
旧車電動化の“駆け込み寺” オズモーターズの古川 治さん。ちょうど車検で入庫したビートルの電気自動車と。
実は筆者は約5年前、フィアットの1995年式パンダを電気自動車に改造して乗っている。この“電気パンダ”を5年前に製作し、今や全国の個人や企業からさまざまな“EV化”の相談を受けるオズモーターズの古川 治さんに、最新の電気自動車カスタム事情を教えてもらった。古いビートルにポルシェ、ランクルもミニもOK!

古川さんの愛車であるビートルの電気自動車。
古いビートルの助手席に座らせてもらった。古川さんの愛車だ。彼の「じゃ、行きますよ」の声とともに、静かな、けれど強烈な加速力を体全身で感じる。彼の愛車は改造電気自動車。見た目はどう見ても旧いビートルだが、中身は日産のリーフだ。
工場には絶賛“電動化”中のポルシェ911の姿も。

ビートルのリアを開けると、急速充電口と普通充電口がある。
「アメリカではもう2000年前後から、旧車を電気自動車に改造する文化が始まっていました」。仕事で何度もアメリカへ行き、時代の変化を肌で感じていた。アメリカは自宅のガレージで愛車を修理したりカスタムするのが当たり前という文化がある。愛車を電気自動車に改造しようと思う人が出てきても不思議ではないだろう。当時はまだゴルフカートのモーターやバッテリーを使った改造が主流だったが、「最近アメリカでは、テスラの中古車から取ったモーターやバッテリーを使うのが当たり前になっています」。
速度計はオリジナルのまま活かし、バッテリー残量のインジケーターなどが追加されている。
一方、日本ではテスラ車はまだそう多くない。
筆者の電気パンダ。このときは三菱のi-MiEVのパーツが使われたが、今では電気パンダの製作にもリーフを使用している。
バッテリーをどれくらい搭載するかは、予算に応じて調整してくれる。クーラーも付けられるが、バッテリー容量が減るのを気にして付けないという人が多いそうだ。一方ヒーターは、キャンピングカーと同じFFヒーターを使うので、電気ではなく灯油などを使う。依頼される車種は多種多様だ。BMWのマイクロカー・イセッタからフィアットのパンダ、ビートル、ミニ、ランクル40、ポルシェ911…… たいていの車なら改造できるそう。
古めかしいステアリングと、中央の液晶モニター、シフトレバー代わりのつまみの“違和感”が面白い。
「古い車が多いですね。エンジンなどの駆動系が故障したりして『もう乗れないかな、でもまだ乗りたいな』というときに、電気自動車に改造して“延命”する感じです」。「だいたい僕のビートルなんかそうですが」と古川さんは続ける。「エンジンの頃って、たまにかからないときがあったので、コンビニに行っても怖くてエンジンを切れなかったんですよ。それに今どきの車からすればうるさいから、周囲から嫌な目をされることもあったし」。それがまったくなくなった。もうコンビニへ恐る恐る出掛ける必要もない。だからエンジン車の頃と比べ、安心してより多くの時間乗ることができる。--{}--電気自動車にすることで、旧車は進化する!?

テスター等と、中古車のリーフから取り出したバッテリー。
さらに延命している間に技術が進化すれば、衝突被害軽減ブレーキなどの先進機能も備えられるという。「モーターの制御はエンジンより安全機能や自動運転と相性がいいんです。進歩も著しい。
クラシックミニもパーツが豊富で、電気自動車にするには向いているそう。
また日本車でもランクルなんかは、北米でたくさん販売されていたから、海外からもパーツを手に入れることができるそうだ。「今、ランクルの40を改造していますが、ない部品はアメリカから手に入れています。それに、今は3Dプリンターがありますから、小さなパーツなら自分たちで再生することもできますよ」。この先3Dプリンターも進化するだろう。そうすればさらにメーカーに頼らず再生できるパーツが増えても不思議ではない。
オズモーターズが使う3Dプリンター。
200万円から、電動化できる世界に
パーツも手に入るし、なにより愛車の機嫌を気にしながらもう乗らなくて済む。

クラシックミニ用の電動化キットの試作品。これが量産化されれば、コストはグッと低くなる。
キット化することでコストが抑えられるだけではない。