知らないと怖いカラダのサインとは……

長年の片頭痛に、気圧の変化、飲みすぎた翌日の二日酔い。頭痛に悩まされた経験は、誰しもあるだろう。


「ひとえに頭痛といっても、その原因はさまざまです。なかには命にかかわるケースもあるので、その原因を明らかにしておくことが大切です」と話す、東京頭痛クリニック理事長の丹羽 潔先生に、頭痛のアレコレを教えてもらった。
こちらの“危険なサイン”も要チェック!
・ベタベタ汗は熱中症のサインかも
・「靴下の跡が消えない」は腎臓のSOSかも
・ウンチが「湯葉色、ケチャップ色、真っ黒」はキケン
話を聞いたのはこの人!
朝起きて“鈍い頭痛”が続く人は「脳腫瘍」の疑いアリ。危険な頭痛の見分け方とは

丹羽 潔●東京頭痛クリニック理事長。日本頭痛学会の専門医・指導医・評議員として、専門医のみによる日本初の頭痛専門クリニックを開設。著書に「日本初の頭痛専門クリニックが教える最新頭痛の治し方大全」(扶桑社)。



“いつもの頭痛”にご用心。病院に直行すべき痛みとは?

朝起きて“鈍い頭痛”が続く人は「脳腫瘍」の疑いアリ。危険な頭痛の見分け方とは



――そもそも、頭が痛くなるのはナゼでしょうか?

頭痛といえば「脳」が痛みを感じていると思われがちですが、脳自体に痛みのセンサーはありません。脳を覆っている膜や血管、脳のそばにある筋肉や神経がなんらかの刺激を受けることで頭痛は引き起こされます。
 
――たくさんの原因がありそうですね。危険な病気と直結する頭痛もありますか?

その通りで、頭痛にはたくさんの原因と種類があります。その中でも、脳腫瘍くも膜下出血などによって引き起こされる痛みは、“たかが頭痛”と放っておくと、取り返しのつかないことになります。
 
――命に関わる頭痛、その特徴はなんでしょう?

起床時に鈍い痛みを感じる頭痛は、脳腫瘍の特徴です。
目覚めてからどんどん強くなる鈍い痛みに加えて、吐き気を伴うこともあります。

脳出血の一種であるくも膜下出血を起こしたときには、まるで突然バットで殴られたような、強くて激しい痛みを感じます。ただその痛みもある程度時間が経てば収まって、片頭痛に似た痛みが2~3週間続きます。
 
――ほどほどの痛みだと、“片頭痛を発症したのかも……?”とも思いがちですね。

30代なら可能性はゼロではありませんが、40代以降ではじめて片頭痛を発症することはほぼありません。なので、オーシャンズ世代が初めて頭痛を経験した場合には注意が必要です。

ただし、このコロナ禍ではそれ以外の理由による頭痛が頻発しているので、それらを見極めることが大切です。

 

肩コリ・首コリも頭痛を引き起こす

朝起きて“鈍い頭痛”が続く人は「脳腫瘍」の疑いアリ。危険な頭痛の見分け方とは



――コロナ禍で頭痛が増えているとは、どういうことでしょうか?

ここ数年、肩コリや首コリが引き起こす緊張型頭痛に悩む方が増えています。これはリモートワーク中心の生活になっていることや、長時間のマスク着用が原因です。

両耳にマスク紐をひっかけて過ごすことは、自分でも気付かない間に首コリの原因になっています。
 
――マスクも頭痛の原因になっていたとは、初耳です!

ほかに、マスクは片頭痛を引き起こす原因にもなります。例えば、マスクを付けた状態で呼吸をすると、自分が吐いた息をもう一度吸い込んでいるのは想像できますよね。二酸化炭素をたくさん体に取り込むと頭の血管が拡張し、これが片頭痛に繋がるんです。


またマスク内は湿度が高いのでのどの渇きを感じづらく、体が脱水状態になりやすくなります。この脱水症状のサインとして、片頭痛が起きることもあります。
 
――コロナ禍で頭痛の頻度が増えていると感じたのは、気のせいじゃなかったんですね。

今の時季だと、マスク熱中症にも要注意です。マスクを付けている状態ではプラス4度以上、体感温度が上がると言われています。

そうなるとマスクの中は40度以上となり、いわゆるサウナ状態です。マスクが熱中症を引き起こし、さらには頭痛までも引き起こすことが分かっていますので、マスクと感染対策は上手くバランスをとっていくことが大切です。
--{}--

市販鎮痛薬の飲みすぎは、“薬物乱用頭痛”の引き金に

朝起きて“鈍い頭痛”が続く人は「脳腫瘍」の疑いアリ。危険な頭痛の見分け方とは



――頭痛を感じたら、痛み止めを飲んで紛らわすしかないのでしょうか?

医師の診断を受け、処方された薬を正しく服用するのはいいでしょう。けれど、自己判断で市販の頭痛薬に頼りすぎると、かえって痛みが強くなる薬物乱用頭痛の恐れが高まります。

例えば、市販の頭痛薬を3日に1回以上、しかも数カ月にわたって飲み続けているような頻度の方は、注意が必要です。
 
――痛み止めを飲み続けることは、頭痛を悪化させるんですか?

頭痛薬を頻繁に飲んでいると、痛みを感じるセンサーが麻痺して痛みに過敏になり、ちょっとした刺激でさえも強い痛みとして感じるようになります。

そうなると、「薬を飲む回数・量が増えてくる→薬が効きづらくなる→頭痛を恐怖に感じるがあまり痛くもないのに予防で服用する」という、依存症に近い状態に陥ってしまうんです。
 
――負のスパイラルですね。
疑うべき薬物乱用頭痛の特徴はありますか?


まず2日に1度ほどの高頻度で頭痛に悩み、その度に市販薬を飲んでいる方に薬物乱用頭痛の可能性があります。そのうえで、早朝や明け方に痛みを感じる方や、自己判断で薬の量を増やし、それでも効かないと感じている方は疑ってみるべきでしょう。

うつ状態やパニック障害を発症するケースも少なくないので、ぜひ専門医の診断を受けてください。

 

二日酔い頭痛に片頭痛だって、抑えるコツはちゃんとある

朝起きて“鈍い頭痛”が続く人は「脳腫瘍」の疑いアリ。危険な頭痛の見分け方とは

 ©︎Milatas/iStock


――二日酔い頭痛がツライんですが、こればかりはどうしようもないですよね?

飲み過ぎた次の日に頭痛が起こるのは、アルコールの代謝産物(アセトアルデヒド)が脳の血管を拡張させる働きをするためです。この場合はとにかく水分をしっかりとって、これらを体から排出することが必須です。またこの二日酔い頭痛は片頭痛と同様のメカニズムで起こるので、痛みの発現をコントロールすることもできます。
 
―――片頭痛にも予防法があるんですか!?

そもそも二日酔い頭痛をはじめ、頭痛を起こしやすい方は、生まれつき血管や神経が敏感な方が多いんです。なので日常生活では刺激となる強い光や陽射し、騒音を予防しながら過ごすとよいでしょう。

それでも頭痛が起こったならば「暗い場所で休む」「入浴は避けてシャワーにする」など、脳への刺激を抑えてあげることが痛みの緩和につながります。
 ◇ 
たくさんの頭痛の種類がある中で、まずその原因を特定することが最優先。このコロナ禍ならばなおさら、時間とメンタルのゆとりを持って、自分の脳と向き合ってほしい。
編集部おすすめ