誕生から60余年。最新モデルから旧型まで、シリーズ全体を通して今も絶大人気を誇るトヨタのランドクルーザー。
前回、最新のランドクルーザー プラドに乗る2人に取材を行い、その魅力を改めて紐解いたが、今回話を聞いたのは1989年に登場したランクル80と、1990年に登場した初代ランクルプラドに乗る2人。
「なんでそんなにランクルが好きなんですか?」
■フォトグラファー 鈴木泰之さん
「80は、最高にバランスのいいランクルなんです」。
「ずっと四角い車が好きで、ランクルも大好きでした」という鈴木さん。今乗っているランクル80で自身3台目の車だが、実はひとつの前の車もランクル60。
そこまでランクルを好きになった理由はなんなのだろうか?
「改めて思い出すと、まだ小学生の頃、確かランクルの70がパリダカールラリーに出ていたんですよね。それをテレビか何かで見て『格好いい!』と思って、ミニ四駆で出ていたパリダカ仕様のランクルを買ってもらった記憶があります。僕はちょうど『ダッシュ!四駆郎』世代だったので(笑)、うれしくて。それが初めて出会いだったかもしれません」。
四角くて大きな車体が、道なき道を切り開いていく。どうやら鈴木さんのランクル好きは、子供の頃にもう決まっていたようだ。
ランドクルーザー(80系)

1989年に、ランドクルーザー60の後継モデルとして登場した通称「ランクル80(ハチマル)」。
「独立して初めて買った車は、ゲレンデのショートでした。カメラの師匠がゲレンデに乗っていて、アシスタント時代から乗り慣れていたのもあったし、ゲレンデのショートはデザイン的にも、長すぎず、天井も高くて自分の好みでした」。
ただ、ゲレンデに乗って少しした頃に子供が生まれ「車高も高くて、2ドアのゲレンデのショートは、子供と一緒にはちょっと使いづらいかも」となり、次に乗る車に悩んでいたところ、ふと思い出したのが、子供の頃に見たあのランクルだったという。

「実は、そのあと最初に買ったランクルは60。ひとつ前のモデルだったんです。ただ、やはり古い車なので、乗り心地も使い勝手も、家族の共感を得られず…… 少しだけ乗ってすぐに今の80に乗り換えました」。
すぐに乗り換えた80、やはり60との違いはあったのだろうか。

「全然違いますよ! 60は男の趣味の車って感じが強いですけど、80はファミリーカーに十分使える。乗り心地も子供と一緒に乗れるぐらいいいし、クーラーだってしっかり効きます(笑)。
四角くて大きいデザインはしっかり自分好み、そしてファミリーカーとしての実用性も十分なようだ。
「ホントにタフな車で、故障も少ない。もちろん数十年前の車ですから壊れることはありますが、電子制御もほとんどしてないので壊れ方も単純。まだメーカーにもショップにもパーツがたくさんあるので、コストもそんなにかからないのもありがたいですね」。
まさに鈴木さんの理想を絵に描いたようなランクル80、今後、違う車に乗り換える可能性は?

「ほかにも乗ってみたい車はあります。まあ、同じような形のディフェンダーとかなんですけど(笑)。でも、自分でも不思議なんですが、多分このあといろいろ乗ったとしても、最後はランクルに乗りたいなぁと思う気がします。一生80は無理だとしても、ランクルの100とか、復刻したら70とかも最近はいいなと思ってきて」。
子供の頃に見た憧れの存在が、数十年後も活躍していて、大人になった自分の相棒になる。そして、それがやがて、モノ選びにおいて自分の戻る場所になってくれる。鈴木さんにとってランクルは、文字通り“一生モノ”の存在として、これからもともに走り続けるのだろう。
■スタイリスト 菊池陽之介さん
「20年経っても格好いい。こんな車ほかにないですよ」

「この車は、もう20年以上前に作られたもの。でも今乗っても快適だし、壊れないし、大きな故障もまったくないですね」。
というのはスタイリストとして多方面で活躍する菊池陽之介さん。乗るのは1995年式のランドクルーザー プラドだ。
ランドクルーザー プラド(70系)

1990年から1996年まで販売された、プラドの名を冠した初代。ヘビーデューティーを想定したランドクルーザーよりも、やや街乗りを意識したライトユース向けにつくられたプラド。駆動系の一部に取り入れた電子制御やオートマモデルの導入など、街でも気軽に乗れる本格4WDとして、現在でも変わらぬ人気を誇る。
日々多くの服を運ぶスタイリストという仕事柄、たくさん荷物が載せられて、東京の細かな道も走れて、毎日安心して使えるタフさがあるのは必須条件。
「この車体のサイズに慣れたら、日本の道でも不便を感じたことはあまりないですね。僕の事務所も道の細い中目黒の住宅街にありますが、問題なくすんなり入れます」。

「頑丈さに関してはさすが日本が誇る世界のランクルって感じで、ほんとに壊れない。
あと、ランクルは重たい車のイメージがあると思いますが、ターボエンジンなので高速道路での加速もいいし、スピードを出しても走りはガタつかずスムーズです。しかもディーゼルなので財布にも優しいのが、毎日乗る身としてはホントにありがたいですね」。

実用面で使える車であることも、菊池さんがランクルを好きな理由。しかしいちばんの理由は、ほかにあるという。
「やっぱりね、格好いいんですよ(笑)。このプラドも、フェンダーミラーやホイールなど一部イジッたりはしていますが、ほとんどそのまま乗っていて、20年以上経った今も十分格好いい。実用性もあって、今でも街中で振り返られるぐらい格好いい車なんて、なかなかないですよね」。
菊池さんが感じている、そしておそらく多くのランクル好きも感じている「ランクルの格好良さ」は、どこからくるのだろうか。

「もちろん、単純な“見た目”としての格好良さはあります。でもそれ以上に、ランクルっていう車種がつくってきた独自のカルチャーというか、ずっと変わらない背景みたいなものも含めて惹かれるんだろうなと思います。タフなオフローダーという普遍的なコンセプトを突き詰めた車だから、時代が変わってもチープにならない。
その普遍的なコンセプトに、日本車ならではの機能性や頑丈さがあるっていうのもいい。もう20年以上前のこの車を、海外のセレブなども欲しがるわけですからね。すごいですよ」。
モデルチェンジを繰り返しながら長年販売され続けている車は数多くあるが、長年の歴史の中のどのモデルも人気がある車は珍しい。
映画で言えば007シリーズのように、時代や主演が変わっても、常に同じ世界観でワクワクドキドキさせ続けてくれる。そんなランクルはきっと、車の「移動手段」以上の価値を、これからも我々に教えてくれるに違いない。