよね! ただ、その男と男の戦いの中にも、父としての一面を垣間見せるところがまたいい。

編集部 ふたりの決闘に横槍を入れようとしてきた楚軍の媧偃(かえん)の攻撃から、蒙恬(もうてん)が父である蒙武を守ろうとするシーンですね。


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平山 そこで、蒙恬が誤って二人の間に割って入ってしまい、汗明に重傷を負わされる。結果的に、その影響で蒙武は最後の爆発的な力を引き起こしたんでしょう。

編集部 信じられないほどのパワーで汗明を葬りましたからね。

平山 その後、重傷を負った蒙恬の配下から、父として最後の言葉をかけてあげてくれと頼まれるも、「この蒙武の倅(せがれ)だ。その程度で死にはせぬ」とひと言。しびれますよね。

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編集部 蒙武と父・蒙驁(もうごう)とのストーリーも深いですよね。

平山 蒙武は子供ながらに、自分の父親がなかなか武将として認めてもらえず、国を転々としていたことに歯がゆさを感じていたはずです。ただ、父親を恥じたことは一度もないと思いますよ。

編集部 というと?

平山 「不器用だな」って思っていたかもしれませんが、自分が最強の武将になるにはどうすべきかを、父親から学んでいたところもあったと思います。

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編集部 確かに。蒙武は無口な武将ですが、言葉の端々から父親へのリスペクトが感じ取れます。


平山 蒙恬も、そんなおじいちゃんのことが大好きですしね。だから蒙家って、みんなが全然違うキャラクターですけど、すごくバランスが取れていて、お互いがお互いをすごく見ながら成長しているんだろうなって思いますね。
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残虐にして非道な男が見せた人間味

編集部 では、桓騎はどうでしょうか。どうも残忍な印象が強くて……。

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平山 たしかにあまりにも非人道的な行動が強烈で、残忍なシーンばかりが思い出されますが、そんな中にも桓騎の隠れた人柄がうかがえるところもあります。例えば函谷関の戦い

編集部 籠城戦のはずが、相手の井闌車を利用し自ら馬で打って出て、韓軍の総大将、成恢(せいかい)を倒すシーンは痛快でした。

平山 あれはもう桓騎にしかできない戦術ですよね。個人的には、張唐(ちょうとう)とのやりとりにやられました。

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編集部 秦国を長年支えてきた老将ですね。桓騎との相性は最悪でした。ただ、張唐は結果として、桓騎のおかげでリベンジのチャンスと死に場所を求めることができました。

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平山 桓騎は張唐に「国を守る覚悟はあるのか?」と問われれば「あるわけねぇだろそんなもん。
ボケてんのかてめぇは」と突き放したり、「もし窮地に陥ったら助けてやる、ただし頭をこすりつけて土下座するならな」だの散々言ってました。

編集部 年上を敬う姿勢も皆無ですからね、桓騎は。

平山 ただ、張唐が成恢を討ち取ったあと、瀕死の張唐に肩を貸して「おっさんまだ死ぬな、約束の土下座が残ってんだろ」って言葉をかけますよね。

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編集部 意外でしたね。

平山 張唐は桓騎のことを死ぬほど嫌っていましたけど、その斬新かつ鮮やかな戦い方に武将としての才覚を見出していましたよね。そして、「秦国一の武将となれ、桓騎。秦を頼むぞ」と伝えて絶命し、桓騎は「………チッ。調子の狂うじじィだったぜ全く」と呟く

編集部 印象的なシーンですね。

平山 そこで、「あれ? 桓騎?」って感じたんです。桓騎という武将は一体、どういう人なんだろうって。彼の痛みや怒りの根源ってなんなんだろうと考えさせられてしまうんです。今後の展開も気になりますね。
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まだまだある! 心震える名シーン【番外編】

編集部 『キングダム』はとにかく名シーンぞろいです。

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平山 挙げればキリがないですよ。激しい戦いも魅力ですけど、42巻で飛信隊の副長の渕(えん)さんが命懸けで急流を渡るシーンがあるじゃないですか。

編集部 黒洋丘の戦いですね。作戦の重要なポイントでしたけど、当初、周りは「渕さんに任せて大丈夫か?」といった空気でした。

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平山
 それでも信は渕さんに託して、その期待に見事応えるわけです。それで周りからも認められる。たしかに、ほかの壮絶な合戦に比べるとストーリーとしては小さいですが、心にくるものがありましたね。

編集部 渕さんは特に武に秀でているわけでもなければ、軍略家でもないですからね。

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平山 ほかにも、影丘(えいきゅう)で岳白公と戦う際に、干斗(かんと)たちが断崖絶壁の崖を登りきるシーンもいい。たとえ主要キャラではないにしてもグッとくるエピソードはたくさんありますよね。業攻めのあたりも捨て難い。

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編集部 楊端和(ようたんわ)率いる山の民の軍と犬戎族との戦いとか。

平山 多くの犬戎族に囲まれながら、楊端和とバジオウが立ち向かっていくシーンは本当にシビれました。バジオウの楊端和への忠誠心はすごいですよね。

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編集部
 あれはもう感動ものです。個人的には楊端和とバジオウはお似合いだと思います。

平山 それは嫌ですね~。楊端和は取られたくない(笑)。

編集部 女性キャラもたくさん出てきますが一番は楊端和ですか?

平山 そうですね。

編集部 振り回されそうですけど(笑)。

平山 それでも挑むのが蒙武たる所以……ってなに言っとんねん(笑)。

涙なしには語れない。『キングダム』の名シーンを蒙武役・平山祐介が厳選!




最終回となる次回は、平山さんが選ぶ「物語に深みを生んだ名バイプレーヤーたち」を取り上げよう。
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