ディーゼルカーという選択●1990年代には悪者のようにやり玉に挙げられていたが、技術の進歩により環境規制をクリアし、最近は日本国内でも多くのメーカーから登場しているディーゼル(軽油)カー。
環境性がクリアになることで、ディーゼル独特のねばりのある走りやパワー、燃費が評価され、選ぶ人も多くなってきている。
黒い排気ガスやガラガラとしたエンジン音など、昔のマイナスイメージを未だに持っている人もいるかもしれないディーゼルエンジン。
ましてや高級セダンになんて、と思われがちだが、現代のクリーンディーゼルは、ラグジュアリーなセダンにも積極的に採用されている。
ここではメルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ御三家の場合を見ていこう
Sクラスが育て続けてきたディーゼル
メルセデス・ベンツ Sクラス
同社がフラッグシップを「Sクラス」と呼ぶようになった頃から、ディーゼルエンジン搭載モデルは連綿と作り続けられてきている。
現行型では2015年にクリーンディーゼル+モーターのハイブリッド(この組みあわせは日本初)を導入。2018年からは3Lの直6ディーゼルターボエンジンに切り替わった。
そもそも直6(直列6気筒)は完全バランスエンジンとも呼ばれるほど振動を抑えやすく、昔から高級車によく採用されてきた。同社もかつては積極的に採用してきたのだが、衝突時のクラッシャブルゾーンの確保が難しいなどの理由からしばらく採用されていなかった。近年になって衝突安全技術が向上したこともあり、ようやく復活したというわけだ。

そんなベストバランスな直列6気筒にターボを加えたディーゼルエンジンは最高出力340ps/最大トルク700Nmを発揮。
もちろん、高速道路上ではステアリングに手を添えていれば車線のど真ん中をスーッと進み、ウインカーを出せば車が安全確認をして適切に車線変更するなどのインテリジェントドライブも可能。3年ぶりに戻ってきたディーゼルの“完全バランスエンジン”のSクラス。
疲れにくくて走りが楽しい、BMWのフラッグシップ
BMW 7シリーズ

BMWがフラッグシップにディーゼルエンジンを搭載することに違和感を感じる人もいるかもしれない。高回転まで一気に回る同社の特徴的なガソリンエンジンとは違い、ディーゼルは5000回転くらいまでしか回らないからだ。
しかしBMWは最高出力320ps/最大トルク680Nmを発揮する直列6気筒の3Lディーゼルターボに、センサーを使って瞬時に駆動配分を変える4WDを組み合わせ、ドライバーの意のままに、次々とコーナーをクリアするドライバーズセダンに仕立てあげた。

高回転域まで回らないが、代わりに低回転域から豊かなトルクを発揮するディーゼル。それゆえアクセルを踏み込まずとも力強い加速感が得られる。むしろ、アクセルの踏み込み量が少ない分、疲れにくい。疲れにくくて走りが楽しい。まさに「駆け抜ける歓び」を謳うBMWのフラッグシップにふさわしいのだ。
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アウディ A8

アウディは既に、本国で直4、V6、V8のディーゼルエンジンを展開し、累計800万台以上生産しているが、日本では先日ようやくSUVのQ5に搭載されたばかりだ。
一方で、フラッグシップのA8といえば、世界で初めて自動運転レベル3(自動運転のレベルに関してはコチラの記事をチェック)を実現した量販車。日本では法律の関係でレベル2にとどめられるが、A8が最先端のラグジュアリーセダンであることは間違いない。

本国ではそんなフラッグシップであるA8に、V6のディーゼルエンジンにモーターを組みあわせたハイブリッドモデルを用意している。
今回チェックしたドイツの御三家では、それぞれにディーゼルエンジンの特徴を活かした魅力的なフラッグシップモデルを展開していた。これを見ると、ディーゼルは大きなトラックや長距離走行のための安価な選択というのは、もう過去の話だとおわかり頂けただろう。
籠島康弘=文
